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木村貴「経済で読み解く日本史」

平清盛、自由貿易を確立し国に経済的栄華…800年前の卓越したグローバル感覚

文=木村貴/経済ジャーナリスト
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 かつて日本政府は、和同開珎に始まる官製貨幣「皇朝十二銭」を相次いで発行したが、改鋳のたびに品質を落としたため使用されなくなり、経済活動に支障をきたした。清盛が宋銭を選んだのは、この教訓が頭にあったからかもしれない。海外の貨幣であれば、日本政府の改鋳によって品質が悪化する恐れはないからだ。

 1180年、清盛は突然、福原への遷都を発表し、わずか3歳の安徳天皇をはじめ、後白河法皇、高倉上皇をはじめ、多くの貴族たちがこの新都に移った。西国国家樹立の夢へと大きく近づいたのである。

 だが、源頼朝が東国の伊豆で挙兵したことや西国諸国の反乱などを受け、遷都はわずか半年で頓挫した。翌年、清盛は死去する。1183年、平氏は北国で源義仲との戦いに大敗。押し寄せる源氏の大軍を前に京を捨て、九州に下って、一門ゆかりの太宰府を当面の都とする。やがて太宰府を捨て、讃岐国(香川県)屋島に移った後、源義経軍に敗れ、壇ノ浦の海中に没する。海を基盤に国家を築こうとした人々にふさわしい最期だったといえる。

 米国と中国、日本と韓国など、今の国家は政治的な対立から互いに自由な貿易を妨げようとしている。これは自国を経済的に貧しくする自滅行為だ。自由貿易こそ国を富ませるカギだと理解していた平清盛が知ったら、さぞあきれることだろう。

(文=木村貴/経済ジャーナリスト)

<参考文献>

宮崎正勝『「海国」日本の歴史: 世界の海から見る日本』原書房

網野善彦『中世的世界とは何だろうか』朝日文庫

網野善彦『東と西の語る日本の歴史』講談社学術文庫

高木久史『通貨の日本史 – 無文銀銭、富本銭から電子マネーまで』中公新書

●木村貴(きむら・たかし)

1964年熊本県生まれ。新聞社勤務のかたわら、欧米の自由主義的な経済学や政治思想を独学。経済、政治、歴史などをテーマに個人で著作活動を行う。

twitter: @libertypressjp

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