
プロゲステロンは女性の卵巣でつくられ、妊娠時には胎盤を保持し胎児を育むためにとても大切です。同じ女性ホルモンであるエストロゲンは、女性のライフステージすべてにとって大切であり、更年期に補充することがあると知られていますが、プロゲステロンについては、あまり知られていないのではないでしょうか。今回はその役割についてお伝えします。
プロゲステロンは脳から指令を受けた卵巣がつくり出すホルモンで、黄体ホルモンとも呼ばれます。黄体、というのは卵巣で卵胞が成熟し排卵したあとに残るもので、胎盤の育成や保持にとても大切です。また、子宮体がんにおいては、プロゲステロンが存在することで子宮を守ってくれることが知られています。
プロゲステロンは子宮、卵巣において大切な役割をすることはもちろん、女性の全身において、エストロゲンと同じようにライフステージにわたり女性の健康を守っているという考えもあります。医師としての経験上、更年期初期で不調を感じ始められた方のプロゲステロンを測定すると、とても低いことが多いです。プロゲステロンは個人差はあれど30代から次第に減少していき、更年期のあとは卵巣からの分泌はほぼゼロになります。
更年期の症状はエストロゲンの減少によるもの、とだけ考えらえてきましたが、エストロゲンは実は急激に減少し、閉経に至る前にはむしろ一時的に分泌が急に増えたり、逆に急に減ったりしながら経過する時期もあるのです。プロゲステロンはエストロゲンの分泌が不安定になり激しく増減を繰り返しているときに、すでに減少している場合も多いのかもしれません。
プロゲステロンには、女性の人生のなかでもPMS(月経前症候群)や更年期の不調(気分の落ち込み、手足の冷え、肩こりなどの血流障害など)を和らげてくれる可能性があります。更年期以降も、エストロゲンとの共同作業で、気分を安定させる、骨を守る、脂質代謝や心臓を守るといった健康へのさまざまな役割があるのではないかと考えられ、今でも研究されています。