
今や急速な高齢化の弊害が、救急活動にまで影響を与えていることが鮮明になっている。消防庁が発表した「令和元年版 救急・救助の現況」によると、2018年に救急車で搬送された人のうち、満65歳以上の高齢者の割合は約6割に上っている。
19年4月1日現在、救急隊は全国1690 市町村に 5215 隊配備されており、前年比 36 隊(0.7%)増加している。救急隊員は6万3723人(うち女性は1395人)で同952人(1.5%)増加した。また、救急自動車(以下、救急車)の保有台数は、非常用を含め6364台で同35台(0.6%)の増加となっている。
では、救急出動件数はどうかといえば、18年中で救急車による出動件数は、660万5213件(前年比26万3066件増、4.1%増)、搬送人員は596万295人(同 22万4209人増、3.9%増)と出動件数、搬送人員共に過去最多を更新している。
前年比で救急隊が0.7%、救急隊員が1.5%、救急車が0.6%しか増加していないのに、出動件数は4.1%、搬送人員は3.9%も増加している。これは、救急活動の増加に対して、人員と設備が追いついていない状況を示している。言い換えれば、現状の救急体制以上に救急活動の要請が増加しているということだ。
救急車は1日平均1万8096件(前年は1万7376件)、4.8秒に1回(前年は5.0秒に1回)の割合で出動し、国民の21人に1人(前年は22人に1人)が搬送されたことになる。救急車の出動頻度が高まっており、救急車により搬送される人の比率が高まっていることがわかる。
この結果、現場到着所要時間(入電から現場に到着するまでに要した時間)は全国平均で8.7分(前年比0.1分増)に、病院収容所要時間(入電から医師引継ぎまでに要した時間)は全国平均で39.5分(同0.2 分増)と、若干だが年々時間が延びている。
救急隊員に広がる危機感
さて、救急車出動の理由で最も多いのは、急病429万4924件でその割合は65.0%に上る。次いで一般負傷99万7804件(15.1%)、交通事故45万9977件(7.0%)となっている。これは搬送人員でも同様で、最も多いのは急病389万1040人(65.3%)、次いで一般負傷91万2346人(15.3%)、交通事故44万1582人(7.4%)の順だ。