
自宅で合成麻薬のMDMAやLSDを所持していたとして、麻薬取締法違反の罪に問われた女優の沢尻エリカ被告の初公判が31日、東京地裁で開かれた。沢尻被告は「間違いありません」と起訴内容を認め、最終意見陳述で「全力で更生し、反省していくことが自分にできる唯一の償いと思っています。二度と繰り返さないように、立ち直っていきたいと思っています」と述べた。
沢尻被告が違法薬物と決別できればいいとは思うが、本当に決別できるのだろうかという疑問も抱かずにはいられない。その理由として、まず薬物使用歴の長さを挙げておきたい。検察官は、沢尻被告が19歳の頃から大麻などを使うようになったと明らかにしているので、違法薬物をすでに10年以上使用していることになる。
また、沢尻被告は「大麻に関しては、コントロールできる、やめられると思っていた」と述べたが、これは依存症特有の「否認」と考えられる。アルコール依存症の人が、自分の意志では酒の飲み方を調節できなくなり、「コントロール障害」に陥っているのに、「酒なんかいつでもやめられる」と思い込んでいるのと同じである。
沢尻被告も、「薬物なんかいつでもやめられる」と高をくくっていた可能性が高い。だが、実際にはなかなかやめられなかったからこそ、逮捕・起訴され、NHKの大河ドラマを降板する羽目になったのだ。だから、沢尻被告本人が認めたように「すべては自身の甘さが招いた結果」といえる。
「否認」をやめるべき
もう1つ気になるのは、沢尻被告が「女優への復帰は考えていません」と語ったことだ。今回の事件で、大河ドラマを降板するなど多方面に迷惑をかけたので、女優復帰がそんなに簡単に許されるわけではないだろう。第一、世間の理解がなければ、女優としてはやっていけない。
だが、沢尻容疑者が天職ともいうべき女優の仕事を奪われたら、空虚感と喪失感にさいなまれるのではないか。その結果、薬物にのめり込む危険性が一層高まるのではないか。そう危惧せずにはいられない。
そもそも、これまで薬物に溺れたのも、快感を得るためばかりではなく、不安や孤独感、抑うつ気分や鬱屈した気持ちをなんとかしたいと思ったからだろう。そういうネガティブな感情や気持ちを薬物が改善してくれた体験を持つ人は、同じようなつらい状況に陥ると、また薬物に頼ろうとしがちだ。