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黒田尚子「『足るを知る』のマネー学」

高齢者の医療費・介護費、「3割負担」拡大…恐ろしく速いペースで負担増の法改正

文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー
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 報道によると、厚生労働省は対象者拡大について、介護サービスの利用控えにつながる恐れがあるとして、今のところは見送る方向で調整中のようだ。だが、自己負担の上限額(月4万4400円)を年収に応じて引き上げる案やケアプランの有料化など、このほかにも検討されている負担増の改正案は多々ある。いずれ、世代を問わず、介護も医療も自己負担は「3割」となるかもしれない。

負担増の傾向は変わらず、スピードは加速する

 さて、長々と医療保険と介護保険の概要や改正をご紹介してきたが、ここで注目していただきたいのは、改正の頻度やスパンの短さである。現在の日本の医療保険システムから考えて、国民の社会保障の負担は増えることは確実で、その点については多くの人が理解されていることと思う(頭でわかっていても、納得できるかはまた別問題だが)。

 しかし、本当に恐ろしいのは、改正の頻度が増え、そのスピードが加速していることである。ちなみに、医療保険について、今回、改革案に盛り込まれた内容は、75歳以上の後期高齢者の自己負担割合の引き上げだが、2017年8月・2018年8月には、2段階で70歳以上の高額療養費制度の改正が行われている。詳しくは、本連載の「高齢者の医療費自己負担がこっそり上昇…突然、月4万から17万円に増の例も」(2019年9月23日付)をご参考いただきたい。

 高額療養費制度については、それ以前の2015年1月、70歳未満の改正も実施されており、所得区分が3区分から5区分に細分化。高所得世帯の負担が大きく引き上げられている。介護保険においても、介護保険料の負担開始年齢を現行の40歳から、それ以下の若年層に引き下げる案も以前から浮上している。時期尚早といわれてはいるものの、いずれ具体化する可能性はゼロではない。

医療・介護の負担増に備えて、これからすべき3つの対策

 今は、まさに“ゆで蛙”状態。気づかないうちにじわじわと負担増が拡大するこれらの状況を踏まえ、私たちはどうすべきか? 対応策を3つ提案したい。

 第一に、本気で「予防」に取り組むことである。病気や要介護状態にならないよう、生活習慣に留意し、規則正しい生活を心掛ける。かかりつけ医やかかりつけ薬局を持ち、自分のカラダの不調に耳を傾ける。定期的に適切な検診を受けるなど、できることは山ほどある。“本気で”としているのは、ほとんどの人が、重要性を実感していないからだ。実行しなければ、自分たちの家計が苦しくなるというリアルな現実をもっと知るべきである。

 万が一に備えて民間保険にたくさん加入して多額の保険料を支払い、不健康な生活を送るよりは、保険料の半分でも健康維持に費やしたほうが合理的だろう。

 第二に、病気や要介護状態になった場合に使える社会的資源や人的資源を洗い出してみることである。どんなに健康に留意していても、病気になるときはなる。その際に備えて、どのような公的制度が利用できるのか、預貯金や民間保険でどれくらいカバーできるのか把握しておくことが大切だ。

 ただし、一般的に社会保障制度や資産運用などに関するリテラシーは高いとはいえない。病気になってから「まったく知らなかった。もっと早く気づいていれば」というケースがほとんどである。とにかく、最新の情報を握る相談窓口を知っておくだけでも良い。

 第三に、医療や介護に対する自分や家族の優先順位をイメージしておくことである。最近、花粉症や湿布、漢方薬など軽症者向けの医薬品を医療保険の対象外とする議論が出ている。今後、医療保険でカバーできるのは、本当に必要最低限の部分のみ。影響が小さければ対象外となるかもしれない。花粉症に悩む人にとっては大問題だが、そこは諦めてもらうしかない、となるわけだ。

 そこで、もしこのような制度に移行した場合、自分や家族が、どのような医療・介護をどこまで受けたいか優先順位を考えておいたほうが良い。そして、ある程度の自己負担が増えても、手厚い医療・介護を受けたいのであれば、自助努力として、ちゃんと備えておくべきなのだ。

 おそらくこれからの医療・介護は、何を優先し、何を諦めるかを考えねばならない時代になる。しかも、改正のスピードが加速していることを考えると、これらの対策は待ったなしの急務となる可能性が高い。

(文=黒田尚子/ファイナンシャルプランナー)

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