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榎本博明「人と社会の役に立つ心理学」

親たちが勘違いしている、我が子を「勉強ができる子」にする方法…「子の思い通り」が大敵

文=榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士
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「Getty Images」より

 12月3日、OECD(経済協力開発機構)による生徒の学習到達度調査(PISA)の結果が公表された。これは、2000年から3年ごとに、各国の15歳児を対象として、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーを測定するものである。

 その結果、日本の子どもたちは、数学的リテラシーと科学的リテラシーでは引き続き世界トップレベルを維持しているが、読解力に関しては平均得点も順位も低下していることがわかった。

 このような学力調査結果が発表されると、親として気になるのは、どうしたら我が子の学力が向上するのか、勉強ができる子にするには何が大切かということであろう。

読書する子は読解力が高い

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『伸びる子どもは○○がすごい』(榎本博明/日本経済新聞出版社)

 AI(人工知能)研究者の新井紀子氏の調査により、中学生の約2割が教科書の文章の主語と目的語が何かという基礎的な読解さえできておらず、約5割は教科書の内容を読み取れていないことが明らかになり、衝撃が走ったのは2016年のことであった。同氏による2017年の調査でも、中学1年生の38%、2年生の35%、3年生の25%が教科書の主語と目的語が何かという基礎的な読解ができていないことが確認されている。

 このように、今どきの日本の子どもたちには教科書を理解できないほどに読解力がない者が非常に多く、読解力の低下が深刻化しているわけだが、今回の国際学力調査においても、日本の子どもたちの読解力の低下が改めて注目されることとなった。

 読解力が低いと、国語だけでなく、他の教科の理解にも悪影響がある。各教科の教科書や参考書の内容を理解するにも、試験問題の意図を理解するにも、そして授業中の先生の説明を理解するにも、読解力が必要だからだ。

 今回の調査でもうひとつ明らかになったのが、読書好きな子どもほど読解力の得点が高いということである。そこから言えるのは、勉強ができるようにするには読書好きな子にすることが大切だということである。しかし、そう簡単に読書が好きになるものではない。そこで、まずは読書が身近なものになるように習慣づけることが必要となる。

 勉強ができるようになるには、本を読む習慣をつけるのが効果的であるということを子どもに伝えれば、子どもはそれを頭では理解するだろう。そして、「本を読まなくちゃ」と思うはずだ。だれだって勉強ができるようになりたいという思いは密かにもっているものだ。

 だが、問題はその先にある。「本を読まなくちゃ」と思ったとして、実際に本を読むようになる子もいるものの、多くの子は本を読むことをしない。頭でわかったからといって、実行できるわけではない。

自己コントロール力さえあれば、勉強も仕事もできるようになる

 現に大学の授業で、認知能力の発達にとって読書が重要だといった内容に刺激を受けて、授業後に何人もの学生が、「本を読んだことがほとんどないんですけど、どうしたら読めるようになりますか」と相談に来る。

 そして、各自が興味をもてる領域で読みやすい本を読み始めるのだが、2~3週間後には早くも挫折する学生が大半である。「自分はどうしても意志が弱くて、何をやっても続かないんです」「すぐに飽きちゃうんです」などと言いながら、「でも、このままじゃ、社会に出てから苦労しますよね」と、安易なほうに流されやすい自分の心理傾向に頭を悩ませている。

 大人だって同じだろう。「健康のためにできるだけ歩かないと」と思ってはいても、ついエレベーターやエスカレーターを使ってしまう。「ダイエットのために甘い物を控えないと」と頭ではわかっていても、おいしそうなケーキを見ると我慢できず、買ってきて食べてしまう。そんな人も少なくないのではないか。

