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中国、知られざる驚愕の教育内容…小6で日本の中3レベルの英語、道徳で習近平思想教育

文=昼間たかし/ルポライター、著作家
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「国家中小学網絡云平台」より

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため封鎖が相次ぐ中国。リモートワークへと移行する企業も増えている。そうしたなか、対応に追われているのが中国各地の学校だ。通常、中国では春節明けから新学期が始まる。ところが多くの学校では、新型コロナウイルスを理由として休校になっているのだ。

 当初は各学校が生徒各自に対し、自宅で自習するように指示を出していたが、17日からは中国の教育省によるオンライン授業システムが始まった。自習用サイトの名前は「国家中小学網絡云平台」

 このサイトは「中国教育テレビ」が所有する映像などを利用したもので、中国の学校で教えられている各教科を、5000万人が同時に自習することができるとしている。中国国内の報道では、サイトを開設した17日の20時時点で800万アクセスに達し、国内はもとより47の国と地域からアクセスがあったという。合わせて、訪問者の85%がスマートフォンやタブレットなどのデバイスを利用していることも報じられている。

 また、5000万人の安定したアクセスを維持するために、百度、アリババ、中国電信、中国移動、ファーウェイなど名だたる中国の企業が、このサイトに協力しているという。

 長引くコロナウイルス対策のなかで、教育の崩壊を未然に防ぐべく、国家の威信を賭けたプロジェクトともいえる自習サイトだが、海外からもアクセスできるため、これまであまり知る機会のなかった、中国学校教育の中身を知ることができるようになった。

習近平による思想教育の中身

 中国では、6年制の小学校のあとに3年制の初級中学までが義務教育(5・4制の学校もある)。以降、大学などで高等教育を受けることを前提とした高級中学校に進むか、職業学校などに進むかを選ぶシステムだ。このうち、サイトではオンラインでの20分程度の授業動画に加えて、義務教育内の教科書がすべて読めるようになっている。英語の教科書が、小学校6年生のものですでに日本の中学校3年生レベルであったり、知識を詰め込むタイプの教育が行われていることもわかり興味深いが、もっとも注目すべきは道徳教科書である。

 小学校6年生の道徳教科書を見てみると、公共の福祉や地球の環境問題、世界平和などがテーマになっている。それ自体は、日本の教科書と変わらない。ところが、なぜか執拗に「そのために中国ではこんな法律がある」という註釈が入っているのだ。

 たとえば、混雑したバスのイラストを提示して、社会生活において寛容な心を持つべきことを記している項目では、公共の安全に危害を加えた者を処罰する中国の刑法が紹介されている。

 これが9学年(中学校3年)の教科書になると、さらに深い意図が読み取れる。そのなかにある「世界舞台上的中国」は、タイトルの通り世界の中での中国の役割を理解させるものである。ここでは、2015年に設立されたアジアインフラ投資銀行についての解説が掲載されている。この銀行は、アメリカ合衆国と日本が主導するアジア開発銀行に対抗して中国が設立したもの。アジア開発銀行と同じく発展途上国に支援をすることで将来的な影響力を拡大する目的は当然あるのだが、アジアインフラ投資銀行が政治的条件をつけずに融資を行っていることなどプラス面が強調されるかたちで記載されている。

 そうした記述を経て、最後には中国は各国と協調して繁栄を目指そうとしているとして、「一帯一路構想」を記述するのである。

 この一連の道徳教育、正確なタイトルは「小学道徳与法治」となっている。公共の安全のために法を守らせつつ、拡大していく中国の姿を通じて愛国心を育もうとの意図が見て取れる。

 そんななかでとりわけ中国らしさを見せるのが、独立してページが割かれている「品徳教育」である。これは丸ごと中国の共産主義思想を教えるための教育ページだ。トップには、昨年行われた中華人民共和国成立70周年のパレードなどの映像が並ぶ。そして、長征を描くドキュメンタリーや、その後の建国までをテーマとした「延安十三年」などの映像が並ぶ。

 驚くのは、そうした素材と並んで「習近平新時代中国特色社会主義思想和基本方略」「中国特色社会主義进入新時代和中国共産党的歴史使命」というタイトルの、現在の習近平政権の提唱する思想のための教育動画が用意されていることだ。

 習近平思想は2017年に中国共産党第十九回全国代表大会で提示されたものだ。「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」と呼ばれるこの思想は、中国が強国となることを目指すというもので、2018年にはマルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、「3つの代表」の重要思想、科学的発展観と同列に憲法に盛り込むことも決められている。前述の道徳教科書も、実態としては「習近平思想教育」の一貫。多くの動画コンテンツが公開されていることからみて、中国の学校では早い段階から習近平思想が常識として教えられていることがわかる。

 イデオロギーを重視する社会主義国家ならではの教育の実態を知ることができる「国家中小学網絡云平台」。海外からのネットアクセスを遮断しているケースも多い中国で、このサイトが難なく見ることのできる理由は謎だ。
(文=昼間たかし/ルポライター、著作家)

昼間たかし/ルポライター、著作家

昼間たかし/ルポライター、著作家

 1975年岡山県生まれ。ルポライター、著作家。岡山県立金川高等学校・立正大学文学部史学科卒業。東京大学大学院情報学環教育部修了。知られざる文化や市井の人々の姿を描くため各地を旅しながら取材を続けている。

Twitter:@quadrumviro

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