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日産、利益率がトヨタの「3分の1」の窮状…販売奨励金はトヨタの1.7倍でも車売れず

文=編集部
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12月2日、日産の会見で握手する内田社長(左)と関副COO(写真:つのだよしお/アフロ)

 日産自動車の新経営陣が2019年12月1日に発足した。社長兼最高経営責任者(CEO)に内田誠専務執行役員が昇格し、最高執行責任者(COO)には三菱自動車のアシュワニ・グプタCOO、副COOに関潤専務執行役員がそれぞれ就任した。3氏は20年2月の臨時株主総会を経て取締役に就く予定だった。

 だが、トロイカ体制が発足して1カ月もたたない19年12月24日、クリスマスイブの夜、関副COOが日産を退社し、次期社長含みで日本電産に入社するとのニュースが駆け巡った。関氏は12月24日までに内田社長に退社の意思を伝えた。20年2月に日本電産入りし、6月の株主総会で社長兼CEOに就任するとみられている。

 関氏は日産の経営再建計画「パフォーマンスリカバリー」を策定し、陣頭指揮を執ることになっていただけに、日産にとって同氏の離脱の影響は深刻だ。トロイカ体制を担う3人のなかで関氏は最年長。ルノーに対して融和的な内田社長、グプタCOOと違い、関氏ははっきり距離を置き、「ルノーとの経営統合にはノー」の立場だった。トロイカ体制がルノー会長のジャンドミニク・スナール氏の“傀儡”政権と見られることを、関氏は嫌ったとみられている。関氏の退社で日産の経営の混迷の度は深まる。

早くも崩れたトロイカ体制

 18年11月、前会長のカルロス・ゴーン被告が不正発覚で失脚。西川廣人前社長兼CEOも報酬問題で19年9月に引責辞任するなど経営の混乱が続いた。「トロイカ(3頭)体制」でたて直しを急ぐことになっていたが、早くも1カ月で崩壊したことになる。

 内田氏は日商岩井(現双日)から03年に日産に転じ、直近は中国事業の責任者。仏ルノーとの共同事業で部品購買を担当した経験がある。グプタ氏はインド出身。ホンダを経てルノーに入社した。日本滞在が長く、日産、三菱自との連合の小型商用車部門を統括。新興国ブランド「ダットサン」の立ち上げに参画した。関氏は生産畑出身の生え抜き。北米・中国に駐在した経験がある。19年7月に公表した経営再建策の策定にも携わった。

 内田新社長は、どのように混乱を収束させるのか。トロイカ体制のためゴーン元会長時代のように1人に権限が集中する独裁の懸念はないが、意見が対立すれば意思決定が遅れかねないと発足当初から懸念された。そして、早くも意見の対立が表面化した。

 課題は山積している。まず、業績悪化に歯止めをかけなければならない。20年3月期の連結業績見通しを下方修正しており、売上高は前期比8%減の10兆6000億円と従来より7000億円、営業利益は同53%減の1500億円で、従来より800億円引き下げた。純利益は同66%減の1100億円になる見通し。従来より600億円下回り、10年3月期以来10年ぶりの低水準となる。今期の世界販売台数の見通しは30万台減らし524万台とした。中国で15万台下げたほか、国内、北米、欧州など主要市場で軒並み減らした。

 北米市場は営業利益の4~5割を稼ぐドル箱だった。ゴーン元会長はインセンティブ(販売奨励金)と呼ばれる販売促進費用を使った値引き作戦を乱発。市場シェアの獲得に邁進したため、「日産車はチープなクルマになり下がった」(同業他社の幹部)。

販売奨励金頼みの限界

 日産の18年3月期の純利益は過去最高の7468億円だったが、砂上の楼閣だった。08年のリーマン・ショックから立ち直り、北米の新車市場は伸びたが、市場の拡大が頭打ちになると、販売奨励金を積み増しても売れなくなり、北米事業は日産の経営の屋台骨ではなくなった。19年4~9月期の北米事業の営業利益は前年同期比57%減の365億円、売上高営業利益率は1.4%と低迷した。同期間のトヨタ自動車とホンダの同利益率はともに4%台と3年前の水準に回復しており、日産ばかり不振が目立つ。

 米調査会社オートデータによると、4~9月期の1台あたりの販売奨励金は日産が4218ドル。トヨタより68%多く、ホンダの2倍だ。日産の販売奨励金は高止まりしたままの模様。販売奨励金をカットすれば販売不振に拍車がかかるため、手を付けられないのだ。

 この苦境を打開するには、新型車の投入しかない。魅力的な新型車が出てくれば、値引きしなくても販売でき、収益の改善につながるからだ。ところが日産は新型車の少なさがネックになってきた。北米市場では19年夏に小型車「ヴァーサ」を投入したくらい。今後、電気自動車や自動運転など先進技術を搭載した新型車を20以上投入する計画を立てている。

 ゴーン氏の“負の遺産”である北米事業の値引きへの依存からの脱却は容易ではない。

仏ルノーのスナール会長に太刀打ちできるのか

 日産の筆頭株主である仏ルノーとの関係の再構築も急務だ。ゴーン氏の逮捕後は、相互不信を募らせ、日産とルノーの関係は悪化の一途をたどった。ルノーとルノーの筆頭株主である仏政府は19年春、日産に経営統合を提案した。一方、独立を維持したい日産はルノーに対して出資比率を引き下げるよう求めてきた。

 仏ルノーのスナール会長は、そのしたたかな交渉術に定評がある。日産の経営陣は、日仏両政府の意向に目配りしながら、老練なスナール会長に向き合わなければならない。内田社長はスナール会長に太刀打ちできるのか。そもそも誰が内田氏を新社長に選んだのか。関氏の退社、日本電産への転進が、この疑念を一層深めることになった。

(文=編集部)

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