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ジャーナリズム

『報道ステーション』社外スタッフの大量首切りは内部告発への意趣返し?政権への忖度?

文=志葉玲/ジャーナリスト
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『報ステ』問題を問う、MICによる集会

 日本を代表する報道番組のひとつといえる、テレビ朝日系『報道ステーション』が大きな岐路を迎えている。同番組で長く取材・報道を担当したベテランの社外スタッフ約10人が、今年3月末での契約終了をテレ朝から通知されたというのだ。

 テレ朝側は「番組リニューアルのため」と説明するが、番組チーフプロデューサーのセクハラ問題に関する報復人事ではないかとの指摘もある。新聞や放送、出版などの労組でつくる日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)は、今月13日、都内で集会を行い、当事者や番組関係者等の声などを伝え、彼らの契約終了撤回を求めた。

 集会では、MICの南彰議長が社外スタッフの契約終了について、経緯を解説。発端となったのは、昨年8月末にテレビ朝日社員で『報道ステーション』のチーフプロデューサー(CP)であった桐永洋氏がセクハラ問題で解任されたことだった。さらに、同年12月10日、世耕弘成・自民党参院幹事長が自身の発言に関するニュース発言に抗議したことを受け、同月11日にテレビ朝日の宮川晶報道局長が謝罪。同12月20日、「体制刷新」だとして、テレ朝の正社員スタッフの人事異動のほか、取材や編集など番組作りを担ってきた社外スタッフ10~12人が今年3月末で契約終了となることが、本人たちに伝えられたのだという。

 MICや民放労連などの批判に対し、テレビ朝日側は、「『報道ステーション』のリニューアルの一環」「契約が終了するスタッフには、別の報道情報番組での制作に関わってもらうことで調整中であり、派遣切りではない」と説明する【※コメント全文は文末に掲載】。だが、MIC側の説明によれば、テレビ朝日が約束したはずの「新しい仕事先の紹介」も現時点では進んでおらず、まだ多くの人の行き先が定まっていないという。

 そもそも、「体制刷新」やら「人心一新」のためとされるスタッフの強制的な入れ替えの動機も不透明だ。今回、契約終了させられたスタッフたちには、桐永元CPのセクハラ問題を内部で指摘したスタッフも含まれているのだという。また、テレビ朝日の早河洋会長が安倍晋三首相と接近するなかで、番組での政権批判がトーンダウンしていることに対し批判的であったスタッフも契約終了の対象者だという。つまり、単なる番組再編のための体制刷新というよりも「物言うスタッフを排除するためではないか」との疑いの目が向けられているのだ。

 集会では、当事者である報ステスタッフやテレ朝社員らのコメントも紹介された。

「今日何を伝えるべきか、世の中に届けなければならないことはなんなのか、時には闘いながら、毎日の放送を出してきました。しかし今回の事態は、そうした現場スタッフの姿勢を否定するものだと受け止めざるを得ません。ひいては、視聴者の方の知る権利を奪い、報道機関としての役割を果たすことができなくなるのではないかという危惧を覚えます」(当事者である報ステスタッフ)

「10人以上も、それもベテランでそれぞれの課題に精通しているディレクターやデスクで、それを一度に派遣切りするのは、番組を崩壊させるのと同じです。長く番組を担当しているのは、それだけの能力を備えているからです。番組は続いても内容が劣化してしまいます」(テレビ朝日社員)

 契約終了とされるスタッフ達は番組の中核であり、中東情勢や沖縄の基地問題、原発や災害、事件報道などに精通。「桜を見る会」関連の報道にもかかわっていたのだという。

 集会にビデオメッセージを寄せたTBS系『報道特集』キャスターの金平茂紀氏は「番組の制作や報道に関わる、それなりの権限を持っている人たちが、恐ろしいほどのスピードで腐敗、劣化、堕落している」とコメント。「メディアは今、暗黒の時代を迎えているが、だからこそ黙っていてはいけない」と訴えた。金平氏は、本件がテレビ朝日にとどまらず、他の民放でも起きうることと懸念しているのだという。

 MICは、その声明で「テレビ朝日が取るべき対応は、(セクハラの)加害者を厳罰に処したうえで、スタッフたちをしっかり守ることです。『人心一新』といって、社外スタッフの入れ替えが強行されれば、『声を上げると不利益を被る』という誤ったメッセージとなりかねません」と主張し、テレビ朝日に契約終了通知の撤回を求めている。

 テレビ局は民間企業であると同時に、人々の知る権利を保障する「社会の公器」だ。その役割の中核を担う人材を粗末に扱うことは、テレビ朝日にとっても良い影響を与えないだろう。

(文=志葉玲/ジャーナリスト)

 

【補足】筆者からの問い合わせへのテレビ朝日からの回答は以下の通り
『報道ステーション』のリニューアルの一環として、派遣契約スタッフの10人程について、それぞれの派遣元の会社に対し、今年3月までの契約期間の満了後、番組としては「契約を更新しない」旨、昨年末にお知らせしました。これらの方々のほとんどについて、派遣元の会社に対し、今年4月以降も、当社の別の報道情報番組などの制作に携わっていただけないか提案し、その多くの方々の派遣元の会社と、具体的な話し合いが進んでいます。なお、スタッフの契約状況などについては公表していません。(テレビ朝日)

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