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三浦展「繁華街の昔を歩く」

なぜ東京大学の周囲には“なまめかしい遊び場”が密集していたのか?下谷・湯島・白山ほか

文=三浦展/カルチャースタディーズ研究所代表
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下宿は堕落の根源

 下宿人の属性は男性がほぼすべてだった。本郷神田あたりは学生が多かったが、京橋、浅草、本所、深川はサラリーマンが多かったらしい。いずれにしろ独身男性ばかりであるから、次第に風紀が乱れることも多かったらしい。

 下宿数がピークを迎えつつある頃から、下宿を問題視する論調が増えていった。いわく、「堕落の根源」「学生の堕落期間」「学生を腐敗」させる、「魔窟」「悪書生の巣窟」「魑魅の巣窟」「罪悪の養成所」といった具合である。学生たちは勉強もせず、礼儀作法をわきまえず、街に繰り出して飲食し、歓楽街で遊び、揚弓場(ようきゅうじょう。矢場<やば>ともいう。今で言うとダーツバーだが、実は女性と遊ぶ場所)、銘酒屋(めいしや。酒を並べているが実は売春する)、遊廓で女性を買い、翌朝は寝坊をし、昼寝をして過ごした。

 学生が勝手に遊んでいただけではない。下宿屋のほうも、客を集めるためにきれいな女中を置いた。その女中が、住人を誘惑したり、売春の手引きをすることもあった。下宿している者だけでなく、彼を訪問してくる客も誘惑することがあったという。

 こういう具合であるから、真に修養を積み、将来成功したいなら、下宿屋などというものは最も選ぶべきではないといわれたのである。

(文=三浦展/カルチャースタディーズ研究所代表)

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参考文献

堀江亨・松山薫・高橋幹夫著『日本の近現代における都市集住形態としての下宿屋の実証研究』第一住宅建設協会

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