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浜田和幸「日本人のサバイバルのために」

UAE、国民を火星移住と発表…大林組、木星入口までの宇宙エレベーター実現へ構想着手

文=浜田和幸/国際政治経済学者
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 中国は現代版シルクロードと呼ばれる「一帯一路構想」を推進している。アジアとヨーロッパ、そしてアフリカや南米にまで道路、鉄道、港湾などインフラ整備を進め、新たな巨大な経済圏を生み出そうというものだ。最近では、サイバー空間から宇宙にまで拡大する意図を鮮明にしている、まさに「宇宙シルクロード」プロジェクトである。

 この構想を実現する上で、重要な役割を期待されているのが「宇宙エレベーター」にほかならない。材料となるカーボンナノチューブの開発が進んだため、宇宙エレベーターの実現は今や秒読み段階に入ったといっても過言ではない。日本は50年を目標に宇宙エレベーター建設計画を進めている。建設場所はエレベーターの長さを最短にでき、台風や雷など自然災害のない赤道上の公海が想定される。

 JAXAのH-2AロケットやNASAのスペースシャトルと比べ、宇宙エレベーターであれば物資輸送コストは大幅に軽減される。しかも、化学燃料を使い大気圏脱出に大きな推力とエネルギーを必要とするロケットと違い、宇宙エレベーターの場合は宇宙空間では太陽光や太陽プラズマを電力に変換して推力にできるため、エネルギー効率が格段に高まるメリットがある。

 その上、オゾン層の破壊もあり得ないし、宇宙ゴミも発生しない。大林組は火星への入り口となる地上から5万7000kmを超え、木星への入り口となる9万6000kmに達する宇宙エレベーターの構想を進めている。時速500kmで移動するため、宇宙ステーションには3~4日で到達できる。日本政府の支援の下、完成目標は50年である。

 しかし、後発の中国は「45年に完成させる」と宣言。49年に共産党国家の建国100周年を迎える中国の大胆な試みである。日本のネックは1基10兆円から20兆円と見られる高額な建設費である。中国は100兆円規模の資金を投入する意向を示しており、先行していた日本は厳しい開発競争に直面している。平和な宇宙開発という観点からいえば、日中の協力が欠かせないと思われる。20年3月末に国賓として来日する予定の習近平国家主席であるが、安倍首相との間で宇宙の共同開発にどのような協議を展開するのか、大いに期待と注目が寄せられている。

 半世紀前、こうした宇宙開発は旧ソ連が先頭を走っていた。その後、1970年代にはアメリカが取って代わった。筆者の友人でもあった未来学者アーサー・クラーク氏が宇宙エレベーターを最初に提唱した人物である。アメリカの航空宇宙産業界はNASAの支援を受け、その実現に取り組んだ。しかし、財政難のため2010年についに計画を断念してしまった。

 その後、アメリカに代わって、宇宙エレベーター開発に参入してきたのが中国である。19年6月、スペインのマドリードで開催された「宇宙エレベーター開発研究国際会議」に大デレゲーションを送り込み、主要な研究発表を行ったのは中国であった。欧米や日本と比べ、宇宙開発にかける中国の本気度と凄みを感じさせられる。「宇宙シルクロード」は単なるスローガンや夢物語ではなさそうだ。

UAE、国民の1割を火星に

 もちろん、宇宙ビジネスに本気で取り組んでいる国はほかにも存在する。例えば、中東のアラブ首長国連邦(UAE)である。17年、「世界政府サミット」の場において、同国政府は国家プロジェクトとして「2117年までに国民の60万人を火星に移住させる」と発表した。2019年12月2日のUAEの建国記念日レセプションでも駐日大使が同様の発言を行い、日本人の間で、UAEの宇宙ビジネスを強く印象づけたものである。ちなみに、UAE初の国産衛星は三菱重工業が受注している。日本とUAEの宇宙ビジネス協力は着実に進んでいる。

 同国の指導者は言う。

「現状のような地球温暖化が進めば、人類も地球も遅かれ早かれ終末を迎える。できる限り早く、地球以外の惑星への移住が必須となる。火星には水も確認されており、気象条件も悪くない。重力も地球の3分の1程度で、月よりはるかに暮らしやすい」

 最初は国民の1割だが、順次すべての国民を火星に移住させるという。国を挙げての地球脱出計画を正式に発表したのはUAEが人類の歴史上初のことである。火星にはレアメタルが豊富に存在していることが確認されており、精錬作業を必要としない貴金属の宝庫と目されている。小国とはいえ、中東世界で資源開発に成功してきたUAEならではの宇宙資源開発戦略が読み取れる。

 世界最高の高さ163階のブルジュ・ハリファを擁するUAEでは、20年のドバイ万博の機会に同タワーを使った宇宙エレベーターの模擬デモンストレーションの準備も進めている。もちろん、アメリカも中国も火星には着目しており、今後は火星探査レースや移住計画が加速するに違いない。

「銀河鉄道999(スリーナイン)」で宇宙への旅立ちに想像力で先鞭をつけた日本のがんばりが求められる。幸い、わが国にはJAXAの技術的蓄積もあれば、日本学術会議のマスタープランも存在する。加えて、トヨタや大林組など大企業とALEなど新興企業の協力が実現すれば、日本発の宇宙ビジネスの飛翔が大いに期待できそうだ。

(文=浜田和幸/国際政治経済学者)

●浜田和幸

国際政治経済学者。前参議院議員、元総務大臣・外務大臣政務官。2020東京オリンピック招致委員。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士

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