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小林敦志「自動車大激変!」

トヨタ・ライズ&RAV4が圧巻の人気…トヨタのユーザー囲い込み戦略が本格化?

文=小林敦志/フリー編集記者
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トヨタの「ライズ」(「トヨタ ライズ | トヨタ自動車WEBサイト」より)

 自販連(日本自動車販売協会連合会)、そして全軽自協(全国軽自動車協会連合会)から、2019年12月の通称名(車名)別販売台数統計が発表となった。それと同時に、19暦年締め(19年1月から12月)の年間販売台数も発表されている。

 19年12月単月、そして19暦年締めの各ランキングの注目は、トヨタ自動車の「ライズ」であろう。19年12月単月では9117台で登録車のみのランキングで2位、そして19年暦年では1万6601台で40位となっている。12月単月はともかく、暦年締め40位はそんなに注目に値しないのでは? と思われるかもしれないが、ライズは19年11月にデビューしているので、19暦年のなかでフルでの販売月となったのは12月だけなのである。発売2カ月もたたずに1万6601台(月販平均約8300台)を販売したので、現段階では大ヒットモデルといってもいいだろう。

 ちなみに、トヨタの発表では19年11月5日の発売から1カ月時点での累計受注台数は約3万2000台となっている。さらに、月販目標台数は4100台となっているので、現時点で公表されている単月販売統計を見ると、平均販売台数ベースでダブルスコア以上のペースで販売(当該月登録ベース)が進んでいることになる。

 人気の背景にあるのは、やはり5ナンバーサイズのコンパクトなボディだろう。販売現場で聞くと、販売価格が高めなのが気になるというので、ウェブサイトで人気ナンバー1とされているG(2WD)に、ディーラーオプションのカーナビ、ETC2.0、フロアマットなど必要最低限のオプションを装着して試算すると、支払い総額が233万7209円となった。試しにトヨタ「カローラセダン」の1.8Sで同様の条件で試算すると249万9781円となったので、少なくとも目に見えるお買い得感というものは、なかなか感じられないかもしれない。

 世界的にSUVの人気が高まるなか、それまで「ランドクルーザー」「ランドクルーザー プラド」「ハリアー」ぐらいしかなかったなか、トヨタがSUVを本格的に充実させる第1弾となったのが「C-HR」。16年12月末に発売となっており、17暦年締め(17年1月から12月)年間販売台数は11万7299台/月販平均台数約9774台/月販目標台数6000台(デビュー当時)/(登録車のみで販売ランキング4位)と、大ヒットモデルとなった。

 ただ、流麗なクーペSUVスタイルを採用するためラゲッジルームや後席が狭いといったこともあり、SUVに乗りたいという人にはなかなか思うような販促活動ができなかったと聞く。19暦年締め年間販売台数は前年同期比72.5%ながら5万5667台(月販平均約4638台)と、一時期に比べると販売に勢いがないように見えるが、C-HRは19年10月にマイナーチェンジを実施したので、それ以前の販売がペースダウンしただけでなく、同年4月にトヨタ「RAV4」が発売となっているので、RAV4にニーズが流れた結果ともいえよう。

 なお、マイナーチェンジ時に月販目標台数は3600台に変更されており、マイナーチェンジ後の3カ月平均の販売台数では約3742台となっているので、目標はクリアしていることになる。

RAV4が19年度上半期SUV販売1位に

 前述の通り、19年4月には日本国内で新型RAV4がデビューした。12カ月フルカウントとはならないが、RAV4の19暦年締め年間販売台数は5万3965台/4月から12月の月販平均台数約5996台/(月販目標台数3000台)となり、19事業年度締め上半期SUV販売台数第1位となるなど、大ヒットとなっている。

 新車販売の不振傾向が続くなかで新規投入したSUV(RAV4も国内は久しぶりの復活販売なので)のヒットが続いたわけだが、当然ながら、トヨタ以外のメーカーにも“ライバル”と呼べるモデルがラインナップされている。しかも、それらはトヨタのモデルよりも先に新規投入されており、本来はそれらライバル車の購入を検討していた人まで“食って”しまったのではないかと考えられがちだが、実はそうでもないのである。

 C-HRのライバルとしては、ホンダ「ヴェゼル」を挙げることができる。ヴェゼルの19暦年締め年間販売台数は5万5886台/月販平均台数約4657台/月販目標台数5000台/(登録車のみ販売ランキングで14位)となっており、C-HRをわずかに上回る実績を残した。ヴェゼルは20年にフルモデルチェンジを予定しているのだが、前年同期(18暦年締め)比93.7%となっており、今もC-HRと激しいバトルを繰り広げている。

 RAV4のライバルとしてはホンダ「CR-V」を挙げることができるが、こちらの19暦年締め年間販売台数は1万3041台/月販平均台数約1086台となっている。RAV4に比べると物足りない実績のようにも見えるが、月販目標台数は1200台で設定されているので目標達成率が約90%となっており、販売不振というわけではない。

 マツダ「CX-5」も同クラス車となるが、19暦年締め年間販売台数は3万1538台(月販平均台数約2628台/月販目標台数2400台)となっている。前年同期比82.4%となっているが、目立ってRAV4の悪影響を受けているとも言い切れない。スバル「フォレスター」に至っては、前年同期比で112.6%となっている。同じトヨタながらトヨペット店専売ともなるハリアーもライバルといえるが、こちらも20年にフルモデルチェンジ予定の末期モデルながら、19暦年締めで3万6249台を販売(前年同期比80.6%)となっている。

好調ライズはクロスビーを“食って”いるのか?

