この間の人件費は発生していないわけだから、事業者にとっては、この減額による損失はない。つまり、なんのペナルティにもならない。都高教による調査結果を教えてくれた関係者は、こう指摘する。

「従事者の欠損した分の委託費が正しく減額されていないとすれば、(民間委託は)もともと無理な施策だったということになろうかと思います」

 内部資料からは、受託者の報告があとから虚偽であったことが判明するなど、そもそもこの民間委託のスキームには、都教委側が業務履行の確認・正確な状況把握すらできていないという致命的な欠陥があったことが浮き彫りになった。

公務を受託する事業者の実態

 なぜ学校図書館で、このようにずさんな運営がまかり通っていたのだろうか。

 15年当時、事業者との契約は単年度だった。だが、毎年、入札価格のみで決まっていたため、業務の質によって事業者が翌年意向の仕事を落とされるようなことはなかった。つまり、安い入札価格さえ提示できれば落札可能なのだ。学校図書館の運営業務に入ってくる民間事業の多くは、ビル管理や清掃業をメインにして手広く公務を受託している企業ばかり。図書館はもちろん、学校教育にかかわっている企業は見当たらない。公務を受託する“うまみ”を知っている業者たちだけで仕事が回っていく、利権みたいなものなのかもしれない。

 いずれにしろ、何度注意しても契約違反を繰り返す事業者に対して、都教委としても、まったく打つ手がなかったのだ。

 偽装請負と同時に発覚した、こうした不履行の実態についても、公表されていれば、事態は変わっていたのではないだろうか。現場で担当教諭と受託スタッフが打ち合わせしただけで偽装請負になってしまい、業務を遂行するスタッフの採用がうまくいかなければ、たちまち不履行を犯してしまう。そんな学校図書館の委託スキームそのものが根底から崩壊しつつある実態が広く世間に知られたはずだが、東京都がこれらの事実を隠蔽し続けたことで、学校図書館の民間委託の難しさは伝わらないまま年々、野放図に広がり続けた。

 実は、不履行は都立高校だけの問題ではない。区立の学校図書館を民間に委託した練馬区などでも、同様の不履行が大規模に起きていることがわかっている。

 いったいどうして、学校図書館がそんな無茶苦茶な状態に陥ってしまったのだろうか。次回、学校図書館の委託会社で働く人たちにスポットを当てて、その劣悪な労働条件と、雇用する委託会社の実態について詳しく見ていきたい。
(文=日向咲嗣/ジャーナリスト)

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