 そこで大切なのは、子どもの頃から自己コントロール力を身につけておくことである。自己コントロール力が高いか低いか。それが将来を大きく左右する。

 自分自身の中学や高校の頃を思い出してみよう。同じクラスにもいろんな子がいただろう。試験前に試験勉強をやらなければというのは、だれもが思うことだが、実際にきちんと準備勉強をする子もいれば、やらなければと思いながらもつい怠けてしまう子もいたはずだ。この問題集の何ページから何ページまでをしっかりマスターしておけば解ける問題ばかりだと先生から言われ、そこを徹底的に練習する子もいれば、範囲がわかっていても準備勉強の手を抜いて遊んでしまう子もいたはずだ。

 勉強ばかりではない。部活などでも似たようなことがあったはずだ。この練習を徹底的にやることが大切だとわかっていても、必死に練習をする子もいれば、さぼってばかりの子もいたのではないか。

 そこに自己コントロール力が深く関係している。もともとの能力の違いはもちろんある。だが、いくら能力が高くても、勉強しなければ知識がないので、試験でよい点を取れるようになれない。「これをやればうまくいく」「これをやらないと困ったことになる」と頭ではわかっていても、それをやろうと頑張れる子と頑張れない子がいる。

 ときにカンニングなどの不正をして処罰を受ける子もいるが、そこにも自己コントロール力が絡んでいる。自己コントロール力が低いと、準備勉強をやらなければと頭ではわかっていても、やらずに試験当日を迎えてしまう。さらには、自己コントロール力が低いと、カンニングはけっしてやってはいけないと頭ではわかっていても、衝動に負けてついやってしまうのだ。

できる子にしたければ自己コントロール力をつけさせる

 こうしてみると、自己コントロール力を子ども時代に身につけさせることが、勉強にしろ何にしろ、将来やらねばならないことができるようになるための必須条件だということがわかる。

 アメリカの心理学者によって行われた研究でも、子ども時代に我慢する力、衝動をコントロールする力、必要に応じて感情表現を抑制する力など、いわゆる自己コントロール力の高い子は、大人になってから健康度が高く、収入が高く、犯罪を犯すことが少ないことが明らかになっている。

 結局、子どもの将来を大きく左右するのは、自分を律する力が身についているかどうかなのである。勉強ができるようになるかどうかも、自分を律する力があるかどうかで決まる。それがないと、勉強しなければと思ってもやる気になれない。遊びの誘惑にすぐに負けてしまう。何でもすぐに飽きてしまう。困難な状況になると、すぐに諦めてしまう。

 最近の日本は、子どもを傷つけないようにという感じで母性原理がますます強まり、子どもを甘やかし、過保護になる傾向がみられる。

 だが、将来勉強ができる子になってほしい、しっかり稼げる子になってほしいと思うなら、何でも子どもの思うようになる甘い境遇にしないように気をつけ、自分の衝動をしっかりコントロールし、我慢できる子にするように教育していくことを心がけたい。

(文=榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士)

榎本博明/心理学博士、MP人間科学研究所代表

榎本博明/心理学博士、MP人間科学研究所代表

心理学博士。1955年東京生まれ。東京大学教育心理学科卒。東芝市場調査課勤務の後、東京都立大学大学院心理学専攻博士課程中退。川村短期大学講師、カリフォルニア大学客員教授、大阪大学大学院助教授等を経て、MP人間科学研究所代表。心理学をベースにした執筆、企業研修・教育講演等を行う。著書に『「やりたい仕事」病』『薄っぺらいのに自信満々な人』『かかわると面倒くさい人』『伸びる子どもは○○がすごい』『読書をする子は○○がすごい』『勉強できる子は○○がすごい』(以上、日経プレミアシリーズ)、『モチベーションの新法則』『仕事で使える心理学』『心を強くするストレスマネジメント』(以上、日経文庫)、『他人を引きずりおろすのに必死な人』(SB新書)、『「上から目線」の構造<完全版>』(日経ビジネス人文庫)、『「おもてなし」という残酷社会』『思考停止という病理』(平凡社新書)など多数。
MP人間科学研究所 E-mail:mphuman@ae.auone-net.jp

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