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藤和彦「日本と世界の先を読む」

中国発コロナウイルス肺炎患者、日本でも確認…SARS以上の猛威の可能性も

文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員
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 夫婦間の感染が疑われるケースが生じたことから、WHOは14日、「人から人に感染する可能性は排除できない」との見解を示している。神奈川県の男性も武漢市で肺炎患者(父親)と一緒に過ごしていたことが感染の原因と推定されているが、男性から日本国内で二次感染したと疑われる症例は出ていない。そのため厚生労働省は、「同居する家族や医療従事者などの『濃厚接触者』以外にまで感染が拡大する可能性は低い」としている。平たく言えば、「電車ですれ違う程度の接触は大丈夫」とのことだが、咳やくしゃみの飛沫は「濃厚接触」となるリスクがある。

 感染症に詳しい東北大学の押谷仁教授は「SARSは発生後にウイルスが変異し、人から人に素早く感染するようになり、世界での流行につながった。新型ウイルスも同様に変異する可能性がないとは言い切れない」と指摘している(1月16日付日本経済新聞より)。中国では2日までに発症した41人(多くが海鮮市場で働いていた)のうち、16日までに2人が死亡している。いずれもが深刻な基礎疾患を抱えた60代の男性である。

 全容がいまだ明らかになっていないが、現時点の新型コロナウイルスの致死率は5%弱である。この数字はSARSやMERSよりも格段に低いが、「世界に与える悪影響はこれらを上回るのではないか」と筆者は懸念している。

 パンデミック(病気の世界的な流行)といえば、1918年のスペイン風邪(H1N1)が思い浮かぶ。短期間に世界で約5000万人が死亡したともいわれている。致死率はさぞ高かったかと思いがちだが、実際の致死率は2.5%以上と意外と低い数字である。2009年の新型インフルエンザ(H1N1)の流行で日本全体が大騒ぎとなったことは記憶に新しいが、国内で1266人の感染者が発生したものの、致死率は0.16%と世界最低レベルだった。

「致死率が低いウイルスのほうがスーパースプレッダーが出現する可能性が高く、パンデミックが起きやすい」とする専門家の見解を踏まえると、致死率が低い今回の新型コロナウイルスのほうがSARSやMERSの場合よりも深刻な事態をもたらす可能性がある。高齢者が重症化するというコロナウイルスの蔓延により、世界に冠たる超高齢社会である日本が最も深刻な打撃を受けるかもしれない。

  いたずらに不安を煽るのは本望ではないが、日本全体で新型コロナウイルスについての警戒レベルを上げるべきではないだろうか。

(文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員)