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米山秀隆「不動産の真実」

相続対策としての賃貸住宅取得に逆風…賃貸が過剰供給、“相続で過度に有利”是正の機運

文=米山秀隆/住宅・土地アナリスト
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 過去にも過度な歪みが生じた結果、封じられた相続対策はいくつもある。例えば、生命保険や年金を活用した相続税対策(終身保険と相続税法26条を活用したプランなど)は、税制改正により今はできなくなっている。こうした結果として、貸家建設・取得による資産圧縮がもてはやされた面もあるが、現在においては、貸家建設・取得が相続対策として過度に有利になる仕組みを改める必要性が増している。それは、住宅市場の歪みをもたらす問題につながるが、国税当局にとっての深刻な問題は、過度な節税対策の横行が、税負担の公平性を脅かすということである。

 そこで近年は、これを是正しようという動きが出ていた。まず、賃貸物件建設に関しては、小規模宅地の特例については一昨年春、相続開始前3年以内に新たに賃貸業を始めた場合、特例が使えなくなる法改正があった。相続直前のあからさまな相続対策に歯止めをかけようとするものである。

 また、賃貸物件取得に関しては、タワーマンション投資のメリットが減殺された。タワーマンションについては、一頃、高層階の部屋を購入して相続税を節税する方法がもてはやされた。タワーマンションの相続税評価は、高層階でも低層階でも同じになる点に着目し、時価が高い高層階を購入することによって相続税評価額をより圧縮するというものだった。これについては、国税庁が評価の見直しを行い、やはり一昨年春から、相続税評価額が、高層階がやや割高に低層階がやや割安にされることになった。

 しかし、これはタワーマンション高層階が他の賃貸物件取得に比べ有利になる点を手直ししたものにすぎず、賃貸物件一般を取得した場合の資産圧縮幅にメスを入れるものではなかった。

相続税評価をめぐる東京地裁判決

 これに対し、今後、相続対策としての賃貸物件取得に影響を与えるものとして注目されているのが、路線価に基づく相続財産の評価は不適切とした昨年8月の東京地裁判決である。

 この裁判は、2012年6月に94歳で亡くなった男性が購入していたマンション2棟(杉並区、川崎市)の評価額をめぐり、相続人(3人)と国税側が争ったものである。2棟の購入額は13億8700万円で、購入から2年半~3年半で男性が死亡し、相続が発生した。相続人は、路線価に基づき2棟を3億3000万円と評価し、銀行からの借り入れ額を差し引き、相続税額ゼロで申告した。しかし、国税側の鑑定では2棟の評価額は12億7300万円と路線価とは大きくかけ離れていたため、路線価による評価は適当ではないとし、3億円の追徴課税処分を行った。これに対し、相続人は取り消しを求めていた。

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