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鬼塚眞子「目を背けてはいけないお金のはなし」

自動車保険、対物賠償を無制限にせず賠償金2億円?保険会社が交渉してくれない事故?

文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表
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 私が業界紙の記者時代に交通事故裁判を担当していた経験から言えば、自動車事故は弁護士でも経験がなければ非常に難しいと痛感したものです。一般の方が、もらい事故に遭えば、自分で交渉しろと言われても困り果ててしまいます。どうすればいいのでしょうか。

「弁護士費用特約をセットすると安心です。弊社では『もらい事故アシスト』と呼ぶこのオプションは、相談料から報酬まで弁護士にかかる総トータル費用を、一定の限度額内であれば保険で支払うことができます」(大手損保広報担当者)

 逆にいうと、被害者のご遺族が自動車保険で弁護士費用特約をセットしていなかった場合、遺族の方やケガをされた方が自ら交渉するか、自力で弁護士を探さないといけないのです。示談交渉が難航することもありますので、弁護士費用特約は付帯しておくと安心です。

 また、示談交渉の際の重要な証拠映像が撮れるとなるドライブレコーダーは装着をオススメしたいものです。大手損保各社の商品は、ドライブレコーダーによる運転診断をオプションでセットできます。高齢者の運転免許の返上は話題ですが、なかには耳を貸さない高齢者も一定数います。そんな方にも客観視していただける判断材料として非常に有効だと考えます。

Q10:ネット自動車保険は対面の自動車保険と補償が違う?

 ネット保険は「安い」というイメージがあります。そのため、「対人・対物無制限といっても、代理店型損保の対面販売と比較すると補償内容が違うのではないか」という疑問です。

 ネット自動車保険を牽引する損保会社の広報に聞いてみました。

「ネット保険が安い理由は、ご承知のとおり、代理店などを通さず販売できるため、代理店を通してお客様とやりとりをする営業コストが抑えられるからです。当然のこととして、お客様の万一のときにご安心いただける事故解決サービス等の提供が保険の要であり、重要と考えております。対人対物事故の補償はもちろん、お支払いする保険金なども一般的な代理店型となんら変わることはありません。さらに事故解決サービスの一層の充実に向け日頃から注力しております」

 なお、前契約に等級ダウン事故等がない場合、前契約の保険会社を問わずに「無事故割引」が適用される会社もあるので、要チェックですね。

命日の花

 交通事故はその瞬間だけで終わりません。その後のご家族の人生まで大きく変わるケースも数多く取材しました。事故現場を訪れた際、「突然、事故で家族が亡くなってしまい、あれから3年も経過しているのに、まだ心の整理がつきません。きちんと片付けますので、せめて命日の今日は、花を供えることをお許しください」という手紙とともに、小さなお花が供えられている現場には胸を打たれました。

 交通事故のケガや心の傷は、お金で癒やすことはできません。けれど、お金がなければ相手への補償をすることも、被害者の方も事故後の雑費なども多くかかり、人生の一歩を歩み出すことができないのも事実です。その一助を担うのが自動車保険だと考えます。保険料は1円でも安いことは理想ですが、自動車事故ほど実務を知った上で選択していただくことが大切だと実感しています。少し眠かったり、いらいらしているときは、思い切って路肩に車を止めてリフレッシュするなどの決断も、非常に重要です。

【まとめ】

(1)自動車保険の賠償額は、判例を元に総合的に判断される。

(2)複数の自動車保険に加入することは現実的に難しい。また、認定された賠償額以上は支払われない。

(3)対人賠償補償は、5億円以上のケースも発生している。対人賠償無制限は不可欠。

(4)加害者の補償内容が対人無制限でない場合は、残念ながら保険会社は不足分を補てんしない。

(5)(4)の場合に備え、人身傷害保険の検討は必要。歩行者や自転車運転中の事故も対象となる車外補償型の検討も。

(6)自動車事故で被害に遭った持ち物や衣服なども補償の対象となる。

(7)加害者が企業の所有車に乗っていても、個人の所有車と賠償額が異なることはない。

(8)事故が原因で精神疾患になり、休業や失業をした場合、因果関係が認められれば逸失利益として認められるケースも。

(9)保険会社が交渉の対象とならないもらい事故が多発。こうした場合に備え、弁護士費用特約をセットしておけば安心。

(10)ネット自動車保険は対面販売と補償内容に違いはない。

(11)示談交渉や裁判でもドライブレコーダーの記録は証拠として採用される。ドライブレコーダーの装着は必須と考えるべき。大手損保各社は、ドライブレコーダーによる運転診断をしてくれるオプション付きの商品を発売しているため、こちらも検討したい。

(文=鬼塚眞子/一般社団法人日本保険ジャーナリスト協会代表、一般社団法人介護相続コンシェルジュ協会代表)

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