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コンビニ、早くも「レジなし店舗」普及か 将来は顔認証が主流に?

文=佐久間翔大/A4studio
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セブン、都内に省人型コンビニ出店(写真:東洋経済/アフロ)

 最大手コンビニエンスストアチェーンであるセブン‐イレブンが、NTTデータと連携して“レジなし店舗”の実証実験を開始している。昨年12月17日にオープンした、NECグループ社員のみが利用可能な三田国際ビル20F店(東京都港区)では、顔情報による決済システムが導入されているため、手ぶらで買い物をすることができるという。

 一方、コンビニ業界三強の一角を担うローソンでは、深夜限定ながらセルフレジで決済する実験を氷取沢町店(神奈川県横浜市)で開始。また、主にJR東日本の駅に出店している「NewDays」は、武蔵境駅(東京都武蔵野市)nonowa改札口にキャッシュレス決済のセルフレジだけが置かれた店舗をオープンするなど、コンビニ各社が省人化の取り組みを実施しているのだ。

 人手不足問題の深刻化などを受けて24時間営業見直しの議論も過熱しており、大きな変革期を迎えているコンビニ業界。レジなし店舗は日本のコンビニに普及していくのか。今後コンビニはどのように変化していくのか。

 流通アナリスト、マーケティングアナリスト、コンビニジャーナリストとして活躍し、フジテレビ系の『ホンマでっか!?TV』や『FNN Live News α』にも出演している渡辺広明氏に話を聞いた。

人件費削減のためだけでは、レジなし店舗は成功しない

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『コンビニが日本から消えたなら』(渡辺広明/ベストセラーズ)

 まず、レジなし店舗はどのような特徴があるのだろうか。

「お客様がセルフレジなどによって自分で商品の会計をする、ローソンが実験しているような店がセルフレジ店舗ですが、Amazon Goのようにレジそのものがなく、商品を持ってそのまま退店することができるのがレジなし店舗です」(渡辺氏)

 ここで気になるのは、レジなし店舗がどういった決済方法を採用しているかということだろう。

「Amazon Goではスマホに専用アプリをダウンロードし、入店時にアプリに表示されるQRコードをゲートでスキャンさせます。その後は、商品を取るとバーチャルカートに追加され、戻すと削除されるという仕組みのため、そのまま商品を持って退店すれば自動で決済されるというものです。

 こういったレジなし店舗もセルフレジ店舗も、クレジットカード決済や電子マネー決済、バーコード決済が主流です。つまり現状は、スマホなどのガジェットや、なんらかのカードを携帯している必要があるわけですが、私は今後、顔認証などの生体認証決済が主流になっていくのではないかと考えています。

 店舗に設置したカメラが入店時に顔認証を自動で行い、そしてその顔が登録してあるクレジットカードやキャッシュカード、電子マネーに紐づけられるということですね。つまり、消費者は何も持たずに手ぶらで入店し、商品を取ってお店から出るだけで完結できるので、非常に便利になると思いますよ」(同)

 レジなし店舗やセルフレジ店舗は、レジオペレーションに人員を割かなくて済むことから、経営者にとっては人件費の大幅な削減が期待できると考えられる。

「フランチャイズのコンビニオーナーの立場からすると、人件費を減らせられればその分、自分の取り分が増えるので大歓迎でしょう。今のままでは24時間営業がきつくとも、レジなし店舗やセルフレジ店舗になれば人手の心配はなくなります。要するにレジなし店舗化やセルフレジ店舗化を進めていくと、そのチェーン店に加盟したいというオーナー候補も増えてくることが予想されます。

 万引き対策のために監視カメラを増設するなど、セキュリティ面のイニシャルコスト(初期投資)がかかりますが、人件費が大幅に削減できることを考えると、長い目で見ればコストに見合ってくるはずです」(同)

 とはいえ、「この発想にとらわれてしまうと逆に厳しい状況になってしまう」と渡辺氏は続ける。

「人件費は単純に給料の問題だけでなく、社会保険の費用などもかかわってくるので、そういったコストを抑えられるのは経営者にとって大きなメリット。ですが、人件費の問題を解決するために省人化に取り組むのではなく、お客様が快適に買い物をできるようにするために取り組むという発想に変えなければ、日本でレジなし店舗はうまくいかないと思います」(同)

 なるほど。消費者ファーストでなければ普及は難しいということか。では、消費者にとってのレジなし店舗のメリット・デメリットとは?

