北米市場は営業利益の4~5割を稼ぐドル箱だった。ゴーン元会長はインセンティブ(販売奨励金)と呼ばれる販売促進費用を使った値引き作戦を乱発。市場シェアの獲得に邁進したため、「日産車はチープなクルマになり下がった」(同業他社の幹部)。

販売奨励金頼みの限界

 日産の18年3月期の純利益は過去最高の7468億円だったが、砂上の楼閣だった。08年のリーマン・ショックから立ち直り、北米の新車市場は伸びたが、市場の拡大が頭打ちになると、販売奨励金を積み増しても売れなくなり、北米事業は日産の経営の屋台骨ではなくなった。19年4~9月期の北米事業の営業利益は前年同期比57%減の365億円、売上高営業利益率は1.4%と低迷した。同期間のトヨタ自動車とホンダの同利益率はともに4%台と3年前の水準に回復しており、日産ばかり不振が目立つ。

 米調査会社オートデータによると、4~9月期の1台あたりの販売奨励金は日産が4218ドル。トヨタより68%多く、ホンダの2倍だ。日産の販売奨励金は高止まりしたままの模様。販売奨励金をカットすれば販売不振に拍車がかかるため、手を付けられないのだ。

 この苦境を打開するには、新型車の投入しかない。魅力的な新型車が出てくれば、値引きしなくても販売でき、収益の改善につながるからだ。ところが日産は新型車の少なさがネックになってきた。北米市場では19年夏に小型車「ヴァーサ」を投入したくらい。今後、電気自動車や自動運転など先進技術を搭載した新型車を20以上投入する計画を立てている。

 ゴーン氏の“負の遺産”である北米事業の値引きへの依存からの脱却は容易ではない。

仏ルノーのスナール会長に太刀打ちできるのか

 日産の筆頭株主である仏ルノーとの関係の再構築も急務だ。ゴーン氏の逮捕後は、相互不信を募らせ、日産とルノーの関係は悪化の一途をたどった。ルノーとルノーの筆頭株主である仏政府は19年春、日産に経営統合を提案した。一方、独立を維持したい日産はルノーに対して出資比率を引き下げるよう求めてきた。

 仏ルノーのスナール会長は、そのしたたかな交渉術に定評がある。日産の経営陣は、日仏両政府の意向に目配りしながら、老練なスナール会長に向き合わなければならない。内田社長はスナール会長に太刀打ちできるのか。そもそも誰が内田氏を新社長に選んだのか。関氏の退社、日本電産への転進が、この疑念を一層深めることになった。

(文=編集部)

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