これが9学年(中学校3年)の教科書になると、さらに深い意図が読み取れる。そのなかにある「世界舞台上的中国」は、タイトルの通り世界の中での中国の役割を理解させるものである。ここでは、2015年に設立されたアジアインフラ投資銀行についての解説が掲載されている。この銀行は、アメリカ合衆国と日本が主導するアジア開発銀行に対抗して中国が設立したもの。アジア開発銀行と同じく発展途上国に支援をすることで将来的な影響力を拡大する目的は当然あるのだが、アジアインフラ投資銀行が政治的条件をつけずに融資を行っていることなどプラス面が強調されるかたちで記載されている。

 そうした記述を経て、最後には中国は各国と協調して繁栄を目指そうとしているとして、「一帯一路構想」を記述するのである。

 この一連の道徳教育、正確なタイトルは「小学道徳与法治」となっている。公共の安全のために法を守らせつつ、拡大していく中国の姿を通じて愛国心を育もうとの意図が見て取れる。

 そんななかでとりわけ中国らしさを見せるのが、独立してページが割かれている「品徳教育」である。これは丸ごと中国の共産主義思想を教えるための教育ページだ。トップには、昨年行われた中華人民共和国成立70周年のパレードなどの映像が並ぶ。そして、長征を描くドキュメンタリーや、その後の建国までをテーマとした「延安十三年」などの映像が並ぶ。

 驚くのは、そうした素材と並んで「習近平新時代中国特色社会主義思想和基本方略」「中国特色社会主義进入新時代和中国共産党的歴史使命」というタイトルの、現在の習近平政権の提唱する思想のための教育動画が用意されていることだ。

 習近平思想は2017年に中国共産党第十九回全国代表大会で提示されたものだ。「習近平による新時代の中国の特色ある社会主義思想」と呼ばれるこの思想は、中国が強国となることを目指すというもので、2018年にはマルクス・レーニン主義、毛沢東思想、鄧小平理論、「3つの代表」の重要思想、科学的発展観と同列に憲法に盛り込むことも決められている。前述の道徳教科書も、実態としては「習近平思想教育」の一貫。多くの動画コンテンツが公開されていることからみて、中国の学校では早い段階から習近平思想が常識として教えられていることがわかる。

 イデオロギーを重視する社会主義国家ならではの教育の実態を知ることができる「国家中小学網絡云平台」。海外からのネットアクセスを遮断しているケースも多い中国で、このサイトが難なく見ることのできる理由は謎だ。
(文=昼間たかし/ルポライター、著作家)

関連記事

プレスリリース入稿はこちら サイゾーパブリシティ