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JDI粉飾決算時の会長は、元三洋電機副社長だった…元幹部「経営陣から指示があった」

文=編集部
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JDI現社長の菊岡稔氏(写真:東洋経済/アフロ)

 経営再建中の液晶パネル大手ジャパンディスプレイ(JDI)が2015~16年度に粉飾決算を行っていたのは、元三洋電機副社長の本間充氏が会長兼最高経営責任者(CEO)を務めていた時期と重なる。粉飾決算は、経理担当の元幹部からの通知で明らかになった。元幹部は2014年7月~18年10月、架空の会社に業務委託費名目で金銭を振り込んだり収入印紙を換金したりする手口で約5億7800万円を着服した。JDIは18年12月、元幹部を懲戒解雇し、19年8月、警視庁に業務上横領罪で刑事告訴した。元幹部は19年11月下旬に自殺した。

 元幹部は着服とは別に過去の決算について「不適切な会計処理を行っていた」との通知をJDIに送り、「経営陣から指示があったため」と主張していた。JDIは12月2日、特別調査委員会(委員長:藤津康彦弁護士)を設置して、事実関係を調査した。

 JDIは12月24日、特別調査委員会から、過年度に在庫100億円程度を過大に資産計上し、全額取り崩していた疑義などが判明したとの指摘を受け、同社から独立した社外委員のみで構成される第三者委員会(委員長:国谷史朗弁護士)を設立。JDIが事業を開始した12年4月から19年9月までの期間で、類似する事象の有無の調査を委嘱した。調査の終了時期は未定だが、報告書を受け取り次第、速やかに内容を開示するとしている。

 1月10日付朝日新聞は「過大計上は本間氏が会長兼CEOに就いた15年6月直後に始まり、16年度まで続いたという。過大計上された疑いのある在庫は、本間氏の後任の東入来(ひがしいりき)信博氏(71)が経営トップを務めた17~18年度に減損処理されたという」と報じた。JDIは産業革新機構に「達成すべき目標(数字)を約束していた」(JDI元役員)とされている。目標をクリアするために粉飾決算が行われた可能性が浮上している。

 在庫を過大に計上すれば、その決算期の営業損益のかさ上げができるだけでなく、損失の計上を先送りすることもできる、初歩的な粉飾決算の手口である。当時の判断の可否や経営陣の指示の有無などが、第三者委員会による調査の焦点となる。

本間氏は三洋電機の「電池の顏」だった

 15年6月末に本間氏は新設された会長兼CEOに就いた。社長兼最高執行責任者(COO)には有賀修二取締役が昇格。親会社の官民ファンドの産業革新機構(現INCJ)では同年6月末、日産自動車副会長の志賀俊之氏が非常勤の会長兼CEOに就任した。

 本間氏は三洋電機時代、「電池の顔」と評された人物だ。三洋ではハイブリッド車専用の電池を製造。電池事業が三洋の経営再建の柱になったのは、本間氏の手腕によるところが大きい。三洋の海外事業のトップとして車載用電池を日米欧の自動車メーカーに売り込んだ。08年に独フォルクスワーゲン(VW)と車載用電池の共同開発にこぎ着けたことは、今でも高く評価されている。

 三洋が銀行管理になっていた時、三井住友フィナンシャルグループとゴールドマンサックスから副社長が送り込まれたが、本間氏は生え抜きで唯一、副社長として経営を担い「将来の社長候補」といわれた。銀行からは、絶大な人気を誇っていた「オグシオ」こと小椋久美子と潮田玲子が所属するバドミントン部を潰せと、強く要求されたが、女子バドミントン部部長だった本間氏は体を張って阻止。2人を08年北京五輪へ送り出した親分肌である。

 三洋はパナソニックに吸収されたが、パナソニックの津賀一宏社長とソリが合わず、13年に退社した。本間氏に手を差し伸べたのが、経済産業省だった。13年、水面下で“日の丸電池”統合構想が進められていた。経産省が所管する産業革新機構主導で、ソニーの電池子会社と日産自動車、NECの合弁会社を経営統合、新会社に産業革新機構が出資し、社長に本間氏を据えるというシナリオが進行していた。ところがソニーが「自前で電池事業をやる」と言い出して離脱したため、この構想は白紙に戻った。

