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「加谷珪一の知っとくエコノミー論」

中国人観光客が大挙、日本が「物価も賃金も安い国」になった現実とは

文=加谷珪一/経済評論家
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日本人の賃金が低いことが最大の原因

 日本は諸外国と比べて、なぜここまで物価が安くなっているのだろうか。基本的にモノやサービスの価格は、消費者の購買力に比例するので、端的に言ってしまうと日本の賃金が安くなったことが最大の原因である。

 OECDの調査によると、購買力平価でドル換算した日本の平均賃金は約4万ドルだが、米国は6万3000ドル、フランスは4万4000ドル、オーストラリアは5万3000ドルとなっている。日本は先進諸外国のなかでは圧倒的に賃金が安いので、日本の消費者の購買力も低くなり、結果として国内物価も安く推移している。

 当然のことながら、中国やタイの平均賃金は日本よりも低いが、平均値が低いからといって、購買力が小さいとは限らない。近年、企業活動のグローバル化が進んでおり、一定水準以上のグローバル企業の場合、どの地域の社員にもほぼ同じ賃金を支払うのが当たり前となっているからだ。

 こうしたグローバル企業の初任給は40~50万円が相場といわれており、日本の平均的な初任給と比較するとかなり高い。アジア地域の労働者でも、相応の大学を出てグローバル企業、もしくはそれに類する企業に就職した人の場合、数百万円の年収を稼ぐのはザラである。そうなると、全体の一部とはいえ、日本と同レベルの物価であっても、モノやサービスをバンバン購入する人が一定数存在してもおかしくない。

 特に中国の場合、14億人もの人口があるため、仮にそうした所得層が5%しかいなくても、7000万人の市場規模になる。上海や香港に行くと物価が高いと感じるのはそのためであり、こうした階層の人たちであれば、逆に日本にやってきた時には、物価が安いと感じるはずだ。

デフレで自動車価格が決して下がらない理由

 現代社会は以前と比較して、全世界的に価格平準化が進みやすい環境にある。自動車の価格は国内事情とは一切関係なくグローバル市場の需要やコスト構造で決まってしまう。日本ではデフレが進んでいるとされてきたが、過去20年、自動車価格が安くなったことは一度もない。クルマは次々モデルチェンジするので、同一車種と装備のクルマで比較することはできないが、基本的にクルマの価格は一貫して上昇していると考えてよい。

 スマホも同様である。スマホはどこでつくってもコストはほぼ同じであり、最終的な販売価格も似たような水準となる。スマホを使って行うネット通信や通話についても同じことがいえる。通信会社というのは典型的な設備産業であり、コストの多くは、交換機、基地局などの通信機器類である。

 どの国の通信会社であっても、ほぼ同一の通信機器を使って回線を構築しているので、コスト構造もほぼ同じになる。政府が通信料金に対して規制をかけない限り、同じような料金になることが多い。飲食についても、人件費こそ違うだろうが、原材料はほぼすべてが輸入なので、やはりグローバル価格の影響を受けてしまう。

 社会のIT化の進展はこうした傾向をさらに顕著にする効果をもたらすので、相対的に賃金の安い国は不利になる。日本は物価が安いので住みやすいという考え方もあるが、それは賃金が安いことの裏返しであり、グローバルに価格が決まる製品やサービスを購入する負担が大きいことを意味している。

 価格が安いことは、インバウンド・ビジネスには効果があるが、消費者の生活にはマイナス面が多い。日本は安い国のままでよいのか、もう一度、真剣に考え直す必要があるだろう。

(文=加谷珪一/経済評論家)

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