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木下隆之「クルマ激辛定食」

トヨタ、超高級&巨大な「グランエース」発売の真の狙い…五輪で世界の富裕層の送迎に使用か

文=木下隆之/レーシングドライバー
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トヨタ、超高級&巨大な「グランエース」発売の真の狙い…五輪で世界の富裕層の送迎に使用かの画像1
トヨタ自動車「グランエース」

 トヨタ自動車が発売した「グランエース」は、新しいジャンルを開拓する可能性を秘めている。

 今、日本で展開している高級ミニバンのなかでは、トヨタ「アルファード/ヴェルファイア」のひとり勝ちだ。グランエースは、そのアルファードをボディサイズで大きく凌ぐ。

 全長も全幅も圧倒的に大きい。全高もそびえるように高い。威圧感があるほど巨大だ。その威風堂々が目の前に現れると陽の光が遮られ、あたりがにわかに暗くなったのではないかと思えるほど巨大に思えた。

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 それもそのはず、グランエースのベースになったのは、商用車として世界的アイドルである「ハイエース」なのだ。命名されたグランエースの語源は、おそらく「グランドハイエース」だろう。特にガテン系御用達の機材車であり移動車であるハイエースに、アルファードのエッセンスを注入、これでもかと言わんばかりに豪華にしたというわけだ。

 ミニバンが高級ジャンルと認識されるようになって久しい。「センチュリー」や「レクサスLS」といった高級セダンが、大企業の役員や芸能人がくつろぐための移動車の定番であった時代は過ぎ去ろうとしている。今、その座を奪いつつあるのはフルサイズミニバンである。

 新幹線の特別席「グランクラス」級のセパレートシートのくつろぎに加え、荷室を活用することもできる。車内で着替えることも可能な広さだ。簡易的な控え室にもなるのだから、セダンからVIP御用達のお株を奪うのも道理なのだ。

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 そしてこのグランエースの最大の狙いは、今年開催される「東京オリンピック・パラリンピック」にある。国を挙げての総力戦となるこのイベントの成功に邁進するトヨタは、オフィシャルパートナーの立場もあり、手を抜けない。そのための最大級高級ミニバンの開発なのである。

 車両コンセプトを記した資料には、平易な言葉が並ぶ。
「圧倒的な広さ」
「上質な室内」
「車両安定性」
「快適な乗り心地」
「先進の安全性」
「コネクティッド機能」

 だが本音をストレートに言葉にするならば、「東京オリンピックを観戦にやってくる世界の富裕層のもてなし」であろう。

「オリンピックに間に合わせろ」

 役員からこんな号令がかかったのだろうと想像する。アルファードより全長で約400mmも長く、全幅で約150mmもワイドだ。そんなボディの中に、アルファード級の高級シートが組み込まれている。

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 それによって、3列シート仕様の3列目に座っても、アルファードの2列目と同等の快適性が味わえる。アルファードですら3列目は“我慢の席”であることを考えれば、VIPの大量送迎が可能となるのだ。

 さらには、アルファードではスペース的に無理があった4列仕様もある。さすがに4列目でVIPをエスコートするのは憚れるが、付人用としては十分に広い。折りたたんでしまえば、はるばる来日した富裕層のスーツケースも余裕で積み込める。

 1月31日現在、受注は好調のようで、すでに約1000台のオーダーを抱えているという。そのうちの7割は法人だというから、関東近郊のハイヤーや企業がこぞって注文書に印を押しているのだろう。

 今夏のオリンピックの時には、夥しい数のグランエースが羽田空港と都心を往復することになる。
(文=木下隆之/レーシングドライバー)

●木下隆之
プロレーシングドライバー、レーシングチームプリンシパル、クリエイティブディレクター、文筆業、自動車評論家、日本カーオブザイヤー選考委員、日本ボートオブザイヤー選考委員、日本自動車ジャーナリスト協会会員 「木下隆之のクルマ三昧」「木下隆之の試乗スケッチ」(いずれも産経新聞社)、「木下隆之のクルマ・スキ・トモニ」(TOYOTA GAZOO RACING)、「木下隆之のR’s百景」「木下隆之のハビタブルゾーン」(いずれも交通タイムス社)、「木下隆之の人生いつでもREDZONE」(ネコ・パブリッシング)など連載を多数抱える。

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