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木村誠「20年代、大学新時代」

大学入試、英語民間試験は延期ではなく中止すべき!文部科学省の現実離れした格差解消策

文=木村誠/教育ジャーナリスト
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 その中身が問題だ。地域格差の対象となる「離島・へき地」に該当すると判断されたのは全国で304校。2018年学校基本調査によると全国の高校数は4897校だから、6.2%にすぎない。ただ、住民税非課税世帯も対象となるので、実質的に対象はもっと広がるが、その救済策が非現実的としか言いようがない。

 複数の英語民間試験の成績を比較するために、それらの複数の検定結果を「CEFR(セファール)ヨーロッパ言語共通参照枠」の6段階で比較することになっている。救済策では、この6段階で上から3番目のB2レベル(英検1~準1級相当)以上を取っていれば、高3の2回分の成績に代え、高2の1回分を提出できるという内容だ。

 ところが、非課税世帯や離島・へき地といった不利な条件でB2レベルに達する生徒の数は非常に少ない。有識者の中にも、高2時にB2以上の成績を有するという設定はレベルが高すぎる、という声が多い。伊豆諸島の神津高校長は「実質的に使えない」と指摘している。

 ちなみに、中卒の50%が合格目標のもっとも平易なA1(英検では3級)を出願資格とする国立大は金沢大学、熊本大学など有力大を含め9校もある。旧帝大系であの東京大学、京都大学、大阪大学なども、20年入試で明示された出願資格はA2(英検では準2級)だ。救済策として高2で有力国立大よりはるかに高いレベル(B2)を要求する根拠は、どこにあるのだろうか。

そもそも破綻していた英語民間試験の活用案

 TOEIC(TOEIC Listening & Reading TestおよびTOEIC Speaking & Writing Tests)が大学入試への参加を取り下げることを19年7月に発表した。TOEICを実施・運営する国際ビジネスコミュニケーション協会のホームページの発表によると、「受験申込から、実施運営、結果提供に至る処理が当初想定していたものよりかなり複雑なものになることが判明」したためだという。

 英語民間試験の成績を出願の必須条件としないと決めた東京大学の石井洋二郎副学長が指摘したように、異なる目的と手法である複数の民間外部試験を公正に比較することは困難である。公平を大原則とする入試に導入することに、そもそも無理があったのだ。

 前述したCEFRにしても、専門家の間ではもともと個々人の能力発達の目安とされており、入試のように受験生の学力を数値化して判定するものではない。そのため、対照表自体が相互の関連など科学的な検証がなされていない、という。高校生の学力のベースとなる学習指導要領との関係がない内容が含まれている。そのCEFR自体も確立したものでなく、手法は時とともに変わっていく。文科省は、整備して24年に英語民間試験の共通テストへの導入を目指すという。しかし、基本的な制度設計の再検討から始めるべきであろう。

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