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鬼塚眞子「目を背けてはいけないお金のはなし」

賠償金5億円も…自動車保険、保険金足りず自腹?保険会社によって過失割合が変わる?

文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表
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 賠償といえば、日常生活の事故で第三者にケガをさせたり、物を壊した場合に補償される「個人賠償保険」が注目されていますが、契約している火災保険やクレジットカードに付いている場合も多いです。この場合も実際の損害賠償以上の賠償金は支払われませんので、保険料の無駄を省く意味でも、補償の確認をしたいものです。

 余談ですが、日本の損保調査会社や鑑定人のスキルは世界に誇れるほどで、ほぼ悪事は発覚しているようです。悪いことはできないものですね。

Q3:「対人無制限」といわれるが、実際にはいくらまでなの? 被害者が複数いた場合、一人あたりの上限は決められているのでは?

 損保広報担当者いわく「対人無制限の上限金額は設定していません。また、被害者が大勢になった場合でも、一人あたりの上限を決めたり、通算制限があるわけではありません」。

 では、なぜ損保会社は対人無制限を勧めるのでしょうか。1億円などと上限を決めたほうが、保険料も少しは安くなるのではないでしょうか。

「弊社でまとめた、高額認定損害額の一覧表をご覧くださればおわかりいただけるかと思います。最近の死亡・後遺障害の判決は3億円を超えることも珍しくなくなっています」

 表を見ると、最高額は5億2800万円。筆者がこの算出の理由を調べたところ、被害者は開業医で年収も高額であり、医師としての定年まで27年間あると認定されたからのようです。

 さらに注目すべきは、表の損害に後遺障害が並ぶことです。後遺傷害の賠償金が高額になった理由として、全介護を要する非常に重篤な後遺障害が残ったことに加え、被害者が10代・20代なのでこれからの人生で得られる逸失利益を考慮してのことだと推測します。

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 若い高額所得者も増えています。極端な例ですが、もし仮に30歳で年収1億円を超える人が交通事故に遭い、死亡もしくは後遺障害の状態に陥ったとします。その人が年収1億円を定年とみなされる60歳までコンスタントにキープしていたと仮定したら、ざっくりと計算しても逸失利益は最低でも1億×(60歳-30歳)=30億となります。こんな高額になったとしても、加害者が対人無制限の保険に加入し、賠償額が30億円と認定されたら、30億円が被害者に支払われることになります。

 ここまで高額な賠償額になるケースは少ないでしょうし、今後、自動車もAI化が進めば事故も減るでしょう。ただ、被害者の方の年収や被害状況や年齢などによって、5億円を超える賠償額が発生する可能性もゼロではないことは覚えておきたいものです。

Q4:加害者が対人無制限ではない保険に加入していました。仮に後遺障害を負って高額被害と認定された場合、足りない分は加害者側の保険会社が支払ってくれるの?

「運転に自信があるから」と無制限に設定していない方が、一定数いらっしゃることは事実です。もちろん、損害保険会社は昨今の判決例を示し、対人無制限を推奨していますが、あくまでも補償内容をどうするかはお客様の判断です。不幸にも質問のようなケースになると、どうなるのでしょうか。

「契約者の補償が対人無制限でなく、高額な賠償金を支払わないといけない場合、不足が発生するとしても、その分を保険会社から支払われることはありません」(損保広報担当者)

Q5:そうした場合、結局、被害者は泣き寝入りするしかないのでしょうか。

「被害者が車に乗っていた場合に備える補償はあります。人身傷害保険というタイプです。この補償は、ご契約のお車に搭乗中などの事故でケガをされた場合に、治療費はもちろん、働けない間の収入や精神的損害などを補償します。万一、ケガをして死亡された場合や後遺障害が発生した場合も補償するものです。対人・対物賠償のみ等のお引き受けも可能ですが、人身傷害保険の付帯をお勧めしています」(損保広報担当者)

 若い世代では車を保有せず、自転車を利用する人も増えました。自動車との事故で自転車運転者が被害を受けた場合、自転車保険で人身傷害(人身賠償)を補償してくれる商品もあることは知っていただきたいと思います。

 さらに、歩行者と自動車の事故の場合は、どうなるのでしょう。人身傷害保険でいえば、車内のみだけの補償、車内と車外も含めた補償と商品は2種類あります。当然、車内だけなら歩行者が被害者の場合、残念ながら補償はされません。歩行中や自転車走行時の被害を考え、人身傷害保険は車外も補償するプランを検討したいですね。

 新年にあたり、家族と保険の見直しについて考えられた方も多いことでしょう。自動車事故の取材を通して、加害者だけではなく、「悔しい、あの事故さえなければ」と不自由になった足を何度も叩きながら涙をこぼされた方、親が被害者になり希望している進路を断念したお子様など、被害者やご家族の人生も大きく変わった例を数多くみてきました。「被害者も加害者も生まない車社会」を社会全体が目指す一方で、「もしも」の時には自分でしっかりと備えることも、深く心に刻んで、今一度、加入されている自動車保険の補償内容を確認していただければと思います。

(文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表)

※後編に続く

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