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榎本博明「人と社会の役に立つ心理学」

間違った「褒める教育」が子どもの将来を壊す…失敗経験を奪いチャレンジできない大人に

文=榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士
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 学校がサービス産業化し、子どもたちをサポートしすぎて、失敗経験を奪ってしまうのなら、家庭教育の中で、親が失敗を恐れない心を育んであげる必要がある。

失敗を恐れない心を育む

 そもそも人生というのは失敗や挫折の連続だ。偉人伝などをみれば、何か偉業を成し遂げた人は、だれもが大きな挫折を経験し、それでもめげずに粘り抜くことによって、なんとか困難を乗り越え、成功を勝ち取っていることがわかる。

 そこで重要なのは、失敗を恐れずにチャレンジすること。そして、万一失敗しても、それを糧にして前に進むことである。

 モチベーションの心理には、成功を目ざす成功追求動機だけでなく、失敗を避けたいという失敗回避動機が絡んでいる。そのせめぎ合いにより個人の行動が決まってくる。思い切ってチャレンジするか、躊躇するか、それは成功追求動機と失敗回避動機の綱引きで決まる。ゆえに、積極的にチャレンジする心をもつためには、失敗回避動機を多少とも和らげることが必要だ。

 そのためには失敗のもつ肯定的な意味に目を向けさせることが大切だ。「このようにするとうまくいかない」「このようなことに気をつけなければならない」ということを教えてくれるのが失敗だ。同じ失敗を繰り返さないように気をつけることで、今後の成功確率は確実に高まる。失敗は今後の糧にできる。

 ゆえに、子どもが何かで失敗したときこそ、失敗を前向きにとらえるように導くチャンスと言える。たとえば、試験前に友だちの誘いに乗って遊んでしまい、準備勉強ができずに試験で失敗したという子がいた。そのような失敗によって、次からは試験前には友だちの誘いに乗らないようにしなければならないとわかる。

 競技直前に練習しすぎて、当日筋肉痛が酷く、実力を発揮できなかったという子もいた。そのような失敗によって、次からは直前に練習しすぎないように気をつければよいということがわかる。ピアノの発表会で緊張しすぎて演奏中に失敗をしてしまったという子もいた。落ち込むのは当然だが、気持ちの持ち方をコントロールする必要があるといった課題が浮上し、そこを克服できれば、つぎの機会には実力を発揮できるだろう。

 子どもが何かで失敗したときは、当然悔やみ、落ち込むだろう。そんなとき、何気ない会話の中で、「失敗はだれでもするもの。失敗を恐れることはない。失敗したからこそわかることもある。大事なのは、失敗から学ぶことだ」ということに子どもの目を向けさせることが大切だ。いくら悔やんだり落ち込んだりしても失敗した事実は消せないが、大事なのは失敗を今後に活かすことであり、そのことを子どもの心に刻むことである。

心を萎縮させるほめ方、チャレンジを促すほめ方

 何でもほめればいいといった風潮が、傷つきやすく落ち込みやすい心、頑張れない心を生んでいるということを指摘し、本連載でも警鐘を鳴らしてきたが、ほめるのがすべてよくないというのではなく、ほめ方の問題もある。

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