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片田珠美「精神科女医のたわごと」

沢尻エリカ、初公判で依存症特有の「否認」、危険なサイン…改めない限り薬物断つのは困難

文=片田珠美/精神科医
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19年12月6日、保釈された沢尻エリカ被告を乗せたと思われる車(写真:日刊スポーツ/アフロ)

 自宅で合成麻薬のMDMAやLSDを所持していたとして、麻薬取締法違反の罪に問われた女優の沢尻エリカ被告の初公判が31日、東京地裁で開かれた。沢尻被告は「間違いありません」と起訴内容を認め、最終意見陳述で「全力で更生し、反省していくことが自分にできる唯一の償いと思っています。二度と繰り返さないように、立ち直っていきたいと思っています」と述べた。

 沢尻被告が違法薬物と決別できればいいとは思うが、本当に決別できるのだろうかという疑問も抱かずにはいられない。その理由として、まず薬物使用歴の長さを挙げておきたい。検察官は、沢尻被告が19歳の頃から大麻などを使うようになったと明らかにしているので、違法薬物をすでに10年以上使用していることになる。

 また、沢尻被告は「大麻に関しては、コントロールできる、やめられると思っていた」と述べたが、これは依存症特有の「否認」と考えられる。アルコール依存症の人が、自分の意志では酒の飲み方を調節できなくなり、「コントロール障害」に陥っているのに、「酒なんかいつでもやめられる」と思い込んでいるのと同じである。

 沢尻被告も、「薬物なんかいつでもやめられる」と高をくくっていた可能性が高い。だが、実際にはなかなかやめられなかったからこそ、逮捕・起訴され、NHKの大河ドラマを降板する羽目になったのだ。だから、沢尻被告本人が認めたように「すべては自身の甘さが招いた結果」といえる。

「否認」をやめるべき

 もう1つ気になるのは、沢尻被告が「女優への復帰は考えていません」と語ったことだ。今回の事件で、大河ドラマを降板するなど多方面に迷惑をかけたので、女優復帰がそんなに簡単に許されるわけではないだろう。第一、世間の理解がなければ、女優としてはやっていけない。

 だが、沢尻容疑者が天職ともいうべき女優の仕事を奪われたら、空虚感と喪失感にさいなまれるのではないか。その結果、薬物にのめり込む危険性が一層高まるのではないか。そう危惧せずにはいられない。

 そもそも、これまで薬物に溺れたのも、快感を得るためばかりではなく、不安や孤独感、抑うつ気分や鬱屈した気持ちをなんとかしたいと思ったからだろう。そういうネガティブな感情や気持ちを薬物が改善してくれた体験を持つ人は、同じようなつらい状況に陥ると、また薬物に頼ろうとしがちだ。

 沢尻被告への求刑は懲役1年6カ月で、初犯ということもあって、執行猶予がつく可能性が高い。だから、執行猶予が明け、その後も違法薬物をやめ続けられたら、女優復帰を目指すべきだし、周囲もサポートすべきだと思う。

 そのためには、何よりも「否認」をやめることが必要だ。「自分の中では薬物をコントロールでき、いつでもやめられると思っていた」のは間違いだと認識し、「自分はコントロールできなかったから、薬物をやめられなくなったのだ」と肝に銘じなければならない。そのうえで、交友関係を見直し、更生プログラムを受けながら、「薬物をやめよう」という気持ちを持ち続けるべきである。

(文=片田珠美/精神科医)

片田珠美/精神科医

片田珠美/精神科医

広島県生まれ。精神科医。大阪大学医学部卒業。京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了。人間・環境学博士(京都大学)。フランス政府給費留学生としてパリ第8大学精神分析学部でラカン派の精神分析を学ぶ。DEA(専門研究課程修了証書)取得。パリ第8大学博士課程中退。京都大学非常勤講師(2003年度~2016年度)。精神科医として臨床に携わり、臨床経験にもとづいて、犯罪心理や心の病の構造を分析。社会問題にも目を向け、社会の根底に潜む構造的な問題を精神分析学的視点から分析。

Twitter:@tamamineko

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