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たかぎこういち「“イケてる大先輩”が一刀両断」

中国政府、「救済せず」に転換…政府系企業のデフォルト続出、バブル崩壊で日本企業に影響も

文=たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表、東京モード学園講師
中国政府、「救済せず」に転換…政府系企業のデフォルト続出、バブル崩壊で日本企業に影響もの画像1
新型ウイルス肺炎が世界に拡大 感染が深刻な中国(写真:AP/アフロ)

1.中国企業家フォーラムでのジャック・マー氏の発言真意

 昨年12月21日、中国企業家フォーラムでのアリババ創業者ジャック・マー氏の発言が波紋を呼んでいる。

「1日5人もの友人から、金を貸してくれと電話がある」

「資金繰りのために土地を売りたいと1週間に10人から連絡がある」

 マー氏と直接電話で話せる友人となると、中国国内でもトップ層であり、かつ成功している事業家であるはずだ。そんな人々でさえ、キャッシュフローに問題が出ているのであろうか。この発言の真意がなんであるかは不明だが、ひとつの問題提起と理解するのは自然な解釈ではないだろうか。

2.地方政府系投資会社の破綻

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『アパレルは死んだのか』(たかぎこういち/総合法令出版)

 中国政府が発表する経済指標の信憑性には、国際的にも常に疑問符がついている。中国の著名なマクロ経済学者であり、人民大学国際通貨研究所副所長で人民大学教授でもある向松祚氏は2019年1月20日、中国上海市で行われた経済フォーラムで、同年の「ミンスキー・モーメント(すべての資産価格が急落する時)」到来に警戒せよと発言している。また、GDPの成長率についても疑問を投げかけており、実質マイナス成長の可能性も否定していない。

 実際に昨年、地方政府系投資会社、融資平台(LGFV)の債務膨張による経営問題が表面化している。地方政府が出資・管理する投資会社として、資金を金融機関から借り入れ、理財商品として個人向け金融商品を販売して投資資金を得る。その資金をインフラ投資などに積極的に進めてきたが、政府系投資会社ということで投資家の間では信用が高かった。

 しかし、昨年2月、中国の青海省投資集団(QPIG)がドル建て債の支払いを怠り、不履行問題が表面化。12月6日には内モンゴル自治省フフホト市政府のLGFVが元利払いを停止した。人民日報系の証券紙「証券時報」で人民銀行金融政策委員の馬駿氏は、実態がわからないLGFVについて、「地方政府は多額の隠れ債務を持つ。いくつかのLGFVが債務不履行を起こせば、リスクは連鎖しかねない」と指摘している。

 もちろん対応がとられるであろうが、これまで中国政府は政府系金融機関の債務不履行が起こる前に対策を打ってきたため、問題が表面化しにくかった。しかし、ここにきてその方針が転換されつつあると理解しなくてはいけない。

3.中央政府の救済政策転換

 中国には銀行が約1,400行も乱立している。中国全土に支店がある4大国有銀行など上位20行で、全銀行の総資産の60%以上を占めている。つまり銀行数で90%を占める地方銀行は中小規模であり、経営が安定しにくい。

 取り付け騒ぎは全国で散発している。昨年8月14日付「アジア・タイムズ」によると、山東省の煙台を拠点とする恒豊(ヘンファン)銀行は経営危機に瀕していたが、山東省政府が43億ドルを資金援助してデフォルトを回避させるという。恒豊銀行の総資産は18兆円といわれ、このクラスの金融機関にも中央政府は助けの手を伸ばさずに、地方政府が財源不明の多額の資金援助を実施した。この弱者同士の救済は問題解決につながるのであろうか。ちなみに日本の地方銀行2位の千葉銀行の総資産は約14兆円となっており、恒豊銀行の問題の大きさがうかがえる。

 こうした動きは金融機関だけにとどまらない。昨年11月22日、天津市の関連企業である天津物産集団がドル建てで12億5,000万ドル(約1,360憶円)相当の社債について、投資家に最大64%の損失を受け入れるか、または表面利率を大幅に引き下げた上で支払いの遅延を認めるように提案した。中国企業のドル建て債券では、過去20年間で最大級のデフォルトである。公有企業であり、米フォーチュン誌がグルーバル企業を対象として集計した収益ランキング「Fortune Global 500」で132位にランクインしたことがある天津物産集団でも、中国政府は支援をしなかったのだ。ちなみに伊藤忠商事は鉄鉱石販売の合弁子会社を、天津物産集団と設立している。

4.まとめ

 1990年代の日本のバブル崩壊を経験した筆者と同じ年齢層には“いつか来た道”と重なるようにも映る。共産党一党支配による強みと弱みは、政治体制の違いだけでは説明できないかもしれない。日本は90年代、銀行の不良債権額は発表されるたびに増加し、企業の2次破綻、3次破綻へとつながった。ファッション業界も深くかかわる2020年の中国経済の動きに注視したい。 

(文=たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表、東京モード学園講師)

たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表/東京モード学園講師

たかぎこういち/タカギ&アソシエイツ代表/東京モード学園講師

カギ&アソシエイツ 代表/スタイルアドバイザー/コンサルタント(ファッション視点からの市場創造)/東京モード学園ファッションビジネス学科講師

1952年、大阪生まれ。奈良県立大学中退。大阪で服飾雑貨卸業を起業。22歳で単身渡欧後法人化代表取締役就任、1997年香港に渡り1998年、現フォリフォリジャパングループとの合併会社取締役に就任。オロビアンコ、マンハッタンポーテージ、リモワ、アニヤ・ハインドマーチなど海外ファッションブランドをプロデュースし、日本市場の成功に導く。また、第1回東京ガールズコレクションに参画。米国の有名ファッション展示会「d&a」の日本窓口なども務めた。時代に沿ったブランディング、MD手法には定評がある。2013年にファッションビジネスのコンサルティング会社「タカギ&アソシエイツ」を設立。著書に『オロビアンコの奇跡』『超入門 日・英・中 接客会話攻略ハンドブック(共著)』(共に繊研新聞社)、『一流に見える服装術』(日本実業出版社)、『アパレルは死んだのか』(総合法令出版)『アパレル業界のしくみとビジネスがしっかりわかる教科書』(技術評論社)などがある。
コンサルタントのタカギ&アソシエイツ

Instagram:@kohichi.takagi

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