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「加谷珪一の知っとくエコノミー論」

日本の高度経済成長は“偶然”という歴史的事実…朝鮮戦争なければ東南アジア並みの国

文=加谷珪一/経済評論家
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 日本は米国や英国など主要国をすべて敵に回していたので、国際的な金融市場からも閉め出されており、外貨もほとんど保有していなかった。このような状況において、代金として日本円を受け取ってくれる奇特な相手が存在するわけもなく、工場を動かしたくても、原材料を輸入することすらままならなかったというのが終戦直後の実態であった。

朝鮮戦争特需がなければ今の日本は存在していない

 マーシャルプランに代表されるように、欧州に対しては多くの復興支援策が実施され、大量のドルが供給されたが、日本に対してここまでの支援策はなく、本来なら重工業化など夢のまた夢であり、アジアの貧困国に転落していた可能性すらあった。だがこうした状況を一気に変えたのが朝鮮戦争(1950~1953年)の勃発である。

 米国は朝鮮半島に大量の物資を供給する必要に迫られ、好むと好まざるとにかかわらず日本は米軍の後方支援拠点となった。日本企業には空前の注文が殺到したが、特需のメリットはそれだけではない。米国からのドルの支払いによって、原材料の輸入に欠かせない貴重な外貨を獲得できたことである。

 1951年から1953年の3年間で10億ドルを上回る発注が日本企業に出されたが、1ドル=360円で換算すると日本円で約3600億円となり、これは日本の年間輸出総額に匹敵する水準であった。また、当時のGDPは4兆円程度なので、1年あたりの発注金額はGDPの3%に相当する。単純比較はできないが、今の状況に当てはめると年間16兆円もの注文を受けた計算となる。

 日本経済にとってこれが神風となり、1951年の名目GDPは前年比でなんと38%という驚異的な成長を実現し、日本経済は一気に息を吹き返した。

 朝鮮戦争特需は巨額の財政支援と同じであり、しかも外貨不足という問題が一気に解消されたことから、これをきっかけに日本経済は怒濤の経済成長に突き進むことになる。もし朝鮮戦争がなければ、日本は韓国や東南アジアと同じレベルの経済水準にとどまっていた可能性が高いという現実を考えると、偶然が作用した面が大きいことについて認めざるを得ないだろう。

 少し話がそれるが、近年、日本の国力低下や世論の保守化に伴い、国内ではグローバルな金融市場に背を向けるような論調が強まっているが、こうした内向きな議論というのは、ある種の「平和ボケ」に近いと筆者は考えている。

 朝鮮戦争特需が発生するまでの間、日本企業にとって外貨というのは、ダイヤモンドよりも貴重な存在であった。国際金融市場に自由にアクセスでき、いくらでも外貨を準備できる今の環境がどれほど幸せで有利なことなのか、私たちはよく理解しておく必要がある。

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