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しかし実際の募集要項では、「事業の採択の時点で既に着手している実施設計及び建設工事等は原則として対象にならない」となっており、実施設計と建設工事への着手を分け、実施設計に着手していても、受領資格がなかったのは「調査設計計画費」の補助金のみであった。そして着工は15年12月であったため、「建設工事費」への補助金受領資格はあった。そのため、実際に森友学園が詐取した額は、約3300万円少ない約2323万円だった。
起訴状の容疑内容は間違っており、しかも詐取金額も半分以下であった。当然これについても弁論再開の対象になると考えられる。
夫婦共同罪の酷さの裏に潜む真実
検察は補助金詐取の共謀者としてキアラ建設研究機関と藤原工業株式会社の2事業者を挙げていた。両社は校舎建設予定地のごみ撤去に8億円かかる証拠とされた試掘写真を作成していた。ところが検察は、この2事業者の逮捕どころか捜査さえ行わず、籠池夫妻のみを起訴した。その時点で、検察は事件の真相解明に迫る気がなかったといえる。さらに、森友学園の理事長だった泰典氏だけでなく、妻の諄子氏も共に300日も勾留し、籠池夫妻の有罪立証にあたっては、この2事業者の証言がカギとなっている。本件事件は司法取引制度施行前のものであり、籠池氏の有罪立証に協力した事業者を免罪するのは不当である。
このように、本件裁判では、検察は大阪府・市の補助金については返還事実を隠して求刑し、詐取容疑を間違え、その金額を倍増していた。そして共謀した事業者を免罪し、ひたすら籠池夫妻に罪を着せ、重罪での罰則を意図しているように見える。よって、検察は事実誤認に基づく論告求刑を取り消し、謝罪し、責任を取る必要があるのではないか。
もし民間企業が大きな不祥事を起こせば、社長が会見で釈明・謝罪を行うが、今回の事案は大阪地検や特捜部のトップが謝罪すべき大失態といえる。
(文=青木泰/環境ジャーナリスト)
※1:籠池氏の弁護団は1月28日付で、「大阪府・大阪市に対する補助金の一部返還に関する報告書」(大阪地方裁判所第7刑事部御中)も提出している。
※2:民事再生処理に伴い確定債権から免除額が引かれたため、弁済額は大阪府分は約249万円、大阪市分は約32万円と決められていたが、大阪府には一部である60万円、大阪市には全額が返済されていた。また大阪府分については、約2000万円が供託され、返還が準備されている。