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パナソニックの半導体事業売却、軍事技術が中国に流出する恐れ…日米安保にも波及か

文=深田萌絵/ITビジネスアナリスト
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・レーダー用チップ

 65ナノメートルのアナログのレーダー向け半導体は、THAAD向けに利用されており、輸出管理規制の対象となっているはずである。12月に入ってから中国人民解放軍の中国国内向けPRが行われたが、そこで2020年夏から4万チャンネルの軍事用フェイズド・アレイ・レーダーを導入すると発表されている。4万チャンネルのフェイズド・アレイ・レーダーというスペックはTHAADと同等であるが、中国製となると劇的に低いコストで量産体制に入るために、米中の軍事バランスは完全に崩れることになる。

・5G用RFチップ

 米国政府がファーウェイ向けにコモディティ化したチップの輸出禁止制裁は解除したが、5G用RFチップなどのハイエンド品は、いまだに輸出が許可されていない。そのため、ファーウェイは12月にはFPGA(製造後に購入者や設計者が構成を設定できる集積回路)や5G用RFチップのハイエンド半導体チップの在庫がなくなり、5G基地局の出荷が難しくなると指摘されていた。

 ところが、ファーウェイの基地局が止まる様子は見えない。台湾・TSMC社の支援を全面的に受けているためFPGAチップの調達には懸念はない様子だったが、5G用RFチップの調達は緊急を要する課題だった。だが、新唐科技のパナソニック半導体買収発表直後にファーウェイは、20年1月から5G基地局の出荷のめどが立ったとのニュースリリースを行っている。つまり、調達に難航していた5G用RFチップが手に入るようになったようだが、奇妙なタイミングの一致だ。

・通信チップ

 軍事用通信チップはアナログが利用されており、スクランブル方式で暗号化している。この技術が台湾経由で中国に渡ると、米軍及び自衛隊、インド軍、オーストラリア国防軍などの通信の秘密を構成する暗号処理部分までもが中国軍に流出し、すべての兵器を入れ替えなければならなくなるため、莫大な費用がかかる。それを行わなければ、通信の秘密を維持できないためだ。

 JSF(統合打撃型戦闘機)計画以降の兵器は、衛星経由でマスター側の兵器と接続されており、マスター側の許可がないとスレイブ側の兵器はミサイル等の武器が利用できない。WCS(ウェポン・コントロール・システム)と呼ばれるスロットル兵器等、制御を主に行うデバイスも製造されている。

・赤外線センサー

 赤外線センサーは輸出管理規制で制御されているはずだが、この買収発表の後から中国で妙な動きがある。ファーウェイと同じく国防権限法889条で米政府機関との取引が禁止されている監視カメラメーカーのハイクビジョンやダーファの社員が「半年後に赤外線センサー内蔵型監視カメラの新製品を発売するので、顔認識の精度が飛躍的に向上します」と言って売り込んで回っている。赤外線センサーは軍事転用の恐れがあるために輸出管理規制対象となっている。

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