ビジネスジャーナル > 企業ニュース > 新型肺炎、悪影響大きい日本企業
NEW
高橋潤一郎「電機業界の深層から学ぶビジネス戦略」

新型肺炎、悪影響大きい日本企業リスト…東京五輪中止で未曾有の不景気も現実味

文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役
新型肺炎、悪影響大きい日本企業リスト…東京五輪中止で未曾有の不景気も現実味の画像1
新型ウイルス肺炎が世界に拡大 武漢市の病院(写真:Featurechina/アフロ)

 新型コロナウイルス(COVID-19)の影響が拡大している。発生源の中国湖北省武漢市には、自動車をはじめ電機・エレクトロニクス業界の日系企業が多く進出している。新型コロナウイルスの感染拡大は収まることなく、2月中旬の時点で武漢の日系工場は機能不全に陥っている。

 湖北省人民政府では、所管地域における企業活動を2月20日24時まで規制すると発表している。しかし武漢の現状を考えると、21日以降に武漢の各企業がすぐに稼働を再開、操業を本格化させられるとは考えにくい。工場再開を含めて武漢の人たちの暮らしが元に戻るメドは立っていない。

 武漢だけでなく、広東省の中山市でも中山市行政府は2月いっぱいの自粛(稼働停止)を求めている。ちなみに中国では地方行政府に一定の権限が与えられており、行政府ごとに進出企業への規制は異なる。

 今後どこまで新型コロナウイルスの影響が広がるか、どのタイミングで終息するかはまだ見通せない。いずれにしても中国の景気減速は避けられず、日本企業への影響も甚大となるだろう。新型コロナウイルスの影響はサプライチェーンを寸断しており、日本国内の工場の操業にも影響を与えている。

 電機・エレクトロニクス業界の専門情報サイトを運営する弊社クリアリーフ総研では、武漢に進出する日系企業一覧を会員サイトに掲載する一方、武漢だけでなく中国全土、および日本国内で各社が受ける影響を逐次追っている。今回はいくつかの事例を挙げ、その影響を探る。

日系自動車産業を支えていた武漢 日産の生産休止

新型肺炎、悪影響大きい日本企業リスト…東京五輪中止で未曾有の不景気も現実味の画像2 武漢に進出している日系企業を調べると、やはり圧倒的に自動車関連メーカーが多い。武漢の日本人商工会の名簿をみると、2020年1月の段階で157社の参加企業があり、自動車関連の企業が最も多い。自動車市場への影響はすでに現れている。

 なかでもカルロス・ゴーン元社長の問題でマイナスイメージが強まっていた日産自動車は、今回の新型コロナウイルスの発生によりさらに痛手を受けそうだ。すでに日産は感染拡大を理由に、中国だけでなく日本の完成車生産工場の一時休止も明らかにしている。

 日産は中国において湖北省(武漢、襄陽)、広東省、河南省、遼寧省などに生産拠点を構える。これまではいずれも春節明けには稼働予定で、春節がずれ込んだ2月10日から再開予定だったが、それぞれこれを延期している。発生源である湖北省を除けば2月下旬から順次再開すると思われるが、稼働率などは当面低調に推移することは避けられそうもない。湖北省の拠点については現時点で本格再開時期は不透明である。

 中国工場の稼働停止が長引くことで、部品調達に支障が生じ、日本国内の日産の生産拠点も生産調整のための休止が相次いでいる。国内の乗用車組み立ての主力拠点である日産九州(福岡県苅田町)については操業を断続的に止めざるをえない事態に追い込まれている。部材の代替調達などを急ぐだろうが、中国工場の停止が長引くと影響はさらに広がることは確実である。

消費者マインドの落ち込みが不可避

 サプライチェーン寸断による生産遅延だけではない。販売市場としての中国も「自動車を買う」というニーズが大きく減退することは避けられない。たとえ今後急速に新型コロナウイルスが沈静化したとしても、消費者マインドがすぐに戻るとは考えにくい。

 今はまだ生産面とインバウンドの減少だけが指摘されているが、今後は中国国内での消費減速の影響も日本企業は受ける。中長期的に中国経済に大きな影響が出てくるとすれば、当然ながら中国の経済失速は日本の国内景気をも直撃する。

 消費者マインドの低下は中国だけの問題ではない。国内も同様である。連日「不要不急の外出は避けるように」という報道がされている。新型コロナウイルスの影響が長引けば長引くだけ消費者マインドは落ちる。

 消費者マインドだけでなく、さらに直接的な国内感染者の拡大という懸念も大きい。潜在的な国内の罹患者の予測は難しいが、入国規制が始まったのがすでに春節に入った後だったということを考えると、相当数の感染者がその時点で訪日していた可能性は否定できない。「水際対策が万全だった」はずはない。

 新型コロナウイルスの国内拡散について、2月中旬にはその感染ルートが特定できない日本国内の罹患者が確認された。「(日本での感染拡大は)新たなフェーズに入ってしまった」と指摘されている。国内消費は新型コロナウイルスが沈静化するまで低調に推移するだろう。その影響は消費増税の比ではないと考えられる。

東京オリンピックの延期は本当にないか

 増税や台風など災害の影響でもともと日本国内の景気は失速していたが、新型コロナウイルスの拡大によって、いよいよマイナス成長が現実のものとなってきた。

 このままでは東京オリンピックの開催も懸念される事態になりかねない。「東京オリンピック後」の景気減速は多くの人が指摘してきたところだが、もし東京オリンピックが延期あるいは開催できないというような事態に陥った場合、景気の下振れは想像をはるかに超えることになりかねない。

(文=高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役)

高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役

高橋潤一郎/クリアリーフ総研代表取締役

業界紙記者を経て2004年に電機業界の情報配信会社、クリアリーフ総研を創業。
雑誌などへの連載も。著書に『エレクトロニクス業界の動向とカラクリがよ~く
わかる本』(秀和システム)、『東芝』(出版文化社、共著)ほか
クリアリーフ総研

Twitter:@clearleafsoken

新型肺炎、悪影響大きい日本企業リスト…東京五輪中止で未曾有の不景気も現実味のページです。ビジネスジャーナルは、企業、, , , の最新ニュースをビジネスパーソン向けにいち早くお届けします。ビジネスの本音に迫るならビジネスジャーナルへ!