「メリットは、やはりレジに並ぶ必要がないという利便性の高さですね。棚から手に持ってそのまま帰れるのは非常に楽ですし、時間の節約にもなって効率的です。

 逆にデメリットとなるのは、事前に対応が必要な決済方法の登録・設定の煩雑さや、買い物に必要な個人情報のセキュリティの問題があるでしょう。その個人情報が容易に漏洩しないようなセキュリティ面の担保がされないと、利用を敬遠する層が多いでしょうからね。ただ、利便性と個人情報のセキュリティとで天秤にかけても8割ぐらいの人が利便性を取るでしょうし、技術が発展すれば解決していく問題だとも思います」(同)

さまざまな形態の店舗が共存?

 利便性の高さから、消費者にとっては恩恵が大きいように思えるレジなし店舗。はたして本当に普及していくのだろうか。

Amazon Goのようなかたちになるのか、あるいは新しい技術を導入した形態になるのかはわかりませんが、間違いなくレジなし店舗は普及していくでしょう。しかし、順番としてはセルフレジの無人店舗の普及の後になるので、レジなし店舗が我々にとって身近な存在になるまで、まだ少し時間がかかるのではないでしょうか。

 けれど、繰り返しになりますが、大事なのは単純な完全セルフレジ化やレジ廃止ではなく、どうお客様に快適に買い物をしていただくかを考えることです。レジがない店舗も快適ですが、セルフレジで買い物をする店舗も快適であることは変わりないですから、これらの技術を使ってお客様ファーストの視点にいかにして寄り添っていくのかが、これからのコンビニ各社の勝負になっていくでしょう」(同)

 また渡辺氏は、効率化を求めて、すべての店舗をレジなし店舗にしてしまうのは間違いであるとも語る。

「レジがない、あるいは自分でレジを打つのが早いし楽だという考え方がある一方で、全部店員に任せるほうが楽だという考え方もあります。特に機械に弱い方や、疲れて帰る方にとっては、セルフより有人のレジのほうが便利に感じられるでしょう。

 ですから大局的に考えると、コンビニにとって大事なことは、レジなしやセルフレジに一律化してしまうことではなく、多様化したニーズに応えて、すべてのお客様を受け入れること。コンビニは利用者の日常に根差したお店ですから、そういう考え方が必要になってきます。

 ガソリンスタンドにセルフサービスとフルサービスの店舗があるように、無人のセルフレジ店舗、無人のレジなし店舗、そして従来通りの有人店舗を共存させることが大事でしょう。もしくは一つの店舗の中に無人レジと有人レジを併設するといった、両極化したニーズを満たしていく併用的な方法が私は一番いいと思いますし、それが日本的な方法ではないでしょうか」(同)

 こういったニーズの違いによって店舗の形態を変えることが、今後のコンビニ業界にとっては大切だという。

「たとえば、同じく店舗を無人化するにしても、駅の近くやビジネス街は効率化のためにレジなしや完全セルフレジが望ましいでしょう。一方、過疎化した田舎の地域であれば、一日一回商品が補充される無人自販機コンビニが相応しいかもしれません。

 現在はセルフレジやレジなしといった、省人化の試みを取り入れる導入期にあたります。そのためコンビニ各社は今後、セルフレジやレジ廃止に合わせた店舗づくりや、常連客への割引といった個々のユーザーごとに異なる商品価値提案の可能性など、多種多様な店舗やサービスを考えていく必要があるでしょう。10年後のコンビニは今の私たちには想像もできない未来になっているはずです」(同)

 単純に日々の買い物が効率的になるだけではなく、コンビニのあり方すら変える可能性を秘めているレジ決済廃止の試み。レジなし店の普及自体にはまだ時間がかかるだろうが、レジを廃した店舗がどのような形態の店舗となり、どのようなかたちで普及していくのか注目したいところだ。

A4studio

A4studio

エーヨンスタジオ/WEB媒体(ニュースサイト)、雑誌媒体(週刊誌)を中心に、時事系、サブカル系、ビジネス系などのトピックの企画・編集・執筆を行う編集プロダクション。
株式会社A4studio

Twitter:@a4studio_tokyo

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