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佐藤信之「交通、再考」

JR東日本、通勤の混雑率を大幅に解消できないジレンマ…効果大きい普通車増結をしない理由

文=佐藤信之/交通評論家、亜細亜大学講師
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 ここで、仮にグリーン車ではなく普通車を2両増結すると、混雑率は137%まで低下し、国の目標をクリアし、さらに1列車を増発すると、私案の127%もクリアできる。つまり、混雑緩和だけを考えると、グリーン車ではなく普通車を増結するほうが効果は大きい。しかし、それでは中央線の路線収支を悪化させてしまうというジレンマがある。

 JR東日本においては、平成19(2007)年3月に常磐線の近郊電車でグリーン車のサービスが開始されて、現在のグリーン車のネットワークがほぼ完成したが、同年度の各路線のグリーン車による増収効果は、年間約130億円と計算された。中央線はラッシュ時だけでなく、昼間も比較的混雑することから、グリーン車の平均混雑率を50%とすると、年間50億円を超える増収と予想できる。

 12両への編成増強には、車両の新造費用だけでなく、ホームの延伸、車両基地の留置線の延伸、汚物処理施設の新設など巨額の費用が掛かる。グリーン料金の増収額により投資費用を十分回収することができるし、さらに増益も期待できる。結果的にJR東日本は、混雑率と収支とのバランスで、グリーン車の増結というクールな決定を行ったのである。

 令和2(2020)年3月のダイヤ改正で、中央線の快速の運転時間帯の拡大と、快速と各駅停車車両の運用の分離を行う大規模なダイヤ改正が計画されている。これは東京オリンピックのメイン会場の最寄り駅である代々木、千駄ヶ谷、信濃町駅にホームドアを設置するが、扉位置の異なる快速線の電車に対応できないためである。しかし、これにより快速電車の増結もスムーズに実施できることになる。また、オリンピック後に順次、中央線快速(東京~立川間)、各駅停車、総武線の各駅にホームドアが設置される計画である。

(文=佐藤信之/交通評論家、亜細亜大学講師)

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