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藤和彦「日本と世界の先を読む」

新型肺炎、中国の公衆衛生レベルの低さが流行助長…不動産バブル崩壊と金融危機が現実味

文=藤和彦/経済産業研究所上席研究員
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30年ぶりの景気後退となる可能性

 筆者が最も懸念しているのは、中国経済の屋台骨とも言える不動産市場である。中国の不動産市場は43兆ドル規模に上り、国内総生産(GDP)の4分の1を占めるとの推計がある(2月10日付フィナンシャルタイムズ)。中国の証券会社は2月11日、国内の36都市の新築集合住宅販売状況に関する報告を発表した。それによれば、2月第1週の販売件数が前年比90%減となった。中国の大手不動産会社によれば、同期間中の北京市では1日当たりの販売件数が4件にまで激減した(新型コロナウイルスの感染拡大以前の1日当たりの件数は100件以上だった)。

 住宅市場調査会社が7日に公表した資料によれば、旧正月の連休(1月24~30日)中の杭州市など10都市の中古住宅の成約件数はゼロだった。中国各地の外出や移動規制により、住宅購入希望者が物件を見学できないばかりか、経済の先行き不透明感から物件の購入を諦める事態が相次いでいるのである。

 1990年代以降、常に高い成長を謳歌してきた中国経済だが、今回の新型コロナウイルスの感染拡大で30年ぶりの景気後退となる可能性が高い。公式のGDP成長率はプラス圏を維持するだろうが、普通の景気後退すら経験していない多くの中国人にとって、この経済の冷え込みは大きな心の傷を残すのではないだろうか。

 加えて「世界第2位の経済大国になったのに、公衆衛生レベルは発展途上国並みで、政府は人民の生命の安全を保障できない」ことを痛感した都市部の住民が、新型コロナウイルスの感染拡大が抑制された後に、これまでと同様に不動産投資を続けるとは思えない。前述の調査会社が行ったアンケートで「多くの不動産企業は今年第1四半期の取引件数は大幅に減少すると見込んでいる」ことが明らかになっている。そうなれば、いよいよ中国の不動産バブルの崩壊が始まるのではないだろうか。

 新型肺炎によって取引が止まり、不動産開発会社は多額の債務の返済が困難になりつつあり(2月4日付ロイター)、このままの状態が続けば過剰な債務を抱えるデべロッパーの大量倒産が発生するのは火を見るより明らかである。

 中国銀行保険監督管理委員会は7日、「新型コロナウイルスの感染拡大によって銀行の不良債権比率は上昇する」と述べた。300を超える中国企業が新型コロナウイルスの悪影響を和らげるため、少なくとも82億ドルの銀行融資を申請していることが明らかになっている(2月10日付ロイター)。この動きにゾンビ企業の典型といわれている不動産開発会社が加われば、中国の金融システムが麻痺してしまう。

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11:30更新
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