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永田町の「謎」 現役議員秘書がぶっちゃける国会ウラ情報

ゴーン被告の不正出国&日本批判、反論すべき森雅子法相のプレゼン能力の低さが残念すぎる

文=神澤志万/国会議員秘書
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レバノンで会見を行うカルロス・ゴーン被告(写真:AFP/アフロ )

 国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。

 令和2年もよろしくお願いします。国会議員の秘書は、お正月三が日もなかなか休めません。地元を中心にいろいろな行事が行われるため、ボスの随行や代理で、毎年ひたすら飛び回っております。

 特にこのお正月は、去年のクリスマスに秋元司衆議院議員が東京地検特捜部に逮捕されたことに端を発する「IR疑惑」をめぐって、永田町はざわついていました。秋元議員のほかに「中国企業から100万円前後の現金を受け取った国会議員」が5人もいるということで、その特定で大騒ぎになりました。

 秘書たちは党のダメージを少なくするために、あるいは安倍政権の追及の材料にするために、とにかく情報収集に走り回りました。そして、その名前が明らかになるにつれ、永田町では驚きの声が上がりました。

 元郵政民営化担当大臣の下地幹郎衆議院議員は1月6日に記者会見を行い、100万円を受け取ったことを認め、日本維新の会から除名処分を受けています。一方で、ほかの自民党議員4人は前防衛大臣の岩屋毅衆議院議員が受領自体を否定しており、残り3人は関係者からの金銭の受領を認めているのに自民党はなんの処分も下しておらず、党としてのコンプライアンスのゆるさがよくわかりますよね。

 受領を認めた議員たちは「札幌の観光会社」や「逮捕された参議院議員の息子からの個人献金」などと思っていたと説明し、中国企業からの直接の受領は否定していますし、便宜を図った様子もないので、特捜部の見込み通りの結論にはなかなかいかないのではないかと思います。

 今回の事例では、議員と秘書の普段の信頼関係がよくわかります。きちんと収支報告書に記載していた中村裕之議員と、記載を怠っていた船橋利実議員、下地議員の差は、日頃から秘書を重用していたかどうかがわかる顕著な例でした。

 それにしても、中国企業はあまり有効とは思えない賄賂を贈っているなぁ、という印象です。担当副大臣だった秋元議員はともかく、IR(統合型リゾート)との関係がそう深くないように思える議員に対して金銭を提供してもねぇ……と正直思います。

 特にびっくりしたのは、岩屋議員の名前があったことです。前防衛相で大物ではありますが、IRのイメージはありませんし、北海道が地元の船橋議員なんて、まったく影響力を持っていないと思います。下地議員にしても、野党ですからね。逮捕された仲介者たちが親しくなりやすかった議員や秘書たちに近づいただけのような感じで、浅はかな人選という印象を持ちました。

選挙違反容疑で捜査が始まった議員事務所も

 そもそも、選挙の陣中見舞いでは100万円単位のお金をいただくこともあります。それをどのように計上するか、提供者本人の意思も確認しながら処理するのがプロの秘書の仕事です。しかし、そこにボスである議員または候補者との信頼関係がないと、秘書は本来のやるべきことができません。経験豊富な秘書が適正な判断をしていれば大丈夫なんですが……。

 もちろん、これは「収賄をごまかす」という意味ではないですよ。ベテラン秘書は、献金の受け方や「付き合うべきではない方」などについて、「議員に助言できる」という意味です。そして、何よりもボスに疑惑の目が向かないよう、日頃から気をつけています。それが支援者の信頼につながり、結局は選挙で信任を受けることにつながっていくのです。

 先輩秘書たちは、秋元議員の逮捕について「もし私が秘書だったら、ボスが逮捕されるようなことはしなかったのに。あの事務所はベテラン秘書を雇わなかったからね」と言っていました。秋元議員は自分が秘書出身だったこともあって、自分よりキャリアのある秘書を雇っていなかったと聞きました。秋元議員の秘書歴はそれほど長くはなく、海千山千のベテラン秘書の頼もしさをわかっていなかったのだなぁ、と残念に思います。

