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榎本博明「人と社会の役に立つ心理学」

なぜ能力が低い人ほど“自信満々に話す”のか?ディベート&プレゼン重視教育の罠

文=榎本博明/MP人間科学研究所代表、心理学博士
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 一方、物事をあまり深く考えないタイプだと、様相がずいぶん違ってくる。何らかの知識や視点を手に入れると、それですべてがわかったかのように得意になって吹聴したり、自信満々に断言したりする。もっと他の知見や視点があるかもしれないから断言はできないというような慎重さがない。その結果、中身の乏しい人物ほど自信満々に断言することになる。

 じつは、こうした傾向には、心理学的な根拠があることが実験によって証明されているのである。

能力の低い人ほど自分を過大評価する

 なぜかできない人物が自信たっぷりで、できる人物のほうが謙虚で自信がなく不安が強いのか。そのように感じる人がけっこういるはずだ。

 そうした傾向について考える際に、有力なヒントを与えてくれるのが、ダニングとクルーガーによって行われた実験である。彼らは、「ユーモアのセンス」などいくつかの能力に関するテストを実施し、同時に自分のユーモアのセンスについて自己評価させるという実験を行っている。

 まずは実際の成績をもとに、「最優秀グループ」「平均より少し上のグループ」「平均より少し下のグループ」「底辺グループ」に分ける。そして、テストの成績が「底辺グループ」の得点をみると、平均より著しく低いにもかかわらず、自己評価をみると、自分のユーモアのセンスは平均より上だと思い込んでいることがわかった。そこには、自分の能力を著しく過大評価する心理傾向が明らかにみられた。

 それに対して、「最優秀グループ」では、そのような過大評価はみられず、むしろ逆に自分の能力を実際より低く見積もる傾向がみられた。

能力の低い人は、その事実に気づく能力も低い

 次に、「論理的推論の能力」に関する実験結果もみてみよう。ここでも「底辺グループ」においては、実際の得点は、平均よりも著しく低いにもかかわらず、自己評価をみると、自分の論理的推論の能力は平均よりかなり上だと思い込んでいることがわかった。やはり自分の能力を著しく過大評価する心理傾向が明らかにみられたのである。

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