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永濱利廣「“バイアスを排除した”経済の見方」

今年、東京五輪による4Kテレビ特需等で経済活性化…“安倍政権の盤石さ”が景気のカギ

文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト
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外人観光客でにぎわう奈良東大寺(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

東京五輪で個人消費活性化

 2020年の景気を占う上では、2020年の国内最大イベントである東京五輪の開催が大きな鍵を握るだろう。すでに建設特需は2019年中にピークアウトしている可能性が高い。

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 しかし、2019年のラグビーW杯でも開催期間中に内外の観光客の増加により、組織委員会が当初想定していた約4,300億円を上回る経済効果が発生した可能性がある。東京五輪の開催時期は8月となるため、他の外部環境にもよるが、夏場にかけて東京五輪関連の消費特需が盛り上がる可能性が高い。

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 特に、インバウンドの拡大に伴う需要効果は大きいと思われる。なぜなら、政府は2020年の訪日外客数と訪日外国人旅行消費額の目標をそれぞれ4,000万人、8兆円としているからである。

 2019年の訪日外客数は日韓関係の悪化による韓国人観光客減少の影響等もあり、3,300万人台にとどまりそうだが、2020年は政府目標の4,000万人までは行かずとも、3,500万人は超えそうだ。これに訪日外国人一人当り消費額の約15万円を乗じれば、5兆円を大きく超える旅行消費額の出現の可能性がある。

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 さらに、東京五輪観戦のための国内旅行やテレビの買い替え等の特需が発生することが予想され、特に6月末にはキャッシュレスのポイント還元の期限を控えていることから、年前半に駆け込み需要が発生することが予想される。

 なかでも、五輪特需としてテレビの買い替えサイクルに伴う需要効果も大きいと推察される。内閣府の消費動向調査(2019年3月)によれば、テレビの平均使用年数は9.7年となっている。テレビの販売は2019年10月の消費税率引き上げ前に駆け込み需要で少し盛り上がったが、さらに前に遡ると、2009~2010年度にかけてはそれ以上に販売が盛り上がった。

 背景には、リーマンショック後の景気悪化を受けて、麻生政権下で家電エコポイント政策が打ち出されたことがある。これで自動車やエコポイントの対象となったテレビ、冷蔵庫、エアコンの駆け込み需要が発生しており、2020年はそこから10年を経過していることに加え、18年末から4K・8K放送が始まっていること等もあり、その時に販売された家電の買い替え需要が期待される。

 なかでもテレビに関しては、2011年7月の地デジ化に向けて多くの世帯で買い替えが進んでから、買い替えサイクルの9年以上が経つため、買い替え需要はかなりあることが期待される。なお、2020年の東京五輪が実施されれば、日本人のレジャーや観光関連市場でも特需が発生する可能性が高いだろう。

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目まぐるしく変わる家計の負担状況とマーケット

 2020年の消費を占う上では、家計の負担増も大きなカギを握っている。昨年10月に引き上げられた消費増税については、軽減税率の負担軽減を加味しても、2019年対比で3.5兆円の家計負担増となる。しかし一方で、年金生活者に対する支援給付金により2019年対比で0.4兆円の負担軽減となる。

 また、消費増税の使い道として増収分の一部が19年10月から幼児教育・保育無償化に充当されており、2020年4月から大学無償化へも充当されることになっている。このことから、子育て世帯を中心に2019年対比で1.2兆円の負担軽減になると計算される。

 ただし、消費増税に伴う負担軽減の時限措置の多くが2020年に期限を迎えることにも注意が必要だろう。例えば、プレミアム付き商品券と次世代住宅ポイントが3月までで終了する。また、キャッシュレスポイント還元も6月末に終了の予定である。さらに、自動車税環境性能割軽減も9月末で終了する。

 加えて、年明けから給与所得控除の見直しや、10月にたばこ増税といった負担増が予定されている。このため、こうした税制改革が家計に及ぼす影響を試算すると、トータルで2019年に比べて年間1.6兆円の負担増となる。

 なお、企業経営への影響としても、消費税の仕入税額計算などの特例の適用期限が2020年9月末となっている。このため、2019年同様に消費の現場では混乱が生じ、中小の小売業等では廃業が増加する可能性もあろう。

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 こうしたなか、リスクは政治と金融市場だろう。安倍首相が自民党総裁として在任できる最長期限は2021年9月末だが、その翌月10月21日が衆議院議員任期満了となることからすると、自民党総裁選前の2020年中に解散総選挙を行う可能性もあろう。また、安倍政権は憲法改正と改正後の憲法施行の目標時期を2020年12月としている。

 このため、憲法改正案や解散総選挙の状況次第で安倍政権の政権基盤の揺らぎが生じることになれば、マーケット環境の悪化を通じて日本経済に悪影響を及ぼすリスクもあろう。日本株の売買は約6割以上を外国人投資家が占めており、安倍政権の政権基盤が盤石で政治的に安定的であるほど、外国人投資家が日本株を保有しやすくなり、基盤が揺らぐほど手放されやすくなる。マーケット環境が悪化すれば、日本経済も困難を強いられることになるだろう。

 また、2011月に控える米国大統領選挙に対する不確実性も、日本経済に大きく影響を及ぼすだろう。前回の大統領選のように、世論調査の信頼性が低下すれば、市場関係者は積極的なポジションを取りにくくなり、株安等を通じて米国経済に悪影響を及ぼす可能性があろう。

(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト)

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト

1995年早稲田大学理工学部工業経営学科卒。2005年東京大学大学院経済学研究科修士課程修了。1995年第一生命保険入社。98年日本経済研究センター出向。2000年4月第一生命経済研究所経済調査部。16年4月より現職。総務省消費統計研究会委員、景気循環学会理事、跡見学園女子大学非常勤講師、国際公認投資アナリスト(CIIA)、日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)、あしぎん総合研究所客員研究員、あしかが輝き大使、佐野ふるさと特使、NPO法人ふるさとテレビ顧問。
第一生命経済研究所の公式サイトより

Twitter:@zubizac

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