なお、解約せずに口座を復活させる場合は現住所に変更したり、既婚女性が独身時代の口座を使うなら氏名変更および印鑑の変更もしなくてはならない。やたらと何枚もの書類を書き、やっとゴールにたどり着ける。筆者は記事を書く目的もあって実行したが、普通の人はかなりへこたれるだろうし、そもそも平日の銀行窓口にのんびり出かける時間などあるのかが疑問である。
保有口座がどんどん増えていく現代社会
今回の口座管理手数料問題は、マイナス金利の影響で銀行が稼ぎにくくなったとか、使っていない口座の維持コストがバカにならないとか、いろいろ言われているが、それは我々利用者のせいなのだろうか。
そもそも、積極的に自分から○○銀行に口座を開きました、という人は少数派だろう。アルバイト先、勤務先、家賃の支払いのためにと、その銀行と支店を指定されたから、自然と増えていったはずだ。
筆者も、当時勤めていた会社に給与振込口座のほかに経費精算用の口座をつくれといわれ、指定された支店に社員全員がつくらされた。さらに転職先でも同じことが起き、給与振込先が三菱UFJ銀行だというのに、同行の別の支店で新たにつくれという。そのせいで、結局同じ銀行に4つくらいの口座があるが、自分で開いたのは大学時代のひとつだけだ。
同じ銀行のはずなのに、融資先との関係が支店ベースだからという理由で、どんどん口座が増えていくのが日本社会の現状だ。これをユーザーが口座を解約せず放置しているのが問題だ、住所変更もろくにせずに怠慢だから口座維持手数料を取ります、というのはどうにも解せない。
銀行は口座維持コスト云々を言うなら、いっそ支店をなくして今後は通し番号にしたらどうなのか。それなら同行内で口座もひとつ、通帳もひとつで、口座売買も防げる。ウィンウィンでみなハッピーではないか。どうせ近い将来マイナンバーで名寄せをするつもりなのだろうから、銀行側もシンプルな設計に変えてはいかがだろう。そういう改革なら、我々のほうには不利益なく、何も困らないのだから。
(文=松崎のり子/消費経済ジャーナリスト)
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