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日本電産・永守会長の非情経営…後継者社長を2年でクビ、日産再建の要を“引き抜き”

文=編集部
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日本電産の永守重信会長(写真:ロイター/アフロ)

 日本電産は日産自動車の関潤副COO(最高執行責任者)を次期社長含みで迎える。創業者の永守重信会長兼CEO(最高経営責任者)が後継候補を外部から招くのは、これで4度目だ。日本電産を1973年に創業。一代で売上規模1兆6000億円超の企業に育て上げた永守会長にとって、後継者探しは喫緊の課題。

 2013年、日産系の部品会社だったカルソニックカンセイ(現マレリ)社長だった呉文精氏を副社長に据えた。後継者の最有力候補と目されたが、呉氏は統括していた車載事業や家電事業で、永守氏が期待するような実績を上げることができず、15年に退社した。その後、呉氏は半導体メーカー、ルネサスエレクトロニクスの社長に就いた。

 次に、シャープの社長だった片山幹雄氏を技術部門のトップにスカウトし、15年6月、取締役副会長に就けた。片山氏をポスト永守の最有力候補と囃し立てたマスコミもあった。

 だが、永守氏が、「60代の人に渡す時代じゃない。相当若返りを図る」と“ポスト永守”について展望を述べたことから、片山氏の社長の芽は消えた。片山氏は現在、序列4位の副会長最高技術責任者だ。

吉本氏を大抜擢、初の社長交代を実現

 永守会長の目標は、30年度に売上高10兆円企業を実現することにある。そのためのキーポイントは人材だ。10年先、20年先の人材を確保する。18年3月、京都学園大学(現京都先端科学大学)を運営する学校法人・京都学園(現永守学園)の理事長に就任した。日本電産が欲しい人材を、大学時代から育成するためだ。私財100億円を投じ、工学部機械電気システム工学科と大学院工学研究科機械電気システム工学専攻課程を設置。2020年4月に開設する。

 3年次、4年次では、企業が直面する現場の課題を、学生のチームが複数の教員の指導を受けて解決するプロジェクト型教育を企業と連携して行うとしている。要するに、日本電産の即戦力となるエンジニアを育成するための大学なのだ。授業は英語で行い、日本語でフォローする。だから、英語が不得意な学生も歓迎。入学してから、しっかり英語教育を行う、と学校案内に書いてある。「みんなが行く工学部か、世界が求める工学部か」。19年11月26日付読売新聞の全面広告でこう宣言した。「これからの社会ニーズに応えるために、世界のどこでもチームで力を発揮できる高い実践力」を養うという。

 17年11月25日、同大学で行った講演後の記者会見で永守氏は「75歳までに社長を退く」との意向を示した。企業経営と大学経営の二足のわらじを履くことから、一層、多忙になるため、会長兼CEOとなり、後継者となる社長を指名する考えを示した。

 永守氏が白羽の矢を立てたのは吉本浩之氏。プロパー社員ではない。1991年、大阪大学人間科学部を卒業し、日商岩井(現双日)に入社。2002年にはカーネギーメロン大学経営大学院でMBA(経営学修士)を取得した。その後、カルソニックカンセイを経て、12年、日産に入社。タイ日産社長を経て、15年、日本電産トーソク社長にヘッドハンティングされた。翌16年、日本電産の副社長に抜擢された。永守氏は車載事業を次の成長の柱と位置付けている。その道のプロである吉本氏を自分の後継者に選んだ。

 18年6月20日の株主総会後の取締役会で、吉本氏は社長兼COOに就いた。社長交代は、創業以来初めてのことだった。吉本氏への権限譲渡は順調に進んできたかと思えたが、業績が低迷。19年3月期の連結決算の大幅な下方修正を同年1月に発表した際には、「これまで経験してきたことのない落ち込み」と永守氏は語った。吉本氏は「大型モーターなどの海外事業の立て直し」を命じられたが、十分な成果を出せなかったようだ。

 吉本氏はこのところの決算説明会には姿を見せず、米国で仕事をしている、といった話がもれ聞こえてきた。吉本氏についてアナリストから問われた永守会長は「私の経営学を学ぶには3年から5年かかる。(吉本氏の)潜在能力は高いので、順番にきちんと学んでいくのが近道。(担当している家電・商業・産業用事業で)15パーセント(の利益率)を上げて来いというのがミッション(使命)」と話していた。19年10月の決算説明会で、吉本社長に関する質問のなかで、「“永守経営塾”は甘くない」などと突き離す言い方が目立つようになった。

 19年12月26日付産経新聞は吉本氏を直撃取材している。「関氏の日本電産入り、社長就任への布石か」との問いかけに対して「ノーコメント。答えられることはない」と繰り返した。わずか2年で社長の首を切られることになるのだとすると、その胸中は、いかばかりだろうか。中国市場の不透明感などを背景に業績は悪化。吉本氏に代わる新しい社長候補を探していた。

 日産の関氏を20年2月、次期社長含みで迎え入れることになる。予定よりも早く公になったとすれば、日本電産入りが早まるかもしれない。日産からは、呉氏、吉本氏に次いで、関氏で3人目となる。技術者出身の関氏の経営手腕は未知数だ。永守氏が要求する2030年の売上高10兆円(20年3月期は1兆6500億円の見込み)、営業利益15%(同9%)を達成する“力仕事”をやりとげることができるのだろうか。

 永守氏は社長という肩書を譲っても、経営権を譲るつもりはさらさらない、というのが関係者の一致した見方だ。「オーナー経営者は死ぬまで経営者。死ぬまで経営に口を出す」(外資系証券会社のエレクトロニクス担当のアナリスト)。それが、創業者の業(ごう)だ。

(文=編集部)

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