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木村隆志「現代放送のミカタ」

『テセウスの船』不安を一掃する緻密な仕掛けで死角なし…雪国ロケ、考察大会、犯人変更

文=木村隆志/テレビ・ドラマ解説者、コラムニスト
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日曜劇場『テセウスの船』|TBSテレビ」より

 正直なところ、スタート前は「一話完結の刑事・医療ドラマばかりの中、本格的な長編ミステリーに挑む姿勢はすごいな」と感じる半面、「漫画原作で、しかも、タイムスリップファンタジーか……」という不安のほうが大きかった『テセウスの船』(TBS系)。新たな物語ではないから結末がネタバレしているし、そもそも「なんでもアリ」のファンタジーを「禁じ手」とみる人も少なくない。

 ところが、いざ始まってみたら、壮大な雪国ロケと竹内涼真や鈴木亮平らの熱演で、そんな不安を一掃。さらに、原作者の東元俊哉氏が「ドラマは原作と犯人が違うと聞いています」と発言したことで、ネタバレというウイークポイントが消えた。

 今や目安のひとつにすぎないが、同作の視聴率(ビデオリサーチ調べ、関東地区)は初回から11.1%、11.2%、11.0%、11.0%と順調そのものであり、長編ミステリーは終盤にかけて右肩上がりの傾向もあるなど、死角は見えてこない。

 ここでは、ドラマを成功に導く要因となっている緻密に練られたプロデュースのポイントを挙げていく。

重苦しい中に昭和ドラマの温かさ

 まず、視聴者を引きつける意味で大きかったのは、何度となく見せている雪国のロケ。季節的にハマるのはもちろん、病院内で物語が進む医療ドラマが多い中、同じ白ベースの背景でもスケールの違いは歴然としている。

 極寒の中で熱演する俳優たちの迫力や臨場感は、医療ドラマのそれをはるかにしのぐ。竹内も鈴木も壮大なロケに奮い立ち、技量を引き出されていることが視聴者にも伝わっているのではないか。それを引き出したのは雪国ロケにかかる労力をいとわないスタッフたちであり、そのアグレッシブな制作スタンスは今冬の中でも抜きん出ている。

 物語に目を向けると、「主人公の父親が大量殺人事件の犯人となる」「そのせいで身を隠すつらい日々を送る」「事件当時にタイムスリップしたら不可解な事件と怪しい人物ばかり」「主人公は奮闘するが、その結果ますます残酷な状況になってしまう」という重苦しいムードを徹底。

 近年、このような重苦しいムードの作品は「つらすぎて見ていられない」という声が続出するなど敬遠されがちだが、『テセウスの船』は違った。主人公の田村心(竹内涼真)を中心に、父親の佐野文吾(鈴木亮平)、母親の和子(榮倉奈々)、姉の鈴(貫地谷しほり)、妻の由紀(上野樹里)が見せるホームドラマのようなやり取りは、どこまでも優しく温かい。また、「雪国の寒さが、その温かさをいっそう感じさせている」と言っていいだろう。

 家族のシーンは昭和の『日曜劇場』を彷彿させるもので、平成をまたいで令和にその魂が引き継がれていることが往年のファンを喜ばせている。しかも、驚くことに主演の竹内を囲む4人は、すべて朝ドラか大河ドラマの主演を経験した大物俳優。演技力だけでなく華もあるメンバーがそろっているのだから、おのずとそれぞれの見せ場は魅力であふれ、視聴者はさらに引き込まれていく。

2話終了時点で開催された「考察大会」

 スタッフサイドが見せる巧みなプロデュースは、前述した雪国ロケ、主演級キャスト、原作とは異なる犯人だけではない。

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