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吉野家、超特盛&小盛導入で黒字転換達成…松屋は炎上必至の話題づくり、すき家は新商品連投

文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント
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吉野家の店舗(撮影=編集部)

 牛丼大手3社の既存店売上高が、そろって好調だ。そのなかでも、もっとも好調といってよさそうなのが、吉野家ホールディングス(HD)が展開する「吉野家」で、2019年12月まで10カ月連続で前年超えを達成した。しかも、10月が前年同月比8.2%、11月は7.3%、12月は11.3%と、大幅な増加率が続いている。

 松屋フーズHDが展開する「松屋」などの既存店売上高も、負けじと好調だ。12月まで18カ月連続で前年を上回った。増加率は10月が3.6%、11月が4.2%、12月が6.6%と、大きく伸びている。ゼンショーHDが展開する「すき家」も、12月まで5カ月連続で前年を上回った。増加率は10月が0.8%、11月が3.1%、12月が2.8%だった。

 最近の3社は、商品戦略が功を奏している。

 吉野家は昨年3月に看板商品の牛丼で新しいサイズの「超特盛」と「小盛」を導入し、それぞれヒットした。5月にはRIZAPと共同開発したコメ抜き牛丼「ライザップ牛サラダ」を発売し、こちらもヒット。8月に50万食限定で販売した「すきやき重」は高級部位の牛サーロインを使った高額商品ながらも売れに売れ、早々に完売した。

 10月には「牛すき鍋膳」を前年より前倒しするかたちで投入したほか、中華の有名シェフ、陳建一氏とコラボした「麻辣牛鍋膳」を投入。これらも好調だという。12月にはゲーム「ポケットモンスター」とのコラボ商品「ポケ盛牛ドンセット」など5品を販売したが、一部商品が人気で品切れする店舗が続出し、販売休止にせざるを得なくなったほどだ。3~12月の既存店売上高は前年同期比7.4%増と大きく伸びたが、これらの商品が大きな貢献を果たした。

 こうした状況を受け、吉野家HDの19年3~11月期連結決算は好調だった。売上高は前年同期比6.6%増の1598億円、営業損益は28億円の黒字(前年同期は5億6200万円の赤字)、最終損益は17億円の黒字(同15億円の赤字)だった。

 好調な業績を受けて同社は1月10日、20年2月期通期の業績見通しの修正を発表した。売上高は従来予想から70億円引き上げて2150億円(前期比6%増)、営業利益は26億円引き上げて36億円(同35倍)とした。最終損益は1億円の黒字(前期は60億円の赤字)で据え置いた。

松屋とすき家も新商品を続々投入

 松屋は月に2度程度のペースで期間限定商品を投入し、集客を図っている。昨年4月に「ごろごろ煮込みチキンカレー」を復活販売したほか、6月に「創業ビーフカレー」を期間限定メニューとして販売し、12月に定番メニューに加えた。10月に発売した「お肉たっぷり牛鍋膳」と、11月に発売した「豆腐キムチチゲ」、12月に発売した「ビーフシチュー定食」はいずれも好評で、原料の供給が追いつかず、一時販売休止に追い込まれたほどだ。これら商品が寄与し、4~12月の既存店売上高は前年同期比5.3%増と大きく伸びた。

 松屋フーズHDの足元の業績は好調だ。19年4~9月期連結決算は、売上高が前年同期比9.4%増の520億円、営業利益が2.1倍の31億円、純利益が93.2%増の18億円だった。

 松屋フーズHDも昨年10月31日に20年3月期通期の業績見通しの修正を発表している。売上高は従来予想から5000万円引き上げて1041億円(前期比6%増)、営業利益は14億円引き上げて55 億円(同43%増)、純利益は9億円引き上げて31億円(同41%増)とした。

 すき家も月に2度程度のペースで期間限定商品を投入することで集客を図っている。昨年5月に「シーザーレタス牛丼」を発売したほか、7月に「ニンニクの芽牛丼」、11月に「黒毛和牛すき焼き膳」、12月に「牛すき鍋定食」「四川風牛すき鍋定食」を販売した。ほかにも、個性豊かな期間限定商品を売り出している。こうした商品が寄与し、4~12月の既存店売上高は前年同期比2.7%増となった。

 ゼンショーHDも足元の業績は好調だ。19年4~9月期連結決算は、売上高が前年同期比6.7%増の3198億円、営業利益が29.5%増の133億円、純利益は52.4%増の76億円だった。

 このように各社は牛丼店がけん引し、業績が好調だ。いずれも牛丼店においての商品戦略が功を奏している。特に限定商品の成功が目立ったが、各社が限定商品に力を入れるのは、多様な顧客ニーズに対応するためだ。牛丼が好きな人でも、毎回牛丼では飽きてしまう。「たまには違ったものを食べたい」というニーズが強まっており、限定商品をこまめに投入することで、そういったニーズを取り込むことに成功している。

3社の戦略の違い

 だが、そんななかでも方向性が企業によって異なっており、興味深い。

 吉野家はかなり冒険している印象がある。前述したように牛丼の「超特盛」と「小盛」を新たに導入しヒットさせたが、新サイズの投入は28年ぶりだ。そう考えると、大胆な決断をしたと言えよう。また、RIZAPや陳建一氏、ポケモンとコラボするなど、これまでになかった取り組みを実施している。さらに、税込み860円(税率8%)とかなり高額な「すきやき重」を売り出してもいる。かなり冒険的ではないだろうか。

 対して松屋は、かなり際どい商品の打ち出しを行っている。「創業カレー」を定番化するにあたり、それまで販売していた、より安価な「オリジナルカレー」の終売を大々的に喧伝したが、「炎上商法」「実質値上げ」との指摘・批判が相次いだ。また、「お肉たっぷり牛鍋膳」「豆腐キムチチゲ」「ビーフシチュー定食」は好評で原料の供給が追いつかず一時販売休止となったが、以前にも同様の理由で商品の一時販売休止があったこともあり、「これだけ頻繁だと話題づくりのためにわざとやっているのではないか」といった冷めた見方も広がった。こうした批判があるにせよ、話題づくりは成功しており、それが集客につながったといえそうだ。

 他方、すき家は限定商品を短期サイクルで次々と投入しているが、その多くが並盛サイズで500円台と、手頃な価格になっている。吉野家や松屋よりも安価な限定商品を数多く投入している印象がある。既存の牛丼にトッピングを加えただけの商品が多く、経費をそれほどかけずに限定商品をつくっているようだ。たとえば「ニンニクの芽牛丼」は、牛丼の上にニンニクの芽を載せただけの商品だ。こうして低価格を維持することで「すき家は安い」というイメージを崩さないようにしているのだろう。

 方向性は違うにせよ、各社は限定商品の投入を中心とした商品戦略が功を奏し、業績は上向いている。今後もこうした動きや傾向が続きそうだ。
(文=佐藤昌司/店舗経営コンサルタント)

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

佐藤昌司/店舗経営コンサルタント

店舗経営コンサルタント。立教大学社会学部卒。12年間大手アパレル会社に勤務。現在は株式会社クリエイションコンサルティング代表取締役社長。企業研修講師。セミナー講師。店舗型ビジネスの専門家。集客・売上拡大・人材育成のコンサルティング業務を提供。

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