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熊谷修「間違いだらけの健康づくり」

高齢者、肉食と脂っこい食事で老化抑制…4年間の大規模調査で実証・判明

文=熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事
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血清アルブミンが増加

 地域は秋田県大仙市N地域である。東北地方は高血圧と脳卒中に苦しんだ長い歴史がある。これまでの経緯もあり健康づくり活動には誠実に向き合う方々が多い。地域一丸となったシニアの老化を遅らせるための食生活改善活動は1996年から始まり4年間にわたり続けられた。「肉を食べよう! 脂っこいおかずを食べよう! キャンペーン」の始まりである。生活習慣病対策と真逆の活動はぶれることなく、小生ら、自治体の保健スタッフ、そして地域ボランティアとともに活動は続けられた。

 このキャンペーンでは、驚くほどの効果があらわれた。図1は、肉類と油脂類の摂取頻度(2日に1回以上食べる人の割合)の変化を、介入活動前(1992~1996年)と活動後(1996~2000年)、それぞれ4年間で比較したものである。

高齢者、肉食と脂っこい食事で老化抑制…4年間の大規模調査で実証・判明の画像2

高齢者、肉食と脂っこい食事で老化抑制…4年間の大規模調査で実証・判明の画像3

 活動前の4年間の肉類と油脂類の摂取頻度は減少している。これは老化によるものである。シニア世代は年齢に身を任せていると、老化に伴い食事全体が萎縮してゆく様子がわかる。これに対して活動後は、肉類と油脂類の摂取頻度が明らかに増加している。

 国民栄養調査によると、日本全体は活動後の1996年から2000年の4年間は肉類や油脂類の摂取量は一定で推移している。活動期間に認められた両食品群の加齢老化に伴う摂取頻度の増加は、日本全体の動き(時代効果、その時代の方向性)とは異なっているため活動の効果と解釈することができる。

高齢者、肉食と脂っこい食事で老化抑制…4年間の大規模調査で実証・判明の画像4

 図2は、同じ期間の血清アルブミンの変化である。活動前の4年間は、血清アルブミンは有意に低下している。これは老化に伴い体の栄養状態が低下している様子である。老化とは栄養失調になっていく変化とたとえられる所以である。

 一方、活動後は一転して増加している。活動後の4年間に血清アルブミンが増加に転じ栄養状態が改善したことは、老化の遅れを意味している。“肉を食べ脂っこいおかずを食べる”ことは、日本の一般的なシニアが取り入れられる食事習慣であり、老化を遅らせるのに有効なことを示している。有料老人ホームの研究結果の再現である。肉や油脂はシニアのための推奨食品なのである。

 この研究成果は、その後、介護保険の施策となる介護予防事業(栄養改善活動)の基盤を成すことになる。「年をとると肉や脂っこいものは食べられなくなる」という言葉は、保健医療の技術者のなかで言い続けられている言葉である。何をか言わんや……である。

(文=熊谷修/博士(学術)、一般社団法人全国食支援活動協力会理事)

(東京都老人総合研究所,特別プロジェクト研究「中年からの老化予防総合的長期追跡研究.1991-2000年」より紹介.小生は本介入研究,運営リーダー)。

※掲載した図の引用には許可が必要です。

参照文献:

Kumagai S, et al. An intervention study to improve the nutritional status of functionally competent community living senior citizens. Geriatr Gerontol Inter. 2004; 3: s21-s26.

熊谷修, 低栄養予防ハンドブック, 地域ケア政策ネットワーク, 東京,2004.

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