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渡辺雄二「食にまつわるエトセトラ」

一部の「うがい薬」に発がん性の恐れ…サッカリンNa不使用の安全な商品はこれだ

文=渡辺雄二/科学ジャーナリスト
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「Getty Images」より

 新型コロナウイルスの感染者が日本でも増加しており、風邪やインフルエンザの流行も続いています。そこで、それらを予防するために市販のうがい薬を使ってうがいをしている人は少なくないと思いますが、一部の製品には発がん性物質の疑いがあるものが含まれているので要注意です。

 うがい薬といえば、茶色い色をしたヨードうがい薬が一般的です。その成分は、ポピドンヨード(ポリビニルピロリドンという化学物質にヨウ素=ヨードを結合させたもの)で、それから分離した有効成分のヨウ素が、のどに付着している細菌やウイルス、真菌(カビの一種)などを殺菌してくれるといいます。

 そのため、風邪やインフルエンザなどを予防できるというわけです。しかし、市販の代表的なヨードうがい薬には、添加物としてサッカリンNa(ナトリウム)が使われています。サッカリンNaは、食品添加物としても認可されていて、甘味料として酢ダコやガリ(生姜の酢漬け)など一部の食品にも使われていますが、実は発がん物質の疑いがあるものなのです。

 サッカリンNaが食品添加物として認可されたのは1948年と古いのですが、1970年代になってアメリカからサッカリンNaに発がん性があるとの情報がもたらされました。サッカリンNaを5%含むえさをラットに2年間食べさせた実験で、子宮がんや膀胱がんが認められたというのです。

 そこで1973年4月に厚生省(現厚生労働省)は使用を禁止する措置をとりました。ところが、その後、実験に使われていたサッカリンNaには不純物が含まれていて、それががんを発生させたという説が有力になりました。そのため、同じ年の12月に使用禁止が解除されて、再び使えるようになったのです。

 しかし、1980年に発表されたカナダの実験では、サッカリンNaを5%含むえさをラットに2世代にわたって食べさせたところ、2代目のオス45匹中8匹に膀胱がんの発生が確認され、安全性に再び疑問が投げかけられました。

 一方で、アカゲザルやカニクイザルにサッカリンNaを長期間投与した実験では、がんの発生は認められませんでした。そのため、サッカリンNaの使用は今でも禁止されていないのです。

サッカリンNaを使わなくても製造可能

 それでも、サッカリンNaに発がん性があるのではないかという疑惑は晴れていません。サッカリンNaの化学構造が、人間に白血病を起こすことが判明しているベンゼンという化学物質を基本にしているからです。

 最近の研究では、がんは正常細胞の中にあるがん遺伝子とがん抑制遺伝子が変異することによって発生することがわかっています。つまり、がん遺伝子が変異して、がん発生のアクセルが入り、さらにがん抑制遺伝子が変異して、がん発生のブレーキが効かなくなり、それらが繰り返されることによって、正常細胞ががん細胞へと変化し、がんができるというのです。これを「多段階発がん説」といいます。

 白血病は、赤血球や白血球のもとになっている骨髄中の造血幹細胞が異常となり、正常な働きをしない赤血球や白血球ができてしまい(白血病細胞という)、これらが血液中に入ってしまった状態のことです。ベンゼンは、この造血幹細胞に作用して遺伝子を変異させ、その結果、白血病が起こると考えられます。 

 ベンゼンの化学構造は一般に「亀の甲」と称されていますが、この「亀の甲」に 毒性物質の二酸化硫黄(SO2)、さらに窒素(N)、酸素(O)、ナトリウム(Na)を結合させたものがサッカリンNaです。

 この化学構造を見る限り、ベンゼンよりもむしろ毒性が強いと考えられ、ベンゼンと同様にのどの粘膜の正常細胞に作用し、その遺伝子を変異させる可能性は否定できないのです。このような発がん性物質の疑いがあるものを、なぜあえて使うのか、理解に苦しみます。

 ヨードうがい薬は、サッカリンNaを使わなくても製造できます。たとえば、大洋製薬の「うがい薬」は、成分は同じくポピドンヨードですが、添加物は「ヨウ化K、l-メントール、ユーカリ油、エタノール、プロピレングリコール、グリセリン」であり、サッカリンNaは含まれていません。これらの添加物はいずれもそれほど問題のないものです。グリセリンには甘味があるので、それがサッカリンNaの代わりをしています。

 サッカリンNa入りのヨードうがい薬を製造している製薬企業には、それを使う人の健康を第一に考えて、サッカリンNaの使用を速やかにやめて、安全性の高い甘味料に切り換えてもらいたいものです。

渡辺雄二/科学ジャーナリスト

渡辺雄二/科学ジャーナリスト

1954年9月生まれ。栃木県宇都宮市出身。千葉大学工学部合成化学科卒。消費生活問題紙の記者を経て、82年からフリーの科学ジャーナリストとなる。全国各地で講演も行っている

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