ビジネスパーソン向け人気連載|ビジネスジャーナル/Business Journal
また、パーティーに復帰すれば、新メンバーの僧侶・クウカイ(前原瑞樹)が「旦那さんえらいっすね」「子育てやってくれるんでしょ、代わりに」「よくやりますよね、俺なら勘弁だわ」「子育てってぶっちゃけ女の仕事じゃないですか」と軽く言い、戦士のポコ(片山友希)は「今までメイさんに子育て押し付けてきて、人生奪ってきたんだから」「今度は旦那の人生奪ってやればいいんだよ」と言う。そのたびにゲーム風に数字でダメージが表示されるのだが、職場復帰した女性が言われて嫌な言葉のオンパレードである。
現代日本を辛辣に風刺したドラマに
不自然な展開も多く、世界を救った魔法使いなら、もっと良い暮らしをしているはずだし、世界の危機なんだから保育所をめぐる法律もとっとと改正しろよと思ってしまうのだが、国王は保育所の法律を変えずに、裏から手を回して会社で働く夫をクビにしてしまう。
この展開もメチャクチャで、だったらベビーシッターを雇える環境を与えるほうが後で遺恨も残らないのでは? と思ってしまう。さすがにつくり手も気がついているのか、保育所の職員が「あなたなら陛下に特例をお願いすればすぐにでも預けられるんじゃないですか?」と言うのだが、「困ってるのは私だけじゃないんで」と言ってメイが拒否するのも、世界の危機に対して何を言ってるんだ? と思ってしまう。
そもそも「魔法が存在する世界で保育士がいないってどういうこと?」と思うのだが、おそらく、つくり手には物語上の辻褄を無視してでも訴えたいことがあるのだろう。それは、現代日本における子育て制度の不備に対する異議申し立てであり、そのしわ寄せがすべて母親に押し寄せる理不尽さについてだ。
この世界がメチャクチャなのは現代日本の暗喩だからで、それをファンタジーRPGという世界設定で展開するからこそ、辛辣に響く社会風刺劇となっているのだ。
(文=成馬零一/ライター、ドラマ評論家)