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木下隆之「クルマ激辛定食」

メルセデス「AMGマチック」は公道を走れるレーシングカーのようだ…ドリフトモード全開で狂気的パワー

文=木下隆之/レーシングドライバー
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メルセデス「AMG A35 4マチック」

 公道走行可能な市販車なのに、まるでレーシングカーであるかのような「ドリフトモード付」モデルとして登場、世間をアッと驚かさせたのがメルセデスAMG A45 S4マチック+」である。

 1月15日付本連載記事『メルセデス、ドリフトモード付き市販車「AMG」日本導入…炸裂するパワーに感動』において紹介したが、メルセデス最小のコンパクト5ドアハッチバックでありながら、2リッターの直列4気筒ターボエンジンを搭載している。このエンジンが激烈無比で、炸裂させるパワーはついに「421ps」に達したというモンスターだ。最大トルクは「500Nm」という、2リッターとしては腰を抜かしかける数値。1リッター換算すると200psオーバー。これはもう、レーシングエンジンの世界である。

 そのパワーを、特異な4WDシステムでコントロールする。前後左右の駆動配分を自在に変えながら、時には安定感高くハイウェイを突き進み、ある時にはまた例のドリフトモード全開で、まるでダンスを踊るかのような華麗な舞を披露する。狂気でしかないパワーだ。

 だが、このドリフトモードは、安全が担保されたコースでしか試すことができない。つまり、ナンバー付きの市販車であるのに、サーキット等の競技専用スタジアムでしか意味のない機構ともいえる。公道で試すことは、道義的にも法的にも許されない。ドリフトをするには、法定速度を大幅に超えるスピードに持ち込まなければならないし、危険である。

 そもそも、そのドリフトを扱えるドライバーは限られている。プロドライバー級のドライビングスキルが求められる。プロドライバーですら、神経を集中させて挑まなければその領域には踏み込めない。それほどに、「AMG A45 S4マチック+」は雲上に漂う存在なのである。

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 そんな孤高の存在である「AMG A45 S4マチック+」は手に余るというユーザーのために、AMGは手頃なモデルを準備してくれている。それが「AMG A35 4マチック」である。

 エンジンは直列4気筒2リッターターボである。「AMG A45 S4マチック+」と排気量は変わらない。だが出力は306psに抑えられている。4WDであることも同様だが、左右の駆動力配分はこなさず、前後のトルク移動だけにとどまる。ドリフトモードも装備されない。

 外観も「AMG A45 S4マチック+」よりは大人しい。小さなスポイラーが認められるものの、ボディデザインに自然に溶け込んでいる。AMGのエンブレムを確認しないかぎり、走りのモデルだとは気がつかないに違いない。

 だが、走りの性能は際立っている。「AMG A45 S4マチック+」があまりにも過激すぎるために、「AMG A35 4マチック」では、つい気を許してドライブをしてしまった。だが、冷静に思い返してみれば、「AMG A45 S4マチック+」より大人しいだけであって、並居るライバルよりキレ味で劣っているわけではない。

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 ボディ剛性はあきらかに高く、足回りも剛性感が強い。路面の凹凸を確実に拾う。ハンドリングはキレキレである。さすがに4WDであるがゆえに、強いアンダーステアやスピンモーメントには到らないが、人たびワインディングに持ち出せば、ガソリンが空になるまで走っていたくなるほどのスポーツフィールなのである。

 先日、「AMG A45 S4マチック+」をドライブしてAMGの攻撃的な販売戦略に腰を抜かしかけた。同時に、販売戦略に対する迷いなのではないかとも疑ってしまった。だが、「AMG A35 4マチック」が控えていることで納得した。これならば、公道で楽しくAMGを楽しむことができる。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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