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スカイマーク、破綻からわずか5年で再上場へ…民間ファンド主導、鮮やかな再建の成功例

文=編集部
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2014年、スカイマーク客室乗務員のミニスカ制服が議論を呼んだ(写真:東洋経済/アフロ)

「航空業界のホリエモン」と呼ばれた西久保愼一氏が“墜落”させたスカイマークをインテグラルの佐山展生氏が再生させ、投資の出口となる再上場に漕ぎつけた。スカイマークは2019年10月、東京証券取引所に上場を申請。上場時期は今年4~6月とみられている。

 国内第3位の航空会社スカイマークは15年1月28日、民事再生法の適用を東京地裁に申し立てた。負債総額は710億円。スカイマークの救世主となった佐山氏は一躍“時の人”となった。スカイマークとスポンサー契約を結んだ投資ファンド、インテグラル(東京・千代田区)の代表取締役パートナーである。

 インテグラルはスカイマークに最大90億円のつなぎ融資を実施した。将来、融資を株式に切り替え、過半数を取得する段取りだった。再生スポンサーの募集・選定などを行うフィナンシャル・アドバイザーには、佐山氏が取締役パートナーのM&A(合併・買収)助言会社、GCAサヴィアンが就いた。資金だけでなく事業面も民間ファンドが主導するのは珍しい。

 全日本空輸を傘下に持つANAホールディングス(HD)を支援企業として選んだ。債権者が届け出た債権総額は3000億円に上った。大口債権者は航空業界の事業者だった。ANAHDがスポンサーになることで、債権者との交渉がスムーズにいくことが期待された。

 スカイマークは欧州航空機大手エアバスからの機体購入をキャンセルし、同社から最大7億ドル(約830億円)という巨額の違約金の支払いを求められていた。スカイマークの争奪戦は、当初、最大の債権者である米リース会社イントレピッド・アビエーションが策定した案の米デルタ航空が優勢と見られていたが、ANAHDがエアバスなどに「将来の機材発注」の意向を伝えたことで土壇場で逆転した。エアバスはスカイマークが購入契約を破棄した超大型機「A380」2機を中東のエミレーツ航空に売却。これで最大の難問が解決した。

 15年8月5日、東京地裁で開かれた債権者集会でANAHDが支援する再生計画が認可された。スカイマークは100%減資を行うと同時に、第三者割当を実施。インテグラル、ANAHD、UDS(日本政策投資銀行と三井住友銀行が共同出資するファンド)が総額180億円を引き受けた。出資比率はインテグラルが50.1%、UDSが33.4%、ANAHDが16.5%となった。

 同年9月29日、新体制が発足した。会長に佐山氏、社長に日本政策投資銀行元取締役の市江正彦氏が就任した。確定債権総額1543億円に対し、弁済額は161億円。第三者割当増資の180億円を弁済資金とした。16年3月、民事再生手続きは終結。20年をメドに再上場する計画を進めてきた。

小型機で国際線に参入

 19年3月期の決算は4期連続の増収増益となった。売上高は前期比6%増の882億円、営業利益は0.8%増の72億円、純利益は30%増の91億円だった。中部国際空港セントレア~鹿児島、鹿児島~奄美といった新路線の開設や深夜便により、搭乗者数は2%増の738万人となった。燃料費の高騰(約23%増)の影響で営業利益は微増にとどまったが、為替差益(10億円)が寄与し、最終利益は3割増となった。

 19年10月、東証に再上場を申請。同時に国際線参入を明らかにした。11月29日、初の国際定期便が成田空港からサイパンに向けて飛んだ。国際線進出は悲願でもあり、鬼門でもある。日本航空(JAL)やANAHDに対抗する「第三極」を目指し、11年、欧州エアバスと大型機「A380」の購入契約を締結。成田-ニューヨークなど欧米線への参入を計画した。

 しかし、LCC(格安航空会社)の相次ぐ参入により、国内線の価格競争が激化。業績が悪化したため国際線への進出を断念した。「A380」のキャンセルに伴い、巨額の賠償を迫られたことから、15年に経営破綻した。

 再上場に備えて経営体制を変更。19年11月1日付で佐山会長は代表権のない会長になり、専務に昇格した取締役の西岡成浩氏が、市江正彦社長と共に代表権を持った。西岡氏はモルガン・スタンレー証券からインテグラルに転じた。スカイマークでは上場準備担当の執行役員だった。佐山会長はインテグラルの代表取締役であることから、上場を申請した企業の代表を兼務できないため、代表権を西岡氏に移した。

 国際線をスカイマークの成長戦略の柱に据え、小型機で再チャレンジする。競合の少ないニッチ路線を中心に参入する方針だ。ANAHDとの協業は縮小に向かう。ANAHDが出資比率を20%未満に抑えたのは、スカイマークのドル箱である羽田空港での発着枠1日36往復分を国土交通省に没収されるのを避けるためだった。

 ANAHDのグループ戦略にスカイマークは組み込まれておらず、LCCはバニラエアを統合したピーチ・アビエーションが中心である。羽田枠を持つスカイマークがほかの大手と組むことを防ぐため、関係は維持するとみられるが、強化することはない。スカイマークは再上場後、フルサービスキャリアでも格安航空会社でもない「第三の道」を歩むことになる。

 現在、羽田などを起点に、新千歳、福岡、沖縄など国内の主要幹線をほぼカバーしている。使用する29機はすべて米ボーイングの小型機「737」だ。機種を統一し、整備費や訓練費を抑制している。チケット販売はネット直販が8割に達している。

 スカイマークは1996年、エイチ・アイ・エス(HIS)会長の澤田秀雄氏らの出資により設立され、割安な料金を武器に顧客の支持を集めた。インターネット接続会社を経営する西久保氏がオーナーを引き継ぎ、2004年に社長に就き、超大型機導入で国際線参入を目指したのがあだとなった。

 再上場に漕ぎつけた佐山氏は、今後、スカイマークの株式をどこに売却するのか。航空会社(エアライン)が有力な選択肢となる。投資ファンドは、経営再建した会社の株式を再上場して投下資金を回収するのがセオリーである。

(文=編集部)

BusinessJournal編集部

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