 それではライズはどうかというと、スズキが17年12月に「クロスビー」を発売している。1L直噴ターボを搭載するファッショナブルなコンパクトSUVという点では、ライズのライバルといってもいいだろう。

 クロスビーの19暦年締め販売台数は2万4108台(月販平均台数2009台/月販目標2000台)となり、前年同期比78.7%となっている。若干ライズの影響を受けているのかとも思えるのだが、すでに19年初頭から単月統計ベースでも前年同期比で80%を割り込む月も目立っていたので、ライズがクロスビーを食っているかどうかは今後の販売統計を見て判断したほうがよさそうだ。

 このような傾向は、過去には16年11月にトヨタが「ルーミー」&「タンク」を発売したときにも見られた。コンパクトなボディながら2列シートで背が高いMPVスタイルと後席スライドドアを採用するといったコンセプトは、ルーミー&タンクが発売になる前はスズキ「ソリオ」の独壇場で、ソリオは非常に良く売れていた。そして、トヨタがソリオとキャラクターがかぶるルーミー&タンクを投入してきたので、ソリオの動向に注目が集まった。

 17暦年締めのルーミー&タンクの総販売台数は14万9529台(月販平均台数約1万2460台/月販売目標台数は2モデル合算で7500台/1モデルは各3750台)とデビュー直後から大ヒットしたのだが、ソリオは同時期に4万9742台を販売、前年同期比101.9%(月販平均台数約4145台/月販目標台数3500台)となり、相乗効果で販売台数が増えたといっていい結果となった。ちなみに、19暦年締めで4万4488台(前年同期比99.1%)を販売している。

消極的な理由で軽自動車に乗り換えるケースも

 トヨタがライバル車の販売台数をほぼ奪わずに新規投入車の販売台数を目立って伸ばす背景にあるのは、既納トヨタ車からの代替え促進だ。トヨタに限らず、国内販売が長い間低迷傾向にあるのは、消費者のクルマへの興味が薄くなったこともあり、積極的に新車への代替えをせずに長期間乗り続けるケースが目立っていることが挙げられる。

 その中には、今ではすっかり少数派となったセダンに乗り続けている人も多い。そのような人が長期間乗り続けたことで、不具合や費用がかかる部品交換などが発生し、ようやく新車への乗り替えを検討しても、日本車で見ればセダンのラインナップ数はそんなに少なくはないが、モデルレンジの長い“ご長寿モデル”や、ボディサイズが大きかったりして日本市場になじみにくいグローバルモデルがそのままラインナップされているケースも多く、積極的に乗りたいモデルがあまりないことも多い。年配ユーザーも多いので、維持費なども考えて消極的理由で軽自動車に乗り替える人も多い。

 そうなると、一部ダイハツからのOEMしかなく、軽自動車販売に積極的でもないトヨタとしては、他メーカーの軽自動車へユーザーが流れてしまう可能性が高いのである。軽自動車は新車販売全体の4割にまで迫ろうとしているが、みんながみんな「軽自動車に乗りたい」という積極的な理由で選んでいるわけではない。「どうせ乗りたいクルマがないなら」などという消極的な理由で選ばれているケースも多いのである。

 そこで、コンパクトカーのなかでもルーミー&タンクのようなMPVや、ライズのようなSUVなど多彩なモデルラインナップの構成、人気のSUVのラインナップを強化するなどの動きをトヨタが見せている。他メーカーが目新しいモデルをデビューさせ、興味を示すが、長い間トヨタ車に乗ってきた人ほど、「トヨタで同じようなモデルがあればなぁ」と思うケースも多いようだ。

 つまり、トヨタが新規車種を投入し、そこに他メーカーのライバル車がいたとしても、トヨタに「ライバルをつぶそう」という気持ちがまったくないとはいえないが、効果としては過去のトヨタ車(特にセダン系)ユーザーの他メーカーへの流出を食い止めるほうを期待しているのは間違いないだろう。

“ユーザー流出阻止”を強化するトヨタの戦略

 日本の新車販売市場は縮小傾向に歯止めがきかない。このような市場環境では、まず「既納客」の囲い込みが優先されるものと考える。しかし、仮に囲い込みが成功しても“免許返納”や“シェアリング社会”の浸透などでクルマの所有をやめる人も後を絶たない。

 もちろん、今までのトヨタ車にはないようなモデルを出せば、他メーカー車からの乗り替えも十分期待できる。今時、より日本市場に合わせたモデルの積極投入は、費用対効果を考えても圧倒的な国内販売シェアを持つトヨタ以外はなかなかできず、そこもトヨタの強みとなっているのである。

 カローラセダンの上級移行も、「マークX」やその前の「マークII」3兄弟など過去の大型セダンユーザーの乗り替えまでを視野に入れているのは確かだ。20年5月からのトヨタ系全店舗全車種扱い開始も、表現は少々荒っぽいが、より確実に「トヨタユーザーの流出阻止」が目的と考えれば、“トヨタユーザーの囲い込み”という共通キーワードでトヨタのさまざまな新規投入車も含む新しい試みを見ると、その動きに一貫性を感じることができるといえよう。

(文=小林敦志/フリー編集記者)

小林敦志/フリー編集記者

小林敦志/フリー編集記者

1967年北海道生まれ。新車ディーラーのセールスマンを社会人スタートとし、その後新車購入情報誌編集長などを経て2011年よりフリーとなる。

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