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なぜ世帯年収500万未満の“貧困専業主婦”の方が幸福度は高いのか?

文=藤野ゆり/清談社
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「大阪の若いフリーターを調査した『排除される若者たち フリーターと不平等の再生産』(解放出版社)のなかで内田龍史さんが10代、20代の女性フリーターにインタビューしているのですが、そこからわかるのは彼女たちの『専業主婦志向』です。19名中7名は将来的に専業主婦になることを希望、結婚後も仕事を続けたいという人は3名で、正社員志向はわずか1名でした。もうひとつの特徴は早婚傾向で『仕事がないよりも結婚していないほうが焦る』『まわりも専業主婦志望』など、非常に狭い世界の限定された視野でしか将来を判断できていないことがわかります」(同)

 楽観的ともいえる若年層の専業主婦願望は、いったいどこから生まれるのか。

「彼女たちは、中卒や高校中退の学歴が将来不利になることを親や教師から聞かされながらも、自らの意思でドロップアウトしていく。内田さんは、『その背景には福祉政策によって貧困層にもある程度の生活水準、豊かさが享受されていることが条件となっているのではないだろうか』と述べています」(同)

 ごく限定的な視野で物事を判断した結果、現代の福祉制度があれば「貧しくても働かなくたって、なんとか生きていけるだろう」と楽観的に考え、貧困専業主婦を選択する女性も少なからず存在することがわかる。

貧困専業主婦の「幸せ度」が高い不思議

 とはいえ、「働かない」という選択をするのであれば、年収が高い男性と結婚する以外に貧しさを回避する方法はほとんどない。前述の『貧困専業主婦』では、貧困専業主婦の6人に1人は「子供が軽い持病を持っている」、または「重病・難病・障害」を抱えている、などの健康格差が広がっていることや、必要な食料を満足に買えないなどの食格差、そして将来的には教育格差が生まれることを指摘している。

 貧しさからくるデメリットは、列挙すればキリがないだろう。それでも、なぜ貧困専業主婦であり続けるのか。その背景に「貧困専業主婦は幸せである」という、ひとつの仮説がある。

「『貧困専業主婦』には、貧困専業主婦の3人に1人はとても『幸せ』と感じているとの調査が紹介されています。これはあくまでも本人申告の(主観的な)調査なのですが、働いている女性より専業主婦のほうが幸福度が高いのはよく知られた話で、内閣府の調査でも、現在の生活の満足度は一貫して働く女性より専業主婦のほうが高いことがわかっています。

 より具体的には、世帯年収500万円未満の低収入世帯の専業主婦の3人に1人(35.8%)が『高幸福度』で、「中幸福度」を合わせると、その合計はほぼ9割に達します。つまり、貧困でも専業主婦は『幸せ』なのです」(同)

 貧しくても家にいて、自分の時間が確保されているほうが幸せと感じている女性たち。女性の社会進出が声高に主張される一方で、こうした女性たちの存在も決して見逃してはいけないだろう。

(文=藤野ゆり/清談社)

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