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神戸教員間いじめ、市教委担当職員が自殺…調査進まぬ東須磨小と市幹部の間で板挟みか

文=編集部
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神戸市教育委員会のホームページ

 あってはならないことが起きてしまった。神戸市東須磨小学校の教員間暴行・暴言問題で対応にあたっていた同市教育委員会総務課の男性職員が9日、自ら命を絶った。報道によると、一連のトラブルをめぐって市教委には市内外から多くの批判が寄せられていたという。しかし、男性職員は今回のトラブルを起こしたわけでもなく、教育行政の責任者だったわけでもなかった。

教員間いじめ問題で超過勤務か

 9日付の毎日新聞インターネット版は『神戸市教委係長が自殺 教諭いじめ問題で会議運営などを担当 超過勤務も』と題して、次のように報道した。

「9日午前6時15分ごろ、兵庫県芦屋市陽光町の橋の上から男性が飛び降りるのを、県警芦屋署員が発見した。男性は全身を強く打ち、搬送先の病院で死亡が確認された。自殺とみられる。署と神戸市教育委員会によると、亡くなったのは市教委事務局総務部総務課の担当係長(39)=芦屋市=で、2019年10月に発覚した神戸市立東須磨小の教諭いじめ問題に対応していた」

 同報道によると、妻が男性の置手紙を発見し、110番通報を受けた県警が捜索していた。男性は同市教委総務課の調整担当係長で、教育委員会の会議の運営、教育委員との連絡や調整に関わっていた。19年10月に東須磨小の教諭いじめ問題が発覚後、超過勤務が増え、午前0時ごろまで勤務した日もあったという。

 神戸新聞NEXT(インターネット版)は10日、同日、開かれた神戸市教育委員会会議で長田淳教育長が「特に(神戸市立東須磨小学校の教員による)ハラスメント事案の発生後、事務局の職員には多大なる苦労をかけてきた。労働安全衛生やメンタルヘルスに気を配ってきたつもりだったが、十分徹底できていなかった」と謝罪したことを伝えた。男性の残業時間は、10月は98時間、11月は69時間30分、12月は43時間30分、今年1月は54時間だったという。

 世間に衝撃を与えた事件ということもあり、男性の仕事が困難で厳しいものであったことは想像に難しくない。ただ、どれほどの量の仕事であっても日々できる範囲でこなしていけばいつかは終わるはずだ。にもかかわらず、「超過勤務が必要だった」ということは「納期に追われていた」のだろうか。

調査報告書は年度内に完成する予定だった

 ヒントは昨年12月20日、神戸新聞NEXTが公開した記事『東須磨小問題 調査委の報告書公表「年度内に」』にあった。

「神戸市立東須磨小学校(同市須磨区)の教員間暴行・暴言問題で、市教育委員会が設置した外部調査委員会は20日、市教委が被害内容に関する資料の半分以上を提供し忘れていたことを受け、追加の資料で実際に被害があったかどうかを調べるのは約150項目に上ることを明らかにした。調査委は、報告書公表が当初予定の年内から『年度内が目標になる』との見通しを示した」

 調査委は昨年11月下旬まで、過去3年間に同小で勤務した教員約60人から聞き取りを実施。市教委の資料に基づき、160項目について事実関係や背景を調査してきた。だが報告書のとりまとめに入った12月中旬、市教委が資料ファイル19点のうち10点を調査委に提供していなかったことが発覚し、同日の公表延期の会見になった。

 提出されなかった「追加の資料」は被害教員の手紙や病状が記載された書類、メッセージアプリでのやりとりなど16種類だったという。つまり必要な資料の提出が遅れたので、今回の問題の終息の肝である「調査報告書」の作成スケジュールが押していたというのだ。

調査委と同じタイミングで動き始めた県警

 実はこうした調査委の動きと連動していたかのように兵庫県警の捜査も大きく進展していた。県警須磨署は昨年11月18日、暴行容疑で加害教員4人の任意聴取に踏み切った。被害教員の被害届が受理されたのが10月11日。任意聴取までの間、県警には「なぜ逮捕しないのか」「警察は何をやっているのか」との苦情が殺到していた。ちなみに現在まで加害教員4人は逮捕されていない。県警の捜査関係者は、この理由を「証拠隠滅、逃亡の恐れがないためだ」と説明する。

 同市内中学校の教員は話す。

「まるで大きなシナリオでもあるような県警と市教委の動きでした。スピード感をもって業務にあたることは必要ですが、誰かがあらかじめゴールと決着の絵図を描いたうえで、何が出てくるかわからない調査を行うことが適正だったのでしょうか。

 市幹部は『県警が加害教員4人を暴行容疑で送検し、市は調査委の報告書と県警の捜査結果を踏まえて迅速に4人を解雇する』というシナリオで幕引きを図ろうとしていたようです。ですが、もう4人の起訴や解雇で済む単純な話ではなくなっています。校長の人事権を認めた『神戸方式』を含め神戸市教育界の構造的な問題です。このようなことが起きないように現場の人員を確保し、労務管理を徹底して作業を行う必要があります」

資料はなぜ提出できなかったのか

 資料が提出できなかった理由を同市教育委員会事務局総務課の担当者は次のように話す。

「重複していた資料があって担当者が勘違いをして、提出しないでよいと考えていたことが原因です。『隠蔽していたのか』との問い合わせが多数ありますが、事実ではありません。また一部報道で担当者が『提出を忘れていた』という記載もありましたが、それも事実ではありません」

 全国紙社会部記者は市教委の説明に関して語る。

「市教委の担当レベルは調査委に早々に提出したかったようです。一方で、市内の教員からは『そもそも東須磨小の関係者が市教委に必要な書類を提出するのが遅かった』という指摘もあります。その結果、全体の進行表に狂いが生じ、事務方にしわ寄せが発生して混乱したのではないでしょうか。今回亡くなった男性は、シナリオ通りの進行を求める市幹部の矢のような催促を受け、進まない現場作業の板挟みになっていた可能性が高いです。

 今でも市内の現場を取材していて驚くのは、この状況下になってなお、世間や有識者の批判に対して『きれいごとを言ってんじゃねぇ』などと反発している教員が複数いることです。一朝一夕に解決できる問題ではないと感じています」

 亡くなった男性職員はこれでは2次災害の犠牲者だ。拙速に幕引きを図るのではなく、神戸市民や被害者が納得する調査と捜査の結果が待たれている。

BusinessJournal編集部

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