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『麒麟がくる』高視聴率の理由は“定説がない男”明智光秀の多種多様な人物像…細部描写が見所

文=井戸恵午/ライター
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NHK 大河ドラマ『麒麟がくる』」より

 今年のNHK大河ドラマは『麒麟がくる』である。明智光秀の生涯を描いた作品で、光秀が大河ドラマの主人公になるのは初めてだ。原作は存在せず、脚本家・池端俊策氏の完全オリジナル作品である。池端氏は、過去に大河ドラマでは『太平記』の脚本を書いており、奇しくも室町幕府の開創と崩壊を描くことになる。

 明智光秀は「諸説あり」の男である。出自からして、美濃の土岐源氏の明智氏とする説が一般的であるが、近江出身とする説をはじめとして異説が多い。その出生地に関しても、東濃地域でさえ複数存在する。その前半生については同時代的な史料が極めて少ないため、これもよくわかっていない。また、主君・織田信長を討った「本能寺の変」の原因についても、研究者のみならず多くの人々が言及しているが、いまだ定説を見ない。その理由のひとつは、明智氏が近世において大名として生き残れなかったことが大きいように思う。

 たとえば、先の『真田丸』において取り上げられた真田氏は信之の系統、すなわち松代藩主の真田家が明治まで続いた。それにより、関連する史料はもとより、幕末期の修史事業によって、その家史や史料集などが編まれている。これらが物語を構築する際の底本となったり、参考に資するものであったことは言うまでもないだろう。しかし、明智氏は滅亡してしまっているため、このような蓄積や整理が行われなかった。このことは、明智光秀という人物の把握を極めて難しいものにしている。

 よって、今回の大河ドラマ『麒麟がくる』においても、その多くの部分を脚本家の想像に拠るしかない。諸説ある中から何を選び取り、おもしろい作品としていくかという点が腕の見せどころであろう。

 先日放送された第1回については、明智光秀の出自は土岐源氏の明智氏としている点で通説的なものを採っているが、その主君たる斎藤道三についても、一代で美濃一国を得たのではなく、近年言われている二代による「国盗り」が行われた説をさりげなく選択している。最新の学説が必ずしもその妥当性を保証されているわけではないが、これを貪欲に取り込んでいく姿勢については評価したい。

いまだに真偽不明な“光秀像”

 一方で、学問的な研究とは別に、明智光秀については講談や小説によって形作られたキャラクターとしての側面が存在する。史料がないのをいいことに、と言えば口が悪いが、それは創作者の目には魅力的に映ると見えて、江戸期から現代に至るまで、さまざまな形で「明智光秀」は描かれ続けており、そのイメージが構築されてきている。今回の『麒麟がくる』においては、史料的制約とは別に、この既存イメージにどのように従い、あるいは抗うのかという点も見どころのひとつといえよう。

「明智光秀」というキャラクターが形作られるにおいて、大きく影響を及ぼすのが「逸話」である。確かに、逸話の中には実際にあったことが口碑として語り継がれているものもある。明智光秀という人物についても、多くの逸話が存在している。しかし、その多くは後世において創作されたものが少なくない。いわば、この真偽定かならざる話がその人物の行為として語られてきており、そのイメージを構築してきたといえる。

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