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木村誠「20年代、大学新時代」

大学入学共通テスト、記述式導入は逆効果…「過去問活用」などで大学間協力

文=木村誠/教育ジャーナリスト

記述式の共通テスト導入が逆効果になる理由

 専門家も、記述式問題を現行案のまま導入することは極めて危険で大きな混乱を生じると、早くから指摘していた。さまざまな制度的不備があり、公平公正な採点が期待できないだけでなく、問題や情報の漏洩、受託業者による利益相反の危険性も高まるという。最大の受験者を抱える共通テストにおいて、記述式問題の長所を損なう悪しきモデルを掲げることは、むしろ将来に悪影響を残すと懸念している。

 確かに、入試の記述式問題にはマークシート式にはない意義や可能性がある。受験生の個性的な答案によって、単なる知識の有無と正確さを検証する以上に、大学教育に適性があるかどうかを判断できることも少なくない。

 私が以前、旧帝大系の入試出題官の先生に取材したところ、数学の記述式問題では、出題官や専門の教員が想定できる限りの解法を採点基準に示すという。問題によっては7~8通りの解法が想定されることもある。ところが、なかには想定以外の解法で正解を導き出す受験生がいる。そんなときは感動した、と話す。これぞ論述・記述式の妙味であろう。

 国語でも、やや長い論述・記述問題なら、採点する先生が感心するような解答がある、といわれる。それが記述式問題の良さであり、その対策として、多くの受験生が考えて書く受験勉強を積み重ねることは、大学入学後の教育においても大きな財産になる。ところが、短期間に大量の採点をするために、正確かつ迅速に処理することが最優先される記述式問題の共通テストへの導入は逆効果となる。定型的な答案が正解とされる出題だからだ。

 今までの共通1次試験から大学入試センター試験に続いたマーク式出題は長い間に洗練され、進化している。単純な知識を問う設問だけでなく、総合的に考えないと迷うような選択肢を選ばせる出題や、思考力や判断力を見るように工夫された設問も少なくない。表現力についても、出題形式を工夫して的確な表現はどれかを問う設問もある。本人に書かせれば表現力が判定できるる、という単純なものではない。

「過去問活用」に100大学以上が参加

 現在の国立大学の一般入試はセンター試験と2次の個別試験があり、原則その総合点で合否判定される。この個別試験では、論述・記述問題や小論文で表現力を見ることもできる。だから、共通テストで記述式問題がなくても、表現力を問う機会が十分にあるわけだ。公立大学も、ほとんど同じ入試形態である。

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