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東京・小池都知事、「公約達成ゼロ」でも今年再選確実の情勢か

文=小川裕夫/フリーランスライター
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2020年 東京消防庁「出初め式」(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

 小池百合子東京都知事は7月30日に1期目の任期満了を迎える。先の都知事選では、築地市場の豊洲市場への移転見直しや東京五輪開催費用の負担見直しなどを大々的に主張。前岩手県知事の増田寛也氏やジャーナリストの鳥越俊太郎氏などを破り、当選を果たした。都知事選中から世間は小池フィーバーに湧いた。その勢いを駆って、当選後に小池知事は希望の党を旗揚げ。旧民進党の議員も取り込み、自民党の対抗勢力として衆院選に臨んだ。

 小池知事は東京都という首都を掌握したという自負を抱き、政界に隠然たる力を打ち込むべく、知事という職にありながら国政にも勢力を築こうとした。そうした思惑を見透かされ、小池フィーバーは急速にしぼむ。結果、衆院選は自民党に惨敗した。野望を打ち砕かれた小池知事は「ガラスの天井」という敗戦の弁を述べて、都政に専念することを宣言。しかし、すでに求心力を失った小池知事は、都政でも迷走を始めていた。

 築地市場の豊洲移転見直しも延期しただけで成果は挙げられず、混乱を招いただけだった。東京五輪の負担軽減もできず、それどころか暑さ対策の失敗により、マラソン・競歩は札幌に開催地を奪われるという失態を演じた。そのほか、花粉症ゼロといった公約も達成できるどころかロードマップを示す見通しもない。待機児童ゼロや電柱ゼロといった小池都知事が掲げた「7つのゼロ」は、達成がゼロという悲惨な結末を迎えようとしている。

「小池都知事が再選に意欲的なのは当然。誰の目からも明らか」(都庁職員)とのことだが、選挙は水モノ。風向き次第で一気に形勢が逆転することもある。2020年の都知事選に小池知事が出馬すれば、当然ながら小池知事の苦戦は必至だ。落選する可能性も否定できない。

自民党へのすり寄り

 だが、戦後、現職都知事が出馬して負けた例はない。史上初の女性都知事という栄冠を手にした小池知事は、「現職で初めて都知事選に負ける知事」という汚名を着る可能性も囁かれていた。

 焦点になるのは、多くの固定票を持つ自民党の動向だ。16年の都知事選で自民党は独自候補を擁立したが、大半の議員が離反した。自民党の分裂選挙になったというのも小池氏当選の要因になったが、20年の都知事選で自民党が分裂する気配はない。

「前回の都知事選では、自民党本部の意向を無視して若狭勝衆議院議員(当時)が小池支持に回った。若狭議員を皮切りに、区議を中心に都議や国会議員の間にも小池支持が広がった。若狭議員は、いわば小池都知事を誕生させた最大の功労者。また、17年の衆院選では、若狭議員は自民党を離党して小池都知事が立ち上げた希望の党から出馬している。

 そこまで小池知事に尽くしたのに、小池知事は若狭議員の応援にも来ないし、冷たくあしらっている。こうした態度を見ていた都議や区議が『小池についていっても、何も得はない。都合が悪くなったら、切り捨てられるだけ』という空気ができてしまった。だから次の都知事選で小池支持を打ち出す自民党都議・区議はいない」(週刊誌記者)

 自民党が独自の対抗馬を擁立すれば、小池知事に勝ち目はない。現職の小池知事は今年の東京オリンピックの開会式でホスト役を務めるが、閉会式とパラリンピックの開会式は次の新知事がホスト役を務める。今のところ小池知事は2選出馬を明言していないが、表舞台で脚光を浴びる役割を、みすみす逃すことはないだろう。確実に再選出馬するはずだ。

 しかし、負け戦はできない。そうした事情が絡み合い、小池知事は自民党の影の実力者である二階俊博幹事長に接近。二階幹事長は小池知事への支持を匂わせている。

高まる都知事再選ムード

 そうしたなか、都知事選の日程が東京都選挙管理委員会から発表された。東京五輪による混乱を軽減するべく、都知事選の日程は告示日が6月18日、投開票日が7月5日に決まった。五輪の聖火ランナーは7月10日から都内を走り始め、24日に開会式が行われる。都知事選の投票日は五輪開幕直前にあたり、テレビ・新聞といった報道も五輪一色に染まっているだろう。必然的に都知事選の報道は減少し、選挙に関する情報は埋没してしまう。

「東京都には、多くの問題が山積みです。しかし、テレビ映えするようなイシューはないので、報道ベースでは特に争点がないような都知事選になるでしょう。無風選挙になる公算が高く、そうなった場合、現職が圧倒的に有利です。現職は選挙活動をしなくても『五輪のイベントに出席した』『五輪の競技場を視察した』といった公務をこなすだけで、ニュースとして取り上げられるのです。実質的に、公務が選挙活動になるからです」(永田町関係者)

 無風選挙というムードを生み出し、その一方で現職という立場をうまく活用する。これは、以前から選挙戦術として活用されてきた。最大限に活用したのが、石原慎太郎元都知事だ。

 11年の都知事選に4選を目指して出馬した石原氏は、「東日本大震災の対応」を理由にして表立って選挙活動をしなかった。テレビ・新聞は「公平な報道」を是とするため、できるだけ候補者の報道を平等に扱うように努める。特に、現職には最大限に配慮する。現職が表立って選挙活動をしなければ、ほかの候補が熱心に街頭演説や個人演説会を開いても、テレビや新聞は取り上げない。こうして11年の都知事選は、選挙報道がほとんどない無風状態がつくり出された。

 11年の都知事選で、石原陣営は選挙最終日のみ立川駅前と有楽町駅前の2カ所で街頭演説を実施したのみ。しかも、最終日というタイミングでの実施だから、選挙情勢は大きく動かない。現職は自分のペースで選挙を戦うことができる有利な立場にある。

 次回の都知事選について政界関係者からは、「この選挙日程は、小池知事にとって救いの神風。完全に小池知事に有利な日程で、このままなら勝利は間違いない」との声も漏れ出した。就任以来、支持率低下に歯止めがきかない小池都知事は、すでに“死に体”といわれるほど。しかし、ここにきて神風が吹き、形勢は激変。一気に都知事再選ムードが高まっている。
(文=小川裕夫/フリーランスライター)

小川裕夫/フリーライター

小川裕夫/フリーライター

行政誌編集者を経てフリーランスに。都市計画や鉄道などを専門分野として取材執筆。著書に『渋沢栄一と鉄道』(天夢人)、『私鉄特急の謎』(イースト新書Q)、『封印された東京の謎』(彩図社)、『東京王』(ぶんか社)など。

Twitter:@ogawahiro

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