 このIR問題、どこまでいくのか注目ですね。また、IRとは関係ありませんが、選挙違反の容疑で捜査が始まっている議員事務所もありますから、関係者は落ち着かないでしょうね。

 もちろん、神澤はIR問題の只中にいる議員たちを擁護するつもりはありません。ただ、この問題よりも、今の日本が総力を挙げて取り組むべきことがあると思うのです。

ゴーン会見、森雅子法相の反論が残念すぎる?

 今の日本が取り組むべき問題は、日産自動車元会長のカルロス・ゴーン被告の不正出国問題です。すみやかに詳細な調査を行い、関係者を逮捕して国際世論の風向きを変えなければなりません。個人的には「IRよりもゴーンの事件のほうが外交的に大問題でしょ!」と思っています。

 ゴーン被告の起訴内容と不正出国は、まったく別の問題です。裁判はまだ行われていないのですから、特別背任や金融商品取引法違反については、無罪推定の原則に則って議論されるべきでしょう。これに対して、不正出国は明らかな犯罪行為です。米軍特殊部隊「グリーンベレー」の関係者の手を借りてレバノンに堂々と入国したなんて、許されることではありません。国際的にも批判されるべきです。

 15億円もの保釈金の没収が痛くもかゆくもなく、一説には22億円とも言われる不正出国の費用をポーンと支払えるのは、血も涙もない“大リストラ”を敢行したからですよね。かつてゴーン被告にリストラされた人たちは、憎々しく悔しい思いをしているのではないでしょうか。

 とはいえ、今のところ国際社会はゴーン被告に同情的のようです。レバノン政府も日本に引き渡すことはしないでしょう。ゴーン被告は1月8日にレバノンで記者会見を開きましたが、日本のメディアはテレビ東京など数社しか入れませんでした。ゴーン被告は「日本の司法制度は北朝鮮や旧ソ連と同じ」などと説明して、それを海外メディアが報道しました。この会見で、ゴーン被告は「日本は民主的でない後進国」とアピールすることに成功したのです。

 日本はもっと反論すべきなのに、森雅子法務大臣のプレゼン能力が低すぎてとても残念です。もっと、きちんとした反論をしてほしいです。ただ、確かに国内では以前から「人質司法」の問題は指摘されてきましたよね。長時間拘束されて取り調べを受けたり、接見禁止が続いて家族にすら連絡を取らせてもらえなかったりと、ひどい仕打ちを受けた人は多いです。

 だからといって、何も映画のような逃避行をしなくても、お金もあるのですから、獄中手記を書くとか何か手立てはあったのではないでしょうか。ゴーン被告には日本の司法制度を告発する映画の構想もあったようですが、もはや自己顕示欲を満たしたいだけとしか思えないです。

 おそらく、秋元議員も今ごろ厳しい取り調べを受けていると思いますが、それも含めて他人事とは思わずに、みなさんも自分が生活している日本という国の現状について考えてみていただきたいと思います。

(文=神澤志万/国会議員秘書)

『国会女子の忖度日記:議員秘書は、今日もイバラの道をゆく』 あの自民党女性議員の「このハゲーーッ!!」どころじゃない。ブラック企業も驚く労働環境にいる国会議員秘書の叫びを聞いて下さい。議員の傲慢、セクハラ、後援者の仰天陳情、議員のスキャンダル潰し、命懸けの選挙の裏、お局秘書のイジメ……知られざる仕事内容から苦境の数々まで20年以上永田町で働く現役女性政策秘書が書きました。人間関係の厳戒地帯で生き抜いてきた処世術は一般にも使えるはず。全編4コマまんが付き、辛さがよくわかります。 amazon_associate_logo.jpg

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