ニューフレアテクノロジーのTOBにHOYAが参戦
親子上場解消策に基づき東芝(名義は東芝デバイス&ストレージ)は、50.0%(19年9月末)出資する半導体装置のニューフレアテクノロジーの完全子会社を目指し、19年11月14日から1株1万1900円でTOBを実施した。期間は12月25日までだった。
ニューフレアも東芝の完全子会社になることに賛成していた。ここに割って入ったのが眼鏡レンズや半導体マスク基板に強いHOYAだ。半導体部材にも力を入れている。12月13日、HOYAは東芝の買い付け価格より1000円高い1万2900円でニューフレア株を買い取ると発表。東芝に対し、「ニューフレアの完全子会社化をやめてHOYAの買収に応じるように」求めた。
HOYAは東芝によるTOBが成立しなかった場合にのみ、20年4月にTOBを開始する考えだ。最大1477億円を投じ、ニューフレアの全株取得を目指す。ニューフレアの株主に賛同を求め、東芝によるTOBを阻止する構えだ。HOYAの参戦を受け、東芝はTOBの期間を20年1月16日まで延長した。TOBを5大手企業同士が競い合う展開となった。
鍵を握るのは東芝機械
ニューフレアテクノロジーは2002年に東芝機械から半導体装置事業を継承した。電子ビームを使い、半導体の原板に回路を描く装置で世界8割以上のシェアを持つ、ハイテク・ニッチ企業である。19年3月期の売上高は578億円、営業利益118億円。利益率が2割を超える優良会社だ。
一方、HOYAは半導体ウエハーに回路を描く原板となるガラス製品で7割以上のシェアを持つ。半導体メーカーと取引のあるニューフレアを取り込めば、製品開発のスピードが上がるとみている。東芝によるTOBは親子上場解消が目的だが、HOYAとニューフレアの組み合わせは、「ニッチ市場のトップを目指す前向きのTOB」と評価する声が市場関係者からあがる。
カギを握るのが、ニューフレア株の15.07%(19年9月末時点)を保有する東芝機械だ。東芝のTOBを成立させるには14.27%以上を買い付ける必要がある。東芝機械が賛同に回れば、ほかの投資家が反対してもTOBは成立する。