 産業革新機構は、“日の丸液晶”のJDIのトップに据えることで本間氏に「借り」を返したことになる。経営者としての力量を、きちんと評価することなく、本間氏をJDIに呼び寄せた。電池から液晶への畑違いの転身には無理があった。

 JDIにおける本間氏の使命は、「シャープを手際よく解体して、液晶事業をJDIにくっつけること」(関係者)だった。産業革新機構の志賀CEOと連携して、シャープの解体を実現できれば大成功だったが、シャープは台湾の鴻海精密工業に奪われてしまった。本間氏が託されたミッション(使命)は失敗に終わった。JDIはその後も赤字を垂れ流し続け、19年9月末時点で1000億円超の債務超過に陥った。

いちごアセットが資金スポンサーに浮上

 JDIの再建計画は迷走を続けた。台中3社の企業連合、Suwaインベストメントホールディングスと19年4月に800億円の支援契約を結んだが、台湾2社が6月に離脱。JDIとSuwaは8月、残った中国ファンドを軸に契約を結び直したが、Suwaが9月末に離脱をした。JDIは20年1月8日、Suwaとの出資契約を解除した。

 2000年1月末、JDIは代替案として、独立系投資顧問のいちごアセットマネジメントから最大1008億円の出資を受け入れる方向で最終契約を結んだ。いちごは、まず504億円で優先株を引き受け、議決権ベースで44%超の株式を握り、INCJ(旧産業革新機構)に代わって筆頭株主となる。いちごのスコット・キャロン氏がJDIの代表権を持つ会長に就任する。現会長の橋本孝久氏は代表権付き副会長に降格。残りの504億円はJDIと引き続き協議し、4月1日から2023年3月末に必要に応じ議決権がない優先株を発行して調達する。いちごの出資比率は段階的に増え、最大で70%超になる可能性がある。

 JDIは3月25日に、いちごの出資の受け入れを決める臨時株主総会を開く。同26日に最初の資金を受け入れる計画だ。いちごから504億円の資金が振り込まれ、INCJが既存の融資(1020億円分)を議決権のない優先株に切り替える追加支援と合わせると、3月末時点で債務超過(19年9月末で1000億円超)の解消のメドが立ち、東証1部から2部へ降格することを回避できるとしている。

 いちごアセットの経営トップを務めるスコット・キャロン氏は、米プリンストン大学卒業後、日本開発銀行(現日本政策投資銀行)を経てモルガン・スタンレー証券(現モルガン・スタンレーMUFG証券)の株式統括本部長を務めた。06年5月、いちごアセットを設立した。「いちご」は、千利休が説いた茶人の心構え「一期一会」に由来するという。

 経産省・産業革新機構が失敗したJDIを再建させることができれば、いちごアセットの評価は一気に高まる。

 米アップルとは、19年7月から操業を停止している白山工場(石川県)の一部設備を2億ドル(約216億円)で買い取ってもらう交渉をしている。白山工場はシャープに売る話を持ち込んでいるが、シャープは慎重だ。「アップルからイチゴに、うまく乗り換えられるのか」(エレクトロニクス担当のアナリスト)との声が上がる。

 JDIのスポンサー探しは常に途中で頓挫している。菊岡稔社長は1月31日の記者会見で「懸念事項がほぼ解消する見込みが立った。いちごの力を借りながら事業再生を果たしたい」と述べた。菊岡社長の期待先行の発言を市場は信用していない。

 2月13日に予定していた19年4~12月期決算の発表を延期した。第三者委員会による粉飾決算の調査がいつ完了するか不透明なためだ。いちごとの最終契約で経営破綻のリスクがいったんは遠のいた。だが、経営再建、事業再生はこれからだ。

(文=編